【医療業界動向コラム】第124回 オンライン診療・D to P with Nに関する規制緩和、診療報酬改定の動向
2025.01.28

毎年6月に取りまとめが行われる規制改革推進のとりまとめだが、令和6年12月にその中間とりまとめが行われ、公表されている。医療に関する分野としては、地方創生のカテゴリで地域におけるオンライン診療の普及のための規制緩和、投資大国のカテゴリで医療データの利活用と物資輸送のためのドローン運航などが盛り込まれている(図1-2)。

図1_規制改革推進に関する中間答申①(※画像クリックで拡大表示)

図2_規制改革推進に関する中間答申②(※画像クリックで拡大表示)
特に注目したいのは、地方創生のカテゴリにあるオンライン診療についてだ。地方創生のカテゴリにあるので、基本的には医療資源が限られた地域での普及・促進という考え方だ。以前お伝えしているが、オンライン診療については令和7年医療法改正で明確化を図る(図3)こととなっている(参照:第121回 令和7年度の医療法改正、6つのポイントを確認する)。

図3_オンライン診療の新たな規定の創設について(※画像クリックで拡大表示)
D to P with Nに対する規制緩和の方向性
今回の中間とりまとめでは、オンライン診療専用車両の利活用も含めたD to P with Nに関する規制の緩和についても記載されている。ポイントは以下の通り。
「特に離島や山間地などの医療アクセスが限られた地域等の患者に必要な医療を提供する観点から、特定オンライン診療受診施設において、看護師等による診療の補助行為を可能とするべきとの指摘があること等を踏まえ、特定オンライン診療受診施設における看護師等による診療の補助行為の実施可否の検討(実施可能な診療の補助行為の内容についての検討を含む。)を行うこと。また、急変時の体制確保において事前に関係医療機関との合意を行うことについては、少なくとも現行のオンライン診療指針と同様に、離島など、急変時の対応を速やかに行うことが困難となると想定される場合とすること。」
令和6年度診療報酬改定では、「看護師等遠隔診療補助加算(50点)」としてD to P witn Nの評価が創設されたところ。しかしながら、処置については算定ができないことが課題となっており、状況によっては処置を行うものの、自費診療となることもある。
必要な環境整備と課題解決
D to P witn Nの実践ではクラウド型の電子カルテとプライマリ領域の診療看護師(NP)もしくは特定行為研修を受けた看護師による対応がポイントになる。
クラウド型電子カルテについては、遠隔での医師・看護師との連携になるため、タイムリーな情報共有で有用だ。また、オンライン資格確認も必要だ。患者としてはマイナ保険証に不安があるかもしれないが、あわただしい外来診療の場面よりもスタッフのサポートは手厚く、便利に感じてもらえる。そして何よりも、リアルタイムで医師と遠隔で情報共有が可能となる。遠隔地に医師はいながらも、情報を手元で参照できる。ただ課題としては、通信回線の安定性と電源の問題があるだろう。ここ数年、遠隔で使用できる診療補助デバイスが多く出てきているが、電源の確保がネックになる。診療看護師や特定行為研修修了者の看護師による診療対応がポイントとなるのはそうした理由からだ。
気が早いが、間もなく令和8年度診療報酬改定に関する議論が始まる。医療資源が限られた地域における手厚い評価、要件取る手厚い評価、要検討の緩和など期待される。

山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。
https://www.hckn.work