【名南経営の人事労務コラム】第2回 職場のセクシュアル・ハラスメント

2022.07.21

昭和の時代には多くの職場で見られたセクシュアル・ハラスメント。平成を超えて令和の時代には、かつてほどその光景は目にしませんが、依然として無くならない問題です。  

セクシュアル・ハラスメントは、通常、セクハラと称されて会話の中においてもしばしば使用されますが(以下「セクハラ」と略します。)、その定義は、男女雇用機会均等法第11条において「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と定めており、同法においては、事業主に対してその対策を講じることまで求められています。  

この定義そのものはややわかり難いのですが、性的な言動により就業環境が害されること、という点がそれを端的に示しており、加害者ではなく被害者の視点で捉えることが重要です。

職場のセクシャルハラスメント対策は事業主の義務です!
出典/厚生労働省

このようなセクハラは、環境型と対価型に大別され、環境型は、上司が部下の身体に触ったり、性的な噂を流されて職場に行き難くなったりといったような就業環境上のハラスメントをいい、対価型は、デートの誘いを断ったら有期雇用契約の更新をされなかったとか、セクハラ行為に抗議をしたら配置転換されたといったような職務上の地位や立場を利用した行為をいい、いずれも看過できない行為であることは言うまでもありません。

注意をしなければならないのは、捉え方の違いであり、冗談で話をしたことが相手に対して相当なストレスを与えたりすることがあり、男性が職場の女性に対して「おばちゃん」「○○(名前)ちゃん」と呼ぶような行為はその典型です。こうした発言は、多くの職場で依然として散見されますが、仮に当事者同士がよいと考えていても、周りの職員がそれを不快と感じれば、セクハラの定義にある職場環境を害するということになるわけです。

また、職場の上下関係を考えると、部下である女性が上司の男性との会話に合わせざるを得ないことは多くの職場で日常的にあり、会話を合わせてくれたことを嫌がってないと誤認識することで言動がエスカレートしてしまうことがあるため注意が必要です。

セクハラで有名な労働裁判例であるL館事件(最高裁・平成27年2月26日判決)でも男性マネージャーが女性の派遣社員に日常的に会話をしていた内容自体が就業環境を害されたと認定され、加害者側である男性マネージャーは相手が話に合わせてくれていたことに、相手が嫌々話を合わせていたとは気付かなかったようで、エスカレートした言動がセクハラ認定されました。

最近は、職員間においてもSNSによるやり取りが一般的となっており、直接的な性的な言動は減少傾向であるもののSNSのやり取りの中で性的な言動がエスカレートすることが増えている印象があります。特に医療機関や福祉施設の場合には、勤務シフトの変更等において職員間のSNSのやり取りが一般企業に比して多く、また女性職員の割合も比較的多いことから、こうした問題に発展しやすくなっていますが、職場内のセクハラが事件として表面化する時点では、記録はすべてSNS内に残されておりますので、言い逃れもできずに懲戒処分の検討材料とされることが増えています。そもそも、こうした言動は相手への敬意がないことに根本的な原因があり、業務の中において、患者や利用者に敬意を持って接するようにと指導を受けている職員が同じ職場で働く職員にはそれがないというのは、おかしな話ではないでしょうか。

服部 英治氏

社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー

株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士

連載記事に関連するコラム

資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら
検討に役立つ資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら