【医療業界動向コラム】第196回 令和8年8月からの高額療養費制度のポイント

2026.07.24

令和8年8月より、高額療養費制度の自己負担上限額が引き上げられる。その一方で、多数回該当は据え置きとなり、さらに自己負担の年間上限額が導入された。これまで通り、高額な医療費負担を伴う長期療養者の負担軽減は図られる内容となっている。なお、今回の見直しは、令和9年8月から実施される所得区分の細分化などの見直しに向けた激変緩和措置的な意味合いが強い。ただ、今後も医療費の負担割合や保険料率を引き上げていく可能性があることを踏まえて、本年の特別国会で成立した健康保険法等の改正の中では高額な医療費負担を伴う長期療養者の家計への影響を考慮することが明記された。断続的に高額療養費における自己負担上限額が引き上げられることが想定される。

従来の高額療養費との違いを確認

先述の通り、自己負担上限額の引き上げと、年間上限額の導入が大きな変更点だ(図1、図2)。この年間上限額は総医療費ではなく、自己負担額で計算する。そのため、従来ルールでは多数回該当を利用できなかった患者も年間上限額を超える場合は、負担軽減を図ることができる。高額な医療費負担を伴う長期療養者の範囲とともに、負担の軽減幅が広くなったとも言える。

図1 70歳未満の高額療養費制度(令和8年8月~令和9年7月)
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆様へ」(クリックして拡大表示)

図2 70歳以上の高額療養費制度(令和8年8月~令和9年7月)
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆様へ」(クリックして拡大表示)

例えば、年収370~770万円程度の方でひと月の自己負担額が55,104円の場合、従来のルールでは高額療養費の対象にはならなかった。本年8月以降は年間上限が適用されることで、年間の医療費が131,248円軽減される。毎月受診をして検査等も手厚くしてもらい、重症化予防につなげることができるだろう。ただし、年間上限額は毎年8月から翌年7月までの1年間で上限額に達したか否かで判断されるという点に注意が必要だ。なお、3か月処方にすると自己負担額は152,300円/回となる。総医療費で計算すると高額療養費の対象となるため、受診頻度を見直すことで高額療養費の対象となることもできる。

世帯合算について改めて理解

世帯合算とは、複数の受診や同一世帯(同じ医療保険に限る)の受診について、窓口で支払った自己負担額を1か月単位で合算できるもの。その合算額が一定額を超えたときは、超えた金額分の支給が受けられる(図3)。

図3 世帯合算について(HCナレッジ合同会社にて作成)(クリックして拡大表示)

注意点としては入院と外来は別算定になること、70歳未満の場合は21,000円以上でなければ合算できないことなどがある。70歳以上の場合は入院と外来は別算定になることに加えて、先にそれぞれの外来の個人分(令和8年8月以降は22,000円未満、令和9年8月以降は28,000円未満であれば世帯合算で算出する)を世帯合算に反映させて計算することだ。この世帯合算についてはケースによって異なるが、自己負担上限額の設定はやや影響を受ける可能性がある。

また、健康保険組合では、独自の付加給付制度を設定していることもあり、さらなる負担軽減も期待できる。保険者番号で確認してみよう。

高額療養費を利用できない患者への対応は?

急性期の疾患など一時的に高額な医療を必要とするケースや、高額な医療でありながらも収入と自己負担上限額の影響で高額療養費を利用できないケースもでてくるだろう。

毎年の薬価改定に伴う薬価そのものの引き下げ、さらに後発医薬品のある先発医薬品の薬価を後発医薬品の薬価と同等に引き下げる制度(G1ルール)がさらに前倒しされる。そのため、先行バイオ医薬品を使用しても高額療養費を利用できないケースも想定され、高額療養費制度は利用できないもののバイオ後続品を利用した自己負担を軽減するということだ。令和8年度診療報酬改定では、一般名処方加算の対象にバイオ後続品も追加され、薬局ではバイオ後続品調剤体制加算(インスリン製剤は対象外)が新設された。医療機関・薬局ではバイオ後続品の活用が評価の対象にもなっている。

物価高が続く中で、受診控えが懸念されている。通院治療をしている患者に対して、高額療養費制度に関する正しい知識やバイオ後続品を利用した自己負担軽減策などの情報を積極的に提供し、治療のドロップアウトを防ぐようにしたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。https://www.hckn.work

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