【医療業界動向コラム】第108回 令和9年度からの新しい地域医療構想では、病床機能に加えて医療機関機能の報告も

2024.09.24

令和6年9月6日、厚生労働省において新たな地域医療構想等に関する検討会が開催された。現行の地域医療構想が令和7年度の必要病床数を目標としており、間もなく終わりを迎える。そこで、現行の第8期医療計画の中間見直し後の始まりの年になる令和9年度から新たな地域医療構想を開始するための検討会だ。今後の予定としては、年内に取りまとめを行い、令和7年度中に新たな地域医療構想の策定のためのガイドラインを策定し、各都道府県においてガイドラインを基に令和8年度中に地域医療構想を策定、令和9年度からの取組開始、という予定となっている。

〇地域での連携・役割分担を明確にするための医療機関機能を新たに設定へ

新たな地域医療構想の方向性(図1)では、「今後の連携・再編・集約化をイメージできる医療機関機能に着目した医療提供体制の構築」という方針が明らかにされている。

図1_新たな地域医療構想の基本的な方向性(案)(※画像クリックで拡大表示)

これまでの地域医療構想は病棟・病床機能に着目されたため、病院そのものの役割・特徴が周囲に伝わりにくかった。また、令和6年度診療報酬改定で新設された地域包括医療病棟や、在宅強化型もしくは超在宅強化型の介護老人保健施設への退院患者の半数については在宅復帰率の計算対象になることとなった地域包括ケア病棟など、病院の中の病棟構成等が複雑になってきている。その結果として、紹介・逆紹介などを含む地域医療連携の推進に影響もでてきている。そこで新しい地域医療構想では、入院機能だけではなく、外来・在宅・介護も包括した考え方になるため、連携の視点、すなわち、地域の住民や医療機関・介護施設にとってもわかりやすさが必要になる。具体的には、病床機能報告は従来通り残しながら、新たに医療機関そのものの機能に関する報告を求める方針が明らかにされ、厚生労働省からは具体的に6つの医療機関機能のイメージが示された(図2)。

図2_医療機関機能に関する案(※画像クリックで拡大表示)

人口に占める高齢者の割合が高まる時代に合わせ、急性期の在り方も見直し、在宅への対応なども踏まえたものとなっている。

医療機関の機能に求められるのが上段で、下段は他の医療機関を支援する機能、医療計画でいうところの6事業(新興感染症対策、救急医療、災害医療、小児医療、周産期医療、へき地医療など)を想起させるようなものとなっている。私の個人的な観点で、新しい医療機関機能と従来の病床機能報告と診療報酬項目を関連づけて整理してみた。なお、外来・在宅も含めた地域医療構想となるので、主に診療所によるかかりつけ医機能についても追加している(図3)。

図3_病床機能報告と医療機関機能を組み合わせた考え方の例(※画像クリックで拡大表示)

今後注目したいのが、慢性期(療養病棟)の在り方だろう。地域包括ケア病床の導入や在宅医療への対応などが今後必要になりそうだ。そうした在宅への対応が難しい場合は、介護医療院やかかりつけ医機能のある有床診療所などへの転換なども視野に入れておきたい。

実際の医療機関機能については、国が大きく緩やかな方針を決め、都道府県で地域の実状にあわせやすいように自由度が高く整理できるようにすることとなる予定だ。まずは、年内のとりまとめの内容を確認し、地域における自院の在り方を考える機会を作ることが必要だ。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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