【医療の「今」を読み解く】第1回 医療DXの進捗を「見える化」 新ダッシュボードから見る現在地

2026.08.28

2026年7月、デジタル庁と厚生労働省は「医療DXに関するダッシュボード」を公開しました。マイナ保険証や電子処方箋など、医療DXに関するさまざまな施策の進捗状況を一元的に把握できるものです。今回は、ダッシュボードに掲載されたデータから、医療DXがどこまで進んでいるのか、その現在地を見ていきます。

経営医療DXの進捗を一元的に「見える化」

「医療DXに関するダッシュボード」では、「保険資格確認」「処方・調剤」「健康管理」「自治体が実施する健康・医療・介護分野の事業のデジタル化(PMH)」の4つの領域について、取り組みの進捗状況を確認できます。マイナ保険証や電子処方箋、マイナポータルでの医療情報閲覧など、これまで個別に公表されてきたデータを一元的に確認できるようにした点が特徴です。

また、単に最新の数値を掲載するだけでなく、マイナ保険証や電子処方箋については、内訳や時系列データも掲載されています。医療DXの各施策がどこまで普及し、実際にどの程度利用されているのかを継続的に把握できる仕組みとなっています。

出典: 医療DXに関するダッシュボード|デジタル庁

マイナ保険証の利用拡大、電子処方箋は薬局が先行

例えばマイナ保険証では、健康保険証としての登録状況だけでなく、実際に医療機関や薬局でどの程度利用されたのかを示す「利用率」も掲載されています。利用率は、外来レセプト件数に対するマイナ保険証の利用人数の割合で算出されるもので、時系列で推移を確認することができます。従来の健康保険証の新規発行が終了した2024年12月以降も利用は広がっており、医療DXの進展を「導入」だけではなく、実際の利用という側面から確認できます。

電子処方箋では、さらに詳細なデータが公開されています。病院、医科診療所、歯科診療所、薬局の4つに分けて導入状況を比較できるほか、都道府県別、市区町村別の状況も確認できます。2026年7月時点の導入率は、病院21.1%、医科診療所30.4%、歯科診療所11.0%、薬局91.0%となっており、医科では病院よりも診療所で導入が進んでいる状況がうかがえます。特に普及が進んでいるのが薬局で、すでに9割を超える施設で電子処方箋が導入されており、他の施設種別に先行しています。

出典:デジタル庁「医療DXに関するダッシュボード」(2026年7月時点)

電子処方箋の普及に地域差 石川県が全国トップ 

地域別に見ると、電子処方箋の導入状況には大きな差があります。病院、医科・歯科診療所、薬局を合わせた全施設の導入率では、石川県が57.8%で全国トップとなった一方、最も低い沖縄県は34.3%でした。施設種別に見ると、病院では島根県が39.1%で最も高く、福島県が12.6%で最も低くなっています。医科診療所では石川県が48.0%でトップとなった一方、徳島県は17.5%にとどまりました。また、薬局では石川県の導入率が98.6%に達しています。

出典:デジタル庁「医療DXに関するダッシュボード」(2026年7月時点)

石川県で電子処方箋の普及が進んだ背景には、公立松任石川中央病院など地域の中核病院が中心となり、石川県薬剤師会などと連携して導入を進めてきたことがあります。同病院では2024年6月から院外処方箋を原則として電子処方箋に一本化するなど、地域全体で電子処方箋を利用できる環境づくりを進めてきました。

重複投薬等チェック、約1,271万件に 

さらに電子処方箋では、「導入拡大」「活用・定着」「重複投薬等チェックの実行」という3段階に分けて進捗を可視化しています。調剤結果が電子処方箋管理サービスに登録された割合や、複数の医療機関・薬局をまたいで薬剤情報を確認する「重複投薬等チェック」の実行件数、重複投薬・併用禁忌のアラート件数なども確認できます。2026年7月時点で、重複投薬のアラートは累計約1,271万件、併用禁忌のアラートは累計2万1,644件に上っています。電子処方箋が実際の医療安全にどのように活用されているのかも数字から見えるようになっています。

出典:デジタル庁「医療DXに関するダッシュボード」(2026年7月時点)

今後は電子カルテなども掲載予定

現時点で、すべての医療DX施策がダッシュボードに掲載されているわけではありません。電子カルテのほか、PMHのうち自治体検診、予防接種、介護情報基盤などについては今後掲載される予定で、各種データも定期的に更新されます。

医療DXが進む中、重要になるのはシステムを導入することだけではなく、それが実際の医療現場でどの程度利用され、どのような効果につながっているかという視点です。今後掲載される指標が増えることで、医療DXの進展をより多面的に把握できるようになると考えられます。

執筆者プロフィール

横井かずえ(よこい かずえ)氏

2000年3月に明治大学法学部を卒業後、医薬専門誌『薬事日報』を発行する薬事日報社に入社。記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材。2013年に独立し、現在はフリーランスの医療ライターとして、医師・看護師向けの専門誌やWebメディア、一般向けの医療記事まで幅広く執筆している。共著に『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社)。
URL:https://iryowriter.com/
X:@yokoik2

連載記事に関連するコラム

資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら
検討に役立つ資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら