【医療業界動向コラム】第1回 介護医療院、2021年12月~2022年3月の間に15施設増加 2024年に期日を迎える介護療養型医療施設、経過措置型療養病棟の対応は?

2022.07.05

3か月ごとに公表される介護医療院の施設数及びベッド数について、2022年3月時点の状況が公表された。前回が2021年12月時点だったが、そこから15施設の増加。診療報酬改定の対応などもあって、動きが取りづらかったのかもしれない。令和3年度介護報酬改定で移行定着支援加算が廃止されたことも影響していることだろう(図1)。

介護医療院の施設数
図1

介護医療院は、介護保険施設である。2024年までは介護療養型医療施設は存続、さらに医療保険適用の療養病棟入院基本料の中で要件を満たしていない経過措置型療養病棟も同じく2024年までは存続することから、これらの病床の有力な転換先となっている。

介護医療院におけるサービス提供実態等に関する調査研究事業
図2

さらに、介護医療院に移行すると仮定した場合の課題では、介護療養型医療施設(N=132)では「移行するにあたり工事が必要である」が40.9%で最多であった。また、現状維持を希望する件数が91.2%となっていた医療療養病床(N=352)では、「施設経営の見通しが立たない」が31.5%、「地域で医療機関としての機能を残すことにニーズがある」が30.4%の順となっていた(図3)。

介護医療院におけるサービス提供実態等に関する調査研究事業
図3

介護医療院は、介護保険施設である。2024年までは介護療養型医療施設は存続、さらに医療保険適用の療養病棟入院基本料の中で要件を満たしていない経過措置型療養病棟も同じく2024年までは存続することから、これらの病床の有力な転換先となっている。

都心部など一部の地域では、すでに要介護認定を受ける高齢者数が当面のピークに達しているところもあり、地域の実情、人口の変化も考えながら慎重な対応が必要となる。また、近隣の医療機関の環境変化に合わせることも重要だ。一昨年前になるが、とある県において、大規模急性期病院の移転に伴い、その周辺にある医療機関が急性期機能の縮小や介護医療院への転換を意思決定したということもあった。患者だけがお客さんではなく、急性期病院もお客さんを紹介してくれるお客さん、という考え方に立ったものだともいえる。

厳格な施設基準、そして基準病床制度、さらに地域医療構想と、医療機関の機能については後戻りするのがむずかしい時代で、療養病床、特に経過措置型と介護養病床には意思決定の期日が迫っている。
一方で、医療保険適用の療養病床も、従来以上に医療依存度の高い患者を受け入れる取組や看護師の負担軽減のためにも患者の自立支援に向けた体制作り、急性期病院以外からの受け入れルートの確保としての地域包括ケア病床の一部導入なども考えていくことも必要となる。しかし、地域包括ケア病棟も令和4年度診療報酬改定の影響で、在宅や施設からの受入れ割合の基準や在宅復帰率の見直し、病床数によっては入退院支援加算の届出などがなければ大きく減額されることとなる。また、比較的医療依存度の高い患者の受入れとなっていくことから、医療事故対策や、退院調整の取組の強化が求められることとなることに注意が必要だ。

2024年に期日を迎える介護療養型医療施設、経過措置型療養病棟だが、この2024年は診療報酬と介護報酬の同時改定でもあり、地域医療構想の当面のゴールを迎える年でもあることを踏まえて、地域の中の自院の役割について改めて向き合い、地域医療構想等協議の場で期待されていることの確認をして、次なる一手を考えていきたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

連載記事に関連するコラム

資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら
検討に役立つ資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら