【医療業界動向コラム】第197回 骨太の方針2026から今後の社会保障・医療分野の動向を読み解く ①
2026.07.30
令和8年7月21日、例年よりも約1か月遅れて経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針2026)が閣議決定された。
全体的な印象としては、伸びる(であろう)事業分野への積極的な投資を通じて成長し続けることを目指す内容になっている。明るい未来を感じさせる一方で目先の物価高対策への対応と食料品消費税減税の扱いがなお不透明なことであることに加え、外国人施策に対する厳しい姿勢など、気になる点も多々ある。また、以前お伝えしたとおり(第193回)、補正予算を抑制すべく、予算に柔軟性を持たせる点も注目点だといえる。
医療分野に焦点を当てて、今回と次回にわたっておさえておきたいポイントを確認していきたい。
目次
基本的な考え方~「給付と負担の見直し」「医療提供体制の確保」「攻めの予防医療」~
第1章「マクロ経済運営の考え方」に医療を含む社会保障の考え方と対応方針が示されている。ポイントは3つ。「給付と負担の見直し」「医療提供体制の確保」「攻めの予防医療」だ(図1)。

図1 マクロ経済運液の基本的考え方より
内閣府 経済財政運営と改革の基本方針2026にHCナレッジ合同会社が加筆(クリックして拡大表示)
給付と負担の見直しについては、現役世代の保険料率の上昇を抑制する目的の一つとして、今年度の特別国会で成立している健康保険法改正において後期高齢者の金融所得を保険料率及び窓口負担に反映して設定することが決まっている。早ければ5年後にも導入される可能性がある。今回の方針はこうした見直しを着実に推進していくということでもある。また、高齢者の窓口負担を原則3割とすることも折を見て検討していくことになるだろう。高額療養費における自己負担上限額の引き上げも今後段階的に行われていくことが健康保険法改正からも読み解けることから、中長期的に考えると、高齢者を中心に病状が安定している患者の外来受診頻度が減少していくことが考えられるだろう。そうした時代が訪れることを見据え、健診などの事業や在宅医療や専門診療など新たな取り組みを準備しておきたい。
医療提供体制の確保 〜新たな地域医療構想と医療DXの着実な推進〜
医療提供体制の確保については、新たな地域医療構想の推進と医療DXの利活用による医療従事者の負担軽減も合わせて考えておくことになる。こちらも、先の健康保険法改正の中で医療機関による業務効率化への取組を責務とすること、また厚生労働省による業務効率化に積極的に取組む医療機関を認定する制度も始まる予定だ(図2)。

図2 業務効率化・勤務環境改善に取り組む医療機関の認定制度
厚生労働省 健康保険料等の一部を改善する法律資料にHCナレッジ合同会社が加筆(クリックして拡大表示)
攻めの予防医療〜女性の健康課題への対応を、プレコンセプションケア、コラボヘルス〜
攻めの予防医療については、本年5月に取りまとめが行われている(図3)。女性の健康課題への対応、プレコンセプションケアの推進、企業及び保険者とのコラボヘルスの3点だ。注目したいのは、昨年推進5カ年計画が策定されたプレコンセプションケア。学校や職場を通じた健康指導であり、若いカップルに向けた出産・育児を含めた指導などの環境作りだ。

図3 攻めの予防医療
内閣官房 攻めの予防医療に向けた性差に由来するヘルスケアに関する副大臣等会議(クリックして拡大表示)
社会保障改革の工程表を今年度中に策定へ
そして、政権与党による連立政権合意書にある13の社会保障改革項目(図4)について、着実に実行していくことが明記されている。

図4 連立政権合意文書より
内閣府 第7回経済財政諮問会議資料にHCナレッジ合同会社が加筆(クリックして拡大表示)
保険と給付の見直しや医療費適正化の色合いが強い内容となっている。積極的な投資による成長戦略を前面に打ち出した骨太の方針2026の中にあっても、従来から続く社会保障費の適正化の流れは維持されており、見直しが可能な分野については引き続き改革が進められていく方針に変わりはない。むしろ、現役世代の負担軽減の観点から、高齢世代にとってはやや厳しくなる場面も出てくる。結果として、長期処方やOTC類似薬の積極的な利用を促すことになるだろう。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。https://www.hckn.work

