共生型サービスとは?経営課題を解決する新事業の始め方|報酬・基準・リスクを解説
2026.05.18
介護事業所や障がい福祉サービス事業所の経営において、利用者の伸び悩みや人材の確保といった課題に直面されている方も少なくないでしょう。
既存事業の安定化を図りつつ、新たな収益の柱を模索する中で「共生型サービス」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
しかし、具体的にどのような制度で、自施設の経営にどのような影響をもたらすのか、判断材料が不足しているのではないでしょうか。
本記事では、共生型サービスの基本的な仕組みから、事業化を判断するために不可欠なメリットとデメリット、報酬体系、人員基準、導入後の運営リスクまで解説します。
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目次
共生型サービスの基本|制度の目的と仕組み

共生型サービスは、2018年度の介護保険制度と障がい福祉制度の同時改定によって創設された制度です。
参照:厚生労働省「共生型サービス」
簡単に言えば、介護保険サービス事業所が障がい福祉サービスを、障がい福祉サービス事業所が介護保険サービスを、より提供しやすくなるように設けられた仕組みです。
これまで別々に運営されてきた二つの制度の垣根を低くすることで、高齢者と障がい者が同じ事業所で、それぞれのニーズに合った支援を受けられる環境を目指しています。
制度創設の背景にある「65歳の壁」
共生型サービスという制度が生まれた背景には、「65歳の壁」と呼ばれる深刻な問題がありました。
具体的には、障がい福祉サービスを利用していた方が65歳になると、原則として介護保険サービスが優先されるため、長年通い慣れた事業所を離れなければならないという課題です。
利用者にとっては、環境の変化が大きな心身の負担となるだけでなく、築き上げてきた人間関係が途絶えてしまうことにもつながります。
共生型サービスはこうした制度上の障壁を取り払い、年齢を重ねても住み慣れた地域で、安心してサービスを継続利用できる社会を実現するために導入されました。
対象となるサービス種類と利用者の範囲
共生型サービスの対象は、介護保険と障がい福祉の両制度で共通性の高いサービスが中心です。
具体的には、以下の3つのサービス類型が設けられています。
| サービス類型 | 介護保険サービス | 障がい福祉サービス |
|---|---|---|
| 訪問系サービス | 訪問介護 | 居宅介護・重度訪問介護 |
| 通所系サービス | 通所介護(デイサービス) | 生活介護・自立訓練(機能訓練・生活訓練)・児童発達支援・放課後等デイサービス |
| 短期入所系サービス | 短期入所生活介護(ショートステイ) | 短期入所 |
これにより、例えば通所介護事業所が障がいのある方や子どもたちを受け入れたり、放課後等デイサービス事業所が高齢者を受け入れたりすることが可能です。
受け入れ対象となる利用者の範囲も広く、介護保険の要介護認定を受けた方や、障害者総合支援法に基づく障害支援区分認定を受けた方などが含まれます。
共生型サービス導入のメリット・デメリット

共生型サービス事業の導入を検討する上で、メリットとデメリットを正確に把握することは極めて重要です。
ここでは、経営的な観点から、収益性や運営リスクに関わるポイントを具体的に比較検討していきます。
事業判断の一助としてお役立てください。
事業の安定化と成長につながる4つのメリット
共生型サービスの導入は、事業所に多くの好影響をもたらす可能性があります。
1. 利用者層の拡大と収益の安定化
共生型サービスにより、高齢者だけでなく障がい者や障がい児もサービスの対象とすることで、利用者層が大きく広がります。
これにより、地域の人口動態の変化に左右されにくい、安定した事業所運営が期待できます。
結果として、施設の稼働率向上や収益の安定化に直結するでしょう。
2. 人材の有効活用と専門性の向上
共生型サービスでは、介護保険と障がい福祉の垣根を越え、両分野の職員が同じ現場で働きます。
これにより、福祉業界全体の課題である深刻な人材不足に対し、限られた人的リソースをより柔軟かつ有効に活用することが可能です。
また、異なるバックグラウンドを持つ職員同士が日常的に連携することで、専門知識やスキルの共有ができることも利点の一つです。
高齢者ケア特有の身体介助技術と、障がい福祉で重視される自立支援や社会参加のノウハウが融合することで、多角的な視点からのケアを実現できます。
こうした相互研鑽の環境は、職員全体の品質向上をもたらし、利用者一人一人に寄り添ったサービス提供へとつながります。
3. 指定基準の緩和による参入のしやすさ
共生型サービスを導入する大きなメリットの一つが、指定基準の緩和措置です。
すでに一方の制度で指定を受けていれば、もう一方の制度の指定を受ける際に、人員配置や設備に関する基準が一部緩和されます。
これにより、新たな設備投資や人材確保の負担が軽減され、事業の開始を円滑化できます。
4. 地域共生社会への貢献と企業価値の向上
地域の多様な福祉ニーズに応えることは、事業所の社会的な評価を高めます。
立ち上げた共生型サービスが地域に不可欠な存在として認知されることで、利用者やその家族からの信頼獲得、職員採用の有利性につながる可能性があります。
検討すべき3つのデメリット
一方で、共生型サービスの導入にあたっては慎重に検討すべきデメリットや運営リスクも存在します。
1. 専門性の異なる利用者への対応
高齢者と障がい者・障がい児では、必要とされるケアの内容やコミュニケーションの方法が異なります。
職員には、両方の特性を理解し、個別に対応できる高度なスキルが求められます。
そのため、職員への研修や教育体制の構築が不可欠となり、相応のコストと時間が必要です。
2. 現場で起こりうるトラブルへの備え
生活リズムや価値観の異なる利用者が同じ空間で過ごすことで、予期せぬトラブルが発生する可能性があります。
例えば、静かに過ごしたい高齢者と活発に活動したい障がいのある若者との間で、摩擦が生じるかもしれません。
こうした事態を想定し、空間の工夫やプログラムの調整など、事前の対策を講じておく必要があります。
3. 複雑な報酬体系と請求業務の負担
介護保険と障がい福祉では、介護報酬や訓練等給付費の算定方法が異なります。
両方の制度にまたがってサービスを提供する場合、請求業務が煩雑になりやすいことは懸念点の一つです。
算定要件の理解が不十分では、意図せず減算の対象となるリスクもあり、正確な知識と適切な管理体制が求められます。
【実践編】共生型サービスの始め方

以下では、実際に共生型サービスの事業を始めるために必要な基準や手続きについて、実践的な内容を解説します。
各自治体の行政が公開している概要をもとに、要点を3つに整理してお伝えします。
1. 指定を受けるための人員・設備・運営基準を確認する
共生型サービスの指定を受ける際は、人員・設備・運営基準における緩和措置を正しく把握することが重要です。
理由は、すでに介護か障がいのどちらか一方で指定を受けている事業所であれば、既存のリソースを最大限に活用して新たなサービスを始められるよう制度設計されているためです。
具体例として、高齢者向けの通所介護事業所が共生型生活介護の指定を受ける場合、一定の要件を満たせばサービス管理責任者の配置が不要となったり、食堂や機能訓練室などの設備をそのまま共有できたりする特例があります。
このように、参入障壁が低減されている点が共生型サービスの大きな特徴ですが、緩和される詳細な基準は自治体ごとに独自の運用ルールが設けられている場合があります。
円滑な開設に向けて、検討段階で管轄の行政窓口へ事前確認を行いましょう。
2. 介護報酬の仕組みから収益シミュレーションを行う
事業の採算性を判断する上で、報酬体系の理解は欠かせません。
共生型サービスでは基本的に、提供するサービスに対応した介護保険または障がい福祉サービスの報酬が算定されます。
例えば、通所介護事業所が障がいのある方を受け入れた場合、その方については障がい福祉サービスの共生型生活介護サービス費などを請求します。
ここで重要となるのが、収益を左右する加算と減算です。
専門性の高い支援を提供した場合に算定できる加算がある一方で、人員配置が基準を満たさない場合などには報酬が減算されます。
特に、介護保険と障がい福祉の両制度にまたがるため、それぞれの算定要件を正確に把握し、請求漏れや誤請求を防ぐ体制を整えることが経営上で重視すべきポイントと言えます。
3. 申請から事業開始までの手順を追う
共生型サービスの指定を受けるための大まかな流れは、以下のとおりです。
- 事前相談
まずは、事業所を管轄する都道府県や市町村の担当窓口に相談します。
事業計画や基準について確認し、必要な書類などを把握します。 - 申請書類の提出
事業計画書や運営規程、職員の勤務体制一覧表など、指定された書類を作成して提出します。 - 審査・現地確認
提出された書類の内容が基準を満たしているか、審査が行われます。
必要に応じて担当者が事業所を訪問し、設備などの現地確認が行われる場合もあります。 - 事業所指定の通知
審査の結果、基準を満たしていると認められれば、指定通知書が交付されて事業を開始することができます。
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共生型サービス導入後の運営を成功させる工夫

指定を受けて共生型サービスを開始した後も、安定した運営を継続していくためにはさまざまな工夫が求められます。
実際の現場で活かせるノウハウや考え方を知ることが、成功への近道となるでしょう。
以下では、具体的な事例や現場での工夫を紹介します。
導入を成功させた事業所の取り組み事例
共生型サービスを実際に導入した事業所では、既存設備の有効活用やスタッフの専門性向上など、多角的な成果が報告されています。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社による調査では、制度の創設当初は認知度の低さが課題となっていましたが、近年は障がい者ケアに関心を持つ介護事業所が増え、参入数は着実に増加傾向にあります。
具体的な運営の工夫や参入のメリットをより深く理解するためには、先行事例を確認することが有効です。
同社の報告書では、多様な導入モデルや実務上のヒントが詳細にまとめられていますので、ぜひご参照ください。
参照:株式会社ワイズマン「共生型サービス 普及のカギは介護事業者に 先行事例のメリット知って 三菱UFJリサーチ研修会」
参照:株式会社ワイズマン「「介護と障害も」 共生型サービス 739事業所に 三菱UFJリサーチ 理念と経営メリット両立」
参照:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「共生型サービスの実態把握及び普及啓発 に関する調査研究事業 報告書」
世代間・特性間ギャップを乗り越える工夫
高齢者と障がい者・障がい児がともに快適に過ごすためには、双方の特性への配慮が不可欠です。
例えば、大きな声や活発な動きが苦手な高齢者もいれば、じっとしているのが苦手な子どもたちもいます。
こうしたギャップを乗り越える工夫として、以下のような取り組みが考えられます。
- 空間の工夫
パーテーションなどで空間を緩やかに区切り、一人で静かに過ごせるクールダウンスペースを設ける。 - 時間の工夫
午前中は全員でレクリエーション、午後は個別の活動時間とするなど、プログラムにメリハリをつける。 - 相互理解の促進
職員が間に入り、お互いの得意なことや苦手なことを理解し合う機会を作る。
これにより、互いを一人の個人として尊重する雰囲気が醸成される。
2040年を見据えた共生型サービスの課題と将来性

共生型サービスは目先の経営課題を解決するだけでなく、長期的な視点で見ても重要な意味を持つ事業です。
人口減少と超高齢化が進行するといわれる2040年に向けて、福祉サービスのあり方は大きく変わっていくことが予想されます。その中で共生型サービスがどのような役割を担っていくのか、将来性について考察します。
参照:厚生労働省「「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」 現状と課題・論点について」
参照:株式会社ワイズマン「介護業界の今後はどうなる?2040年を見据えた将来性と課題をデータで徹底解説」
今後の制度改正による規制緩和とDX化
国は地域共生社会の実現を重要な政策目標として掲げており、今後も共生型サービスを推進していく方針です。
将来的には、人員配置基準のさらなる弾力化や、既存施設のより柔軟な活用を認める規制緩和が進む可能性があります。
また、福祉業界全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速しており、共生型サービスに役立つICTやAIを活用した記録業務の効率化や、利用者情報のスムーズな共有が進むでしょう。
こうした変化の波を捉え、積極的に対応していくことが、将来にわたって選ばれ続ける事業所となるために必要です。
地域で活用できる補助金制度の探し方
共生型サービスの導入を後押しするため、自治体によっては施設の改修費や備品の購入費を支援する、独自の補助金制度を設けている場合があります。
こうした制度を活用することで、初期投資の負担を軽減できる可能性があります。
まずは、自治体の情報サイトを調査するか、管轄の福祉担当部署に直接問い合わせてみることを推奨します。
利用できる制度は積極的に活用し、事業の開始に備えましょう。
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共生型サービスは、介護保険と障がい福祉の両制度で共通性の高い訪問・通所・短期入所などを中心に、事業所がもう一方の制度のサービスを提供しやすくする仕組みです。対象となるサービスでは、障がいのある方が65歳以降も慣れた事業所を利用しやすくなるなど、支援の継続につながる可能性があります。事業所にとっては、利用者層の拡大や既存設備・人材の有効活用につながる一方、高齢者、障がい者、障がい児では必要な支援や配慮が異なります。導入時は、対象サービス、人員・設備・運営基準、報酬や請求、加算・減算の要件を確認し、管轄自治体へ事前相談することが重要です。職員研修、空間や時間の工夫、記録・請求管理を整え、地域ニーズと自事業所の体制に合った範囲で段階的に進めることが、安定した運営とサービスの質の確保につながります。
まとめ:未来を拓く一手として共生型サービスに取り組んでみよう

共生型サービスは、単に受け入れる利用者の範囲を広げるだけの制度ではありません。
利用者減少や人材不足といった経営課題を克服し、地域社会に深く貢献することで、事業の持続的な成長を実現するための戦略的な一手となり得ます。
導入には解決すべき課題もありますが、それを上回る大きな可能性を秘めていることも事実です。
本記事が、新たな事業計画のきっかけや参考となれば幸いです。
まずは情報収集の一環として、管轄の行政窓口に相談してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
監修:梅沢 佳裕
人材開発アドバイザー
介護福祉士養成校の助教員を経て、特養、在宅介護支援センター相談員を歴任。その後、デイサービスやグループホーム等の立ち上げに関わり、自らもケアマネジャー、施設長となる。2008年に介護コンサルティング事業を立ち上げ、介護職・生活相談員・ケアマネジャーなど実務者への人材育成に携わる。その後、日本福祉大学助教、健康科学大学 准教授を経て、ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表として多数の研修講師を務める。社会福祉士、介護支援専門員、アンガーマネジメント・ファシリテーターほか。

