【名南経営の人事労務コラム】第28回 職員採用時の労務管理の在り方

2023.08.24

 人材を募集してもなかなか思うように人材確保が進まない、といった声を全国各地の福祉施設から耳にしますが、労働力人口が減少することが確実視されていることから、今後も現在のような状況は続くは間違いありません。

 そうした状況下ですので、応募のあった人材を十分に見極めることなく採用して失敗をしたといったことは多くの施設が経験していることではないかと思いますが、実際に採用をすれば容易に解雇ができないことから、採用時においてはしっかりと様々な面を整えておきたいところです。

 さて、その応募から採用に至るまでについては、募集要項の提示から採用面接に至り、雇用契約書を締結して採用、といった一連の流れとなりますが、それぞれを紐解くとトラブルの要素が隠れていることもあり、改めてその運用方法等を再考してもよいでしょう。

 まず募集要項については、実態や事実と異なるようなケースは論外ですが、ネガティブな情報もしっかりと出しておくことが逆に安心感にも繋がることもあることから、書き方や内容には工夫をしたいところです。その後の採用面接においても同様で、質問ばかりではなく、実情も伝えながら話をすると採用後に「そんな話は聞いていなかった」「こんなところだとは思わなかった」といったようなことですぐに退職をするといったようなことは最小限に抑制できるのではないかと思います。

 同時に、採用面接時においては、あれこれと質問攻めにするケースがありますが、本質的なことを聞かないこともあり、後から「そんなこと聞いていない」ということでトラブルになることもあります。例えば、業務の一環で送迎業務をやってもらいたいと考えていたものの、実はてんかんの持病を有していたといったようなことが一例として考えられますが、面接時に「当法人では、業務の一環で車による送迎業務を行ってもらうことがありますが、運転業務に支障が生じるような申告しておくべきことはございますか」と予め聞くだけトラブルは抑制できます。もちろん、持病は有するものの毎日欠かすことなくしっかりと薬を飲んでいるということであれば、不採用にする理由にはなりませんし、何らかの申告が予めあれば施設側も何らかの配慮を予めできるものと思います。

 そして、採用決定によって勤務開始となりますが、多くの施設では、試用期間という制度が定めているものの雇用契約書に「試用期間有(3ヵ月)」といったような記載しかないことが多く、上手くそれを活用されていない傾向があります。実際に働き始めてから何か問題行動が見られれば、試用期間だからということで辞めてもらう前提で考えることがありますが、試用期間という制度があるのであれば、試用期間専用の雇用契約書を定め、本採用になるための条件等を具体的に記載しておくことでトラブルのリスクは軽減できます。

 以上のような管理の在り方を見直すだけでも採用後のトラブルは最小限に抑制できるものと思われますので、一連の管理は再考してもよいでしょう。そうした見直しが結果として、働き始める職員にとっても認識ズレ等が生じることなく安心して働いてもらうこともできるのではないかと思います。

服部 英治氏

社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー

株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士

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