【医療業界動向コラム】第198回 骨太の方針2026から今後の社会保障・医療分野の動向を読み解く ②
2026.08.05
令和8年7月21日、例年よりも約1か月遅れて経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針2026)が閣議決定された。
全体的な印象としては、伸びる(であろう)事業分野への積極的な投資を通じて成長し続けることを目指す内容になっている。明るい未来を感じさせる一方で目先の物価高対策への対応と食料品消費税減税の扱いがなお不透明なことであることに加え、外国人施策に対する厳しい姿勢など、気になる点も多々ある。また、以前お伝えしたとおり(第193回)、補正予算を抑制すべく、予算に柔軟性を持たせる点も注目点だといえる。
今回は、医療費適正化の観点、医療DXの推進などに焦点をあてて確認をしたい。
医療費適正化の観点
骨太の方針の従来からの流れを受けて、バイオ後続品の普及促進や長期処方・リフィル処方、地域フォーミュラリの全国展開が今回も盛り込まれている(図1)。

図1 骨太の方針2026 成長経済に合わせた持続可能な社会保障制度より
内閣府 経済財政運営と改革の基本方針2026にHCナレッジ合同会社が加筆(クリックして拡大表示)
バイオ後続品の使用促進については、先行バイオ医薬品を選定療養に加えていくことなど考えられるだろう。令和8年度診療報酬改定では、一般名処方の対象にバイオ後続品が加えられ、薬局においてはバイオ後続品調剤体制加算が新設され、普及促進の環境は着々と整備されている。
地域フォーミュラリの全国展開については、すでに厚生労働省から都道府県単位での議論の場と候補地域での検討を進めることについて通知が発出されているところ。さらに、保険者努力支援制度において、保険者が地域フォーミュラリが策定の会議に参画することが評価につながるようになった(図2)。

図2 保険者努力支援制度より
厚生労働省 第210回社会保障審議会医療保険部会(クリックして拡大表示)
今後、各地で地域フォーミュラリの策定に向けた協議の場が立ち上がってくることになるだろう。
長期処方・リフィル処方については、すでに4月に公表されているKPIを着実に前へ進めていくものとなるだろう(図3)。

図3 リフィル処方・長期処方のKPI
内閣官房 デジタル行財政改革会議(クリックして拡大表示)
医療DX、安全性を確保しながら前へ
骨太の方針2026では、医療情報化推進方針を策定し、電子カルテ等の普及と連携を促進していくことが明記されている。今夏にも明らかにされる予定の今後の電子カルテ/情報共有サービスの普及促進計画を待って、具体的な医療DXの更なる推進に向けた行動が始まる予定だ。また、令和9年度からリリースされる標準型電子カルテ/標準仕様の電子カルテについても今後より詳細な情報が出てくることだろう(図4)。

図4 標準型電子カルテ/標準仕様の電子カルテの今後の予定
厚生労働省 第33回 健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ(クリックして拡大表示)
サイバーセキュリティ対策を着実に実施していく上で、クラウド化は重要だ。コストはかかるが、オンプレと比べると対策レベルは高くなる。すでに、地域医療情報連携ネットワークや今後始まる電子カルテ情報共有サービスで患者情報をはじめ、すべてがつながり、情報を入手しやすくなりつつある。サイバーセキュリティ対策は、自院だけのことではなく、つながる他の医療機関、地域全体にも影響を及ぼすものとなっている。
地域住民の健康増進に資する薬局・薬剤師、を原案後に追加
攻めの予防医療は、現政権の肝いりともいえる取組だ。特に、女性の健康課題への対応については、勤労世代が減少していくことを考えると、女性の積極的な労働参加は重要になってくる(図5)。

図5 骨太の方針2026 成長型経済に合わせた持続可能な社会保障制度より
内閣府 経済財政運営と改革の基本方針2026にHCナレッジ合同会社が加筆(クリックして拡大表示)
6月30日に公開された骨太の方針2026の原案段階にはなかった、地域住民の健康増進に資する薬局機能及び薬剤師の果たす役割の強化、という文言は目を引く。地域住民にとってのヘルスケアステーションとしての機能を果たすべく、対人業務の時間を確保していくレギュレーションと収益構造を作っていくことが今後の薬局には求められているといえる。
骨太ではあるかもしれないが、その周りの肉がまだついていない。今後どういった議論が行われ、KPIが設定されていくのかを注目し続けておきたい。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。https://www.hckn.work

