【医療業界動向コラム】第203回 療養病棟に関する主な診療報酬の加算に関する現状を確認する
2026.09.18
医療安全対策加算、療養病棟を有する病院で27病院増加
令和8年4月1日からの医療法施行規則の改正により、すべての病院・有床診療所・助産所に医療安全管理者の配置が義務付けられている。なお、医療法施行規則における医療安全管理者は医療系資格を有している必要はなく必要な研修の受講は必須ではない(受講を推奨)が、令和8年度診療報酬改定以前の医療安全対策加算では医療系資格を有しており、必要な研修を受講していることが求められていた。
令和8年度診療報酬改定では、医療法施行規則改正に合わせて医療安全対策加算を見直し、医療安全対策加算そのものの点数を引き上げると共に、医療安全対策加算2において医療系資格を有しないスタッフで一定の要件を満たしていれば算定可能となったところだ(図1)。

図1 医療安全対策加算の見直し(厚生労働省 令和8年度診療報酬改定説明会資料)(クリックして拡大表示)
この医療安全対策加算について、実際に診療報酬改定後にどういった変化があったかを確認すると、74病院届出増(4,258病院→4,332病院)となっていることが分かった。
また私は、診療報酬については項目によってはあえて算定しない、という選択肢を持つことを医療機関の皆様にお伝えしている。特に入院期間が長く、入院初日にしか算定できない項目については、人員と負担を考えて、慎重に対応することを勧めてきた。そのため、療養病棟における医療安全対策加算の届出はいつも慎重に考えていた。しかし、令和8年度診療報酬改定からは、加算2において医療系資格を有しない者でも算定できることとなり、点数も倍以上となった。届け出を目指す価値はあるといえる。実際、診療報酬改定後の療養病棟に限定した医療安全対策加算の届出状況を確認すると、27病院増加していることが分かる(図2)。医療系資格を有しない場合は1年以上の業務実績が必要となっているため、来年以降になるが届出は増えることが期待される。

図2 療養病棟における医療安全対策加算の届出推移(HCナレッジ合同会社 作成)(クリックして拡大表示)
医療の高度化、重症度の高い患者の受け入れが増えている現状を考えると、安全対策はより一層力を入れていく必要がある。今回の診療報酬改定は、医療法施行規則の改正とも上手く連動して、直接的ケアを行う有資格者の負担軽減を図りながら、安全文化の醸成に寄与するものだといえる。
経腸栄養管理加算は割合でみると1.1ポイント増加
積極的に経腸栄養に取組む医療機関を評価できるように経腸栄養管理加算が令和8年度診療報酬改定では見直されたところ。
診療報酬改定後の実際の届出状況を確認してみると、27病院増加していることがわかった(981病院→1,008病院)。なお、療養病棟の届出は診療報酬改定後に4病院減少して、2,711病院(改定前:2,715病院)となっている。療養病棟のある病院全体における経腸栄養管理加算の届出割合でみると、1.1ポイント上昇したことになる(改定前:36.1%→改定後:37.2%)。緩やかに増加している(図3)。

図3 経腸栄養管理加算の届出推移(HCナレッジ合同会社 作成)(クリックして拡大表示)
あわせて、療養病棟における在宅復帰機能強化加算についても確認してみた。こちらは令和8年度診療報酬改定では大きな見直しはなかったものの、中医協では議論のテーマに上がっていた。令和10年度診療報酬改定に向けて、改めて議論される可能性が高い。死亡退院の割合や在宅訪問の実績など注視しておきたい。診療報酬改定前後を確認すると、3病院の減少となっている(742病院→739病院、図4)。ただ、先述の通り療養病棟を届け出る病院自体が減少していることを踏まえて確認してみると変化はない(改定前:27.3%→改定後:27.3%)。

図4 療養病棟における在宅復帰機能強化加算の届出推移(HCナレッジ合同会社 作成)(クリックして拡大表示)
療養病棟においても在宅復帰の機能を強化していくことが診療報酬改定の傾向からもわかる。新たな地域医療構想では、在宅・外来・介護も一緒に考えていくことを考えれば合点がいく傾向だ。経腸栄養管理への積極的な取組みを通じた在宅復帰というゴールに向けた体制作りを改めて考え、新たな地域医療構想に備える必要がある。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。https://www.hckn.work

