【医療の「今」を読み解く】第2回 郵便局やデイサービスも診療の場に 「オンライン診療受診施設」で変わる地域医療

2026.09.29

郵便局やデイサービスでオンライン診療を受ける――。医療機関でも自宅でもない、地域の身近な施設を活用したオンライン診療の取り組みが広がっています。

2026年4月に施行された改正医療法では、「オンライン診療受診施設」が医療法上に位置づけられました。オンライン診療受診施設とは、患者がオンライン診療を受ける場所として提供される施設です。特に医療資源の少ない地域での医療アクセス向上が期待されており、厚生労働省は、へき地などで郵便局や公民館といった住民に身近な施設を活用することも想定しています。

厚生労働省は2026年7月、「自治体におけるオンライン診療・遠隔医療の導入に関する取組事例集(令和8年3月版)」を公表しました。掲載された13事例をみると、郵便局やデイサービスなど医療機関以外の施設を活用した診療のほか、離島・へき地における医療提供体制の補完、地域の医師と専門医をつなぐ医師間の遠隔医療など、地域の課題や医療資源に応じたさまざまな取り組みが行われています。能登半島地震では、避難者の医療アクセスを確保する手段としてもオンライン診療が活用されました。

ここからは、事例集の中から特徴的な取り組みを紹介します。

既存の地域資源をオンライン診療の拠点に

まず注目したいのが、郵便局やデイサービスなど、地域にある医療機関以外の身近な施設をオンライン診療の場として活用する取り組みです。

山口県周南市の和田地区では、2016年に地域の民間医院が閉院し、無医地区となりました。市街地の医療機関まではバスで片道約40分かかるなど、特に高齢者にとって通院の負担が課題となっていました。そこで山口県、周南市、日本郵便、地域の医療関係者などが連携し、高瀬郵便局の一部を改修。2024年4月から、郵便局と診療所をオンラインでつなぐ診療を開始しました。

患者は診療所に予約したうえで郵便局を訪れ、専用スペースでオンライン診療を受けます。郵便局員が患者を案内するため、患者自身が機器を操作する必要はありません。高血圧などの慢性疾患の診療や定期薬の処方などに利用されており、薬局と連携したオンライン服薬指導や処方薬の配送にも対応しています。

一方、プライバシーなどの観点から郵便局員は診療には同席しないため、医師と患者の情報伝達やコミュニケーションが難しいケースもあり、看護師の同席が必要であることも明らかになりました。今後は、基本的に看護師が患者側に同席する「D to P with N」での実施が計画されています。

出典:厚生労働省「自治体におけるオンライン診療・遠隔医療の導入に関する取組事例集」 p.12「山口県周南市:オンライン診療のイメージ」より一部抜粋

青森県中泊町では、デイサービスを活用しています。町内には整形外科がなく、患者が5~10分程度の診療を受けるために往復約4時間かけて通院するケースもあり、特に降雪時の通院負担が課題となっていました。

そこで、以前から接点のあった青森市内の医療機関と、温泉施設内にあるデイサービスセンターをオンラインで接続。デイサービスセンターの一室を利用し、整形外科の再診患者を対象とした予約制のオンライン診療を実施しています。診療時にはデイサービスの職員が機器のセッティングや患者のサポートを担います。既存の施設と地域のつながりを生かすことで、降雪時も含め、患者の通院負担を大幅に軽減しています。

郵便局とデイサービスという用途の異なる施設ですが、いずれも地域にある施設と人材を生かし、高齢者の通院やオンライン受診を支えている点が共通しています。

限られた医療人材を支える「D to D」「D to P with D」

オンライン診療・遠隔医療は、医師と患者をつなぐだけではありません。地域の医師と遠隔地の専門医をオンラインでつなぐ「D to D」や「D to P with D」の取り組みも進められています。

京都府では、産科医の地域偏在への対応や周産期医療の質の向上などを目的に、2022年からD to Dの遠隔医療を導入しました。京都大学医学部附属病院、京都第一赤十字病院、京都府立医科大学附属病院などの総合周産期母子医療センターと地域の医療機関をネットワークで結び、2024年度末時点で28医療機関が参加しています。

特徴は、患者の映像だけでなく、超音波検査や胎児心拍数モニター、電子カルテなどの情報をリアルタイムで共有できることです。地域の医師は専門医から助言を受け、ハイリスク妊婦を高次医療機関へ搬送するかどうかなどの判断に役立てています。実際に、出産時の大量出血が予想されるとの助言を受け、高次医療機関への搬送を判断した事例も報告されています。また、緊急時だけでなく、医療機関同士のカンファレンスにも活用されています。

出典:厚生労働省「自治体におけるオンライン診療・遠隔医療の導入に関する取組事例集」 p.10「京都府:遠隔診療のイメージ」より一部抜粋

医師への支援という点では、和歌山県の取り組みも注目されます。和歌山県立医科大学附属病院などと県内25の病院・診療所を遠隔医療支援システムで結び、24診療科で「D to P with D」を実施。患者のそばにいる地域の医師が、遠隔地の専門医に相談しながら診療できる体制を整えています。へき地などで勤務する若手医師にとっては、専門医の助言を得られることが心理的な負担の軽減にもつながっています。 

離島の医療提供体制を支える

オンライン診療の活用が期待される代表的な地域が離島です。事例集には、三重県鳥羽市、長崎県、鹿児島県十島村の取り組みが紹介されています。いずれも、医師の確保や本土からの移動、天候による交通への影響など、離島特有の課題を抱えています。

三重県鳥羽市では、4つの有人離島を3人の医師と三重大学から派遣される応援医師で診療しています。しかし、悪天候で船が欠航することもあり、安定した医療提供体制の構築が課題となっていました。そこで2020年から、4つの離島と本土の診療所をつなぐオンライン診療を導入。医師が島にいないときには、患者側に看護師が同席する「D to P with N」で診療を行っています。自宅で受診する場合には、看護師がオンライン診療用の機器を持って患者宅を訪問します。現在は4離島を合わせて年間約200件が実施されています。

対面診療を基本としながら、医師が不在となる時間をオンライン診療で補うことで、患者の通院負担だけでなく、島を移動する医師の負担も軽減し、限られた医療人材で離島の医療提供体制を支えています。

出典:厚生労働省「自治体におけるオンライン診療・遠隔医療の導入に関する取組事例集」 p.20「三重県鳥羽市:遠隔診療のイメージ」より一部抜粋

また、オンライン診療は災害時にも活用されています。石川県では、2024年の能登半島地震で道路の寸断や医療機関の被災などにより対面診療が難しくなるなか、避難者へのオンライン診療を実施しました。二次避難所などに受診環境を整え、保健師らが高齢者の受診を支援するなど、平時とは異なる環境でも医療へのアクセスを確保する手段として活用されました。 

オンライン診療を地域医療の課題解決にどう生かすか

今回紹介した事例に共通するのは、オンライン診療や遠隔医療の導入そのものを目的とするのではなく、それぞれの地域が抱える医療課題を解決するための手段として活用している点です。

また、オンラインで医師と患者、あるいは医師同士をつなぐだけでは、仕組みは十分に機能しません。郵便局やデイサービスといった既存の施設、看護師や施設職員などの人材、地域の医療機関同士のつながりなど、地域にある資源と組み合わせることで、実際の医療提供につなげています。

人口減少や高齢化が進み、医療従事者の確保が難しくなる地域が増えるなか、従来と同じ医療提供体制を維持することは今後さらに難しくなります。対面診療を基本としながら、どのような課題をオンラインで補えるのか。技術ありきではなく、地域の課題を起点にオンライン診療・遠隔医療の使い方を考えていくことが、今後ますます重要になるのではないでしょうか。

参考文献

執筆者プロフィール

横井かずえ(よこい かずえ)氏

2000年3月に明治大学法学部を卒業後、医薬専門誌『薬事日報』を発行する薬事日報社に入社。記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材。2013年に独立し、現在はフリーランスの医療ライターとして、医師・看護師向けの専門誌やWebメディア、一般向けの医療記事まで幅広く執筆している。共著に『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社)。
URL:https://iryowriter.com/
X:@yokoik2

連載記事に関連するコラム

資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら
検討に役立つ資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら