【医療業界動向コラム】第14回 第8次医療計画に向けた議論の今と今後を確認する

2022.10.11

令和6年度は、診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス報酬の同時改定であるとともに、医療計画・介護保険事業計画・医療費適正化計画の新たな始まりでもある。地域医療構想における必要病床数を達成すること、そして、勤務医の働き方改革が始まる年でもある。 令和4年9月30日、令和6年度の地域医療構想を含む医療計画・介護保険事業計画に関する進捗状況が「第17回医療介護総合確保促進会議」にて報告された。

改めて、令和6年度の大改革に向けた今後のタイムライン、そして現状の課題について確認しておきたい。

地域医療構想を含む医療計画については、まず年内に国が方針の取りまとめを行い、年が明けてから告示、各自治体で策定作業が始まる(図1)。

今回の医療計画では、以下が注目されるところ。特に、病院薬剤師については関係団体からの採用・定着に向けた支援の要請が伝えられるところ。また、外来医療計画についても改めて注目が集まる。本年度末には、外来機能報告制度の結果を受け、紹介受診重点医療機関が明らかにされる。一方で、まだ議論は本格化していないがかかりつけ医機能の認定制度についても検討されており、入院だけではなく、外来機能分化が本格的に進められていくこととなる。

  • 外来医療計画と外来機能報告
  • 薬剤師(病院・薬局)の地域偏在解消
  • 特定看護師の配置などの新たな目標設定
  • パンデミック発生時の対応を意識した事業
  • 循環器病対策推進基本計画を踏まえた心血管疾患対策
第8次医療計画に向けた取り組み 第8次医療計画等に関する検討会資料(一部改)
図1:第8次医療計画に向けた取り組み(全体イメージ)

先に紹介した「病床機能再編支援補助金」の交付状況について資料が公表されているので確認してみよう。改めて「病床機能再編支援補助金」について確認すると、地域医療構想を実現することを目的とした病床削減のための補助金であり、単独で減少する場合、経営統合で減少する場合の2パターンがある(図2)。

2021年度の実績では、3,475床の減少となっているが、そのうち705床は本補助金の支給対象外である回復期への転換と介護医療院への転換となり、実際の補助金支給による減少数は2,770床となったことが分かっている(図3)。

病床機能再編支援事業の説明資料
図2:病床機能再編支援事業
(参考)令和3年度地域医療構想の達成に向けた病床の機能又は病床数の変更に関する事業の交付実績
図3:令和3年度地域医療構想の達成に向けた病床の機能又は病床数の変更に関する事業(区分I-2)の交付実績

こうした病床機能再編において注目されるのが、200-300床規模の病院の動向だ。一般病床200床を境に急性期入院医療や専門医療の機能が期待される病院を目指すか、それとも地域住民に接近した日常診療を中心とするかかりつけ医機能の病院を目指すか、判断が分かれるところ。「第17回医療介護総合確保促進会議」と同日、「令和3(2021)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」が公表されている。その中で、病院の病床規模の変更状況について報告されている(図4)。多くの病院でダウンサイジングが進んでおり、200~299床での変化が大きいことが確認できる。

病院の病床の規模の変更状況
図4:病院の病床の規模の変更状況

地域包括ケア病床の診療報酬の施設基準などを見ればわかるが、200床未満の場合は、在支病や二次救急の対応、敷地内の訪問看護機能が求められている。これからの200床未満の急性期においては、地域住民にとって身近な入院医療を提供できる機能が必須となっていることから、在宅医療への対応などを考えていくことが求められる。多くの地域で人口減少が進むと共に、地域における医療機関の役割分担も進む。そうした中で、自院がどういった選択をしていくべきか、そして医療従事者として、地域の実状を踏まえて必要なスキルとは何かを考え、令和6年度から始まる新しい医療計画・介護保険事業計画に対応していかなければならない。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

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