【医療業界動向コラム】第8回 オンライン資格確認の導入状況と今後の利用拡大を確認する

2022.08.30

令和4年8月19日、社会保障審議会医療保険部会が開催され、オンライン資格確認に関する取組の現状、そして今後について話し合われた。

オンライン資格確認については、令和4年度中にほぼすべての医療機関に導入することを目標に取組まれてきたところ。目標達成のためには9月末日までに50%の施設での導入を目標としてきた。しかしながら、現時点での導入状況は26.8%という状況で厳しい状況となっている(図1)。

医療機関・薬局におけるオンライン資格確認の導入状況
図1:医療機関・薬局におけるオンライン資格確認の導入状況

また、本年10月の診療報酬改定では、新たなオンライン資格確認推進のための診療報酬項目の見直し及び療担規則の見直しで令和5年4月からの原則義務化が答申された。それに伴い、導入にあたっての補助が拡充されたところ。なお、令和5年1月からはじまる電子処方箋では、オンライン資格確認の環境整備されていることが必須となる。

普及促進を後押しするため、都道府県単位でのオンライン資格確認の普及に向けた連携会議を設置することも今回明らかにされた(図2)。「連帯」とあるのは、地方厚生局・支払基金支部・国保連による連帯を意味する。担当者を設置して医療機関・薬局への働きかけを強化することとなる。また保険者協議会にて推進に向けた議論も積極的に行っていく。骨太方針2022では、リフィル処方箋や地域フォーミュラリへの保険者の積極的な関わりや被保険者への周知を期待し、インセンティブを検討しているなど、保険者による患者への情報発信機能に期待が寄せられていることが分かる。今後の地域医療連携において、患者への広報・周知の面で保険者の関わりが重要なキーポイントになるだろう。

各地域におけるオンライン資格確認の推進体制について
図2:各地域におけるオンライン資格確認の推進体制について

また、オンライン資格確認の今後について、令和6年度4月より訪問診療・訪問看護等でも利用開始できるように令和4年度中に開発に着手することが明らかになっている(図3)。初回訪問時にモバイル端末を医療従事者が持参し、確認するということになる見通しだ。なお2回目以降については、モバイル端末の持参はせず、医療機関にて保険者資格が有効かどうかの確認をするというものをイメージしている。

オンライン資格確認の用途拡大について
図3:オンライン資格確認の用途拡大について

オンライン資格確認については、患者の費用負担等ばかりクローズアップされて、ややネガティブに思われてしまっている。健診・服薬情報をリアルタイムに入手し、診療に活かせることの他にも、例えば、高額療養費における限度額適用認定証の交付を受ける必要がなくなったり、マイナ保険証でなくともマイナンバーカードを難病医療費助成の申請時に利用することで一部の添付書類を省略できるなど効率化の面で時間と経費の負担を軽減できる。また、オンラインで情報を照会、入手できるため、転勤や旅行など多い方、または災害地でかかりつけ医療機関が被災した場合の診療の継続などで有効に活用できるというメリットがある。
このように患者にとってのメリットや医療機関の働き方推進には効果があることは確か。システムの運用のソーシャルコストとして理解を得られるように、まずは地域住民の理解を得られるような取り組みを、医療機関・薬局から始めていくことを意識したい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

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