【名南経営の人事労務コラム】第24回 業績悪化時の対応と労務管理注意点

2023.06.22

 2年に1度の診療報酬改定及び3年に1度の介護報酬改定は、厚生労働省の中長期的な政策に基づいて設計されており、政策誘導のためにこれまで加算の対象となっていた取組みが改定によって梯子を外されてしまった、ということは多くの医療機関(福祉施設)が過去に幾度となく経験をしているものと思います。

 そのため、従来のやり方に固執をしていると同じ事を取り組んでいても収入が減っていくことが多く、常に新たな取組みを採り入れていかなければ必然的に売り上げ減となります。

 また、昨今は人材確保難から求人関連に要する費用が高騰すると同時に、一般企業に合わせて初任給を引き上げざるを得ないケースが増えていますので、人件費総額が従来よりも増加傾向にあります。地域内においても同様の施設が増え続けていることによってサービス利用者の奪い合いも日常茶飯事となり、施設間の競争も激化するようになってきていますので、業績悪化というキーワードは、経営者を悩ます大きな問題ではないかと思います。

 さて、こうした業績悪化時には、賃金の引下げや雇用調整を考えるケースが少なくありませんが、対応方法や進め方には十分に注意をして進めなければなりません。職員に対しての毎月の基本給を一斉に引き下げるという方法が人件費抑制にあたっては極めて効果的な方法ではありますが、職員の生活を脅かすことにもなりますので、まずは毎月の給与支給で調整するよりも、業績連動要素として取扱われる賞与で支給調整をするという方法を検討する必要があります。これまで基本給の年間4ヵ月分としていた賞与を年間3ヵ月分にする、といったようにです。ただし、無制限に賞与支給調整が可能になるかといえばそうでもないケースもあり、賃金規程において「賞与は毎年6月及び12月に賞与算定基礎額の4ヵ月分を支給する」といったような記載があれば、賃金規程の記載をマイナス改定するといった労働条件の不利益な変更を行うことになりますので、十分な説明を行い同意を得るというプロセスは必ず経なければなりません。

 その前段階では、活用されていない無駄な資産があれば売却をしたり、高コストとなっていたものを抑制すべく、委託の在り方を見直したり、必要がない電気は付けないようにしたりといった運用面のコスト削減は当然取り組む必要があり、職員の雇用や賃金は後回しに考える必要があります。

 更には賃金の引下げ等においては、職員の同意が得られればトラブルになる可能性は大幅に減りますが、医療人材・福祉人材は世間一般的において引く手数多でもあることから、処遇の引下げによって職員が一気に複数流出してしまうことがあり、人材不足に更に拍車が掛かることによって事業運営が成り立たなくなる可能性もありますので注意をしなければなりません。  

 仮に、押し切るように職員から処遇引下げについての同意を得たとしても、職員にとっては本意ではなく十分に説明もないまま署名を求められたといったことに起因するトラブルも多く、外部の労働組合に駆け込まれて困ったということもありますので、雇用や賃金に手をつけて業績悪化対応を乗り切るという方法は最後に手をつける部分、と考えることが無難といっても過言ではないでしょう。いずれにせよ、業績悪化時にはトラブル発生確率が高まりますので、顧問弁護士や顧問社労士に随時相談をしながら進めるとよいでしょう。

服部 英治氏

社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー

株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士

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