【医療業界動向コラム】第66回 介護・障害福祉サービスと病院の連携に対する評価の動向

2023.11.07

※このコラムは2023年11月7日時点の情報をもとにしております。

令和5年10月27日、第169回社会保障審議会・医療保険部会が開催され、令和6年度診療報酬改定の基本方針案が厚生労働省より提示され、議論された。基本的な視点を考えるにあたり、厚生労働省から次の4つの基本認識が示された。

物価高騰・賃金上昇、経営状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応

全世代型社会保障の実現や、医療・介護・障害福祉サービスの連携強化、新興感染症など医療を取り巻く課題への対応

医療DXやイノベーションによる質の高い医療の実現

社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和

特に人材確保の必要性については、「現下の食材料費をはじめとする物価高騰の状況、30年ぶりの高水準となる賃上げの状況などといった経済社会情勢は、医療分野におけるサービス提供や人材確保にも大きな影響を与えており、患者が必要とする医療が受けられるよう、機動的な対応が必要」との認識が示され、最終的に医療を必要とする地域住民・患者への影響が出ないようにする対応の必要性を説いている。また、制度そのものの持続可能性を堅持するための国民の制度に対する納得感を高めるための取り組み、すなわち現状の医療情勢や財政に対する理解を求め、かかりつけ医機能や紹介受診重点医療機関、薬剤費などの自己負担増や後発医薬品に対する理解・協力を求めるものとも考えられる。

基本認識を踏まえて、令和6年度診療報酬改定の基本的な視点案が提示された。令和6年度からは勤務医の働き方改革も始まることも踏まえ、重点課題に「人材確保・働き方改革」を据えている。診療報酬においては、基本診療料による幅広い対応の他に、チーム医療やコメディカルスタッフの手厚い配置やチーム医療への取組を通じた個別医療機関の努力を各種加算で評価していくことが考えられる。

各視点ごとにポイントを確認してみる。

視点1(図1)は先に述べた通り、人材確保。働き方改革の注目すべき文言として、「特に医師、歯科医師、薬剤師及び看護師以外の医療従事者の賃金の平均は全産業平均を下回っており、また、このうち看護補助者については介護職員の平均よりも下回っていることに留意した対応が必要」というものがある。近年、看護補助者の採用に苦戦していることはよく知られているが、あえて強調されている点に注目したい。

図1_基本的視点①

視点2(図2)は地域包括ケアシステムの推進のために、医療DXや外来機能・感染対策における平時と緊急時の連携などの環境整備の推進だ。

図2_基本的視点②

ここまでの診療報酬改定の議論では高齢患者の急性期入院が大きく取り上げられているが、この視点2では「増加する高齢者急性期医療のニーズや地域医療構想などを踏まえた、患者の状態に応じた適切な医療資源を効率的に提供するための機能分化の推進」と表現され、盛り込まれている。入院と外来、それぞれの役割分担と医療・介護・障害福祉の連携を積極的にICTなどを活用していくことが促されている。

視点3(図3)は物価高騰への対応の必要性が大きく盛り込まれている。また、安心・安全というキーワードのもと、人生の最終段階における医療の充実が盛り込まれ、周産期や小児、精神など第8次医療計画における5つの疾病・6つの事業に対する領域の対応の必要性についても記載されている。

図3-1_基本的視点③-1
図3-2_基本的視点③-2

「質の高いリハビリテーションの評価など、アウトカムにも着目した評価を推進」というリハビリテーションに対する成果の追求の文言が含まれ、病院薬剤師業務に対する評価の拡充についても期待されている。

視点4(図4)は医療制度の持続可能性を維持するための取り組みだ。安定供給に対する問題が続いているが、医療費抑制の観点と患者の経済的負担を軽減するためのバイオシミラーを含む後発医薬品の使用促進についても記載されている。

図4-1_基本的視点④-1
図4-2_基本的視点④-2

そして、長期収載品などについては、先発医薬品と後発医薬品の薬価差を患者の自己負担とすることや市販類似薬の患者自己負担を引き上げることなどが念頭に置かれている。リフィル処方箋の推進についても記載されており、市販類似薬の自己負担増やリフィル処方箋の推進は軽症者を中心に受診機会の減少につながることを意識しておく必要がある。

今後、議論を重ね、12月上旬にも確定される予定だ。その後、年末の予算編成を経て改定率が決まり、年明け早々に基本的な視点に基づき、中医協で細かな項目と要件が設定され、2月上旬に答申される予定だ。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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