【医療業界動向コラム】第13回 どうなる?かかりつけ医機能の認定制度 地域包括ケア病棟を有する病院としても注目を

2022.10.04

かかりつけ医の認定制度がはじまるらしいぞ、とにわかに騒がれるようになってきている。結論から言えば、誤った情報があることを先に指摘しておく必要がある。

まず、かかりつけ医、ではなく、かかりつけ医機能である。かかりつけ医、とは医師個人を指すものといえ、かかりつけ医機能とは、かかりつけ医の機能を有する医療機関を指すもの。そして、認定制度が始まぞ、というのもまだ正式に決まったものではなく、これから議論が本格化するもの。
ところで、ここで気になるのがそもそも「かかりつけ」とはどういうものなのか、ということだ。

かかりつけ医機能の認定制度については、令和3年12月に公表された改革工程表2021の中でも取り上げられ、診療報酬改定への影響が注目された(図1)。

図1:主要分野ごとの取り組み

実際には、診療報酬上におけるかかりつけ医機能を評価する「地域包括診療料」「地域包括診療加算」が見直され、慢性腎不全と慢性心不全が対象疾患に加わるなどし、またもう一つのかかりつけ医機能を評価する「機能強化加算」についても見直され、在宅医療に関する実績等が求められるようになったところ(図2)。

図2:診療報酬から読み解く外来医療の機能分化

そして、令和4年6月に閣議決定され、公表された「経済財政運営と改革の基本方針2022(通称:骨太方針2022)」において、医療提供体制の見直しの一環でかかりつけ医機能に関する認定制度を検討することが記載されたことを契機に、一気に議論が前に進みだした。具体的には、「第8次医療計画等に関する検討会」において、本年末までに制度の枠組みを決めることを目標に、そして「社会保障審議会医療部会」においても議論が始まっている。令和5年度中に具体化し、令和6年度からの第8次医療計画のスタートに間に合わせたいところだろう。

現時点(令和4年9月30日)で審議会等から得られた情報を基にすると、以下の項目を満たすことが国が考えるかかりつけ医機能を満たすことになるのではないかと思われる。

  • 24時間対応ができる(単独でなくてもかまない。輪番制による地域でのチーム医療でもよい)
  • 在宅医療に関する実績があること
  • 必要に応じた専門医への速やかな紹介

かかりつけ医機能を有する、と認定を受けた医療機関の中から当該地域の住民は自身のかかりつけ医機能を有する医療機関を選ぶ、というものがイメージされており、特段の理由がなく、自身が選んだかかりつけ医機能を有する医療機関以外を受診した場合は、別途自己負担が発生することなども検討されることとなりそうだ。

また、かかりつけ、という言葉からは開業医が連想されるところだが、地域包括診療料の要件などからもわかるように、一般病床200床未満の病院もかかりつけ医機能の担い手として期待されている。地域包括ケア病棟を有する200床未満の病院においては、外来においてかかりつけ医機能である地域包括診療料の届出をすることは大きな価値があると考える。ご存じの通り、地域包括ケア病棟入院料については令和4年度診療報酬改定より大きな見直しがあり、在宅や施設等からの直接の受け入れや、自院内ではなく他院からの受け入れを積極化していくことが必要になった。特に、退院後も患者との関係を継続していくために、病院がそのままかかりつけ医機能を発揮することで将来のレスパイト入院や教育入院などの可能性が残り、また救急搬送による受け入れといった対応も行いやすくなると思われる。また、都心部など地域によってはあえてかかりつけ医機能は有さず、近隣の診療所のバックアップに回るということも選択肢になる。ほかにも、今回の診療報酬改定では外来における在宅移行に関する新たな加算や、かかりつけ医機能を有する医療機関との連携など、病院として地域と密着することに対するインセンティブが発生する項目が複数誕生している(図3)点に改めて注目しておきたい。

連携を志向していく上でのポイントとなる項目の確認
図3:連携を志向していく上でのポイントとなる項目の確認

令和4年度も半分を過ぎようとしているが、これからかかりつけ医機能を含む外来医療の機能分化の議論が本格化していく。特に地域包括ケア病棟を有する病院にとっては、患者が退院した後も緩やかな関係を維持継続できる取り組みを行うことを通じて、地域における自院の役割を明確にしていきたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

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