ケアカンファレンスとは?目的や進め方記録方法を解説

2023.12.06

ケアカンファレンスの場では、多くの貴重な意見が交わされます。
しかし、もし参加者が新人介護スタッフの場合、そのすべてを記録に残すことは一筋縄ではいきません。

議論をどう効率的に記録すれば良いのか、書き漏らしの不安を抱える方も少なくないでしょう。
また、正確な記録の自信がなく、後で確認するたびに不安になることもあるでしょう。

本記事では、このような課題を持つ方に、ケアカンファレンスの目的や進め方、そして効率的な記録方法を解説します。

ケアカンファレンスとは?

ケアカンファレンスとは、利用者にとって最適なケアプランの策定やサービスの質の向上を目的とした、医療や介護の現場で行われる会議のことです。
この会議では、介護士、看護師、その他の医療関係者が一堂に会し、利用者のケアに関する情報共有、認識のすり合わせ、問題点の特定と改善策の検討を行います。

また、ケアカンファレンスは経験の浅いスタッフにとっては、知識やスキルを磨く貴重な学習の場です。
この会議は、施設ごとに開催頻度や形式が異なり、週に一度行う施設もあれば、月に一度の施設もあります。

ケアカンファレンスの主な議題には、以下のテーマが含まれます。

  • 利用者の生活上の問題や悩みに対する改善策の提案
  • 利用者と家族の意見が異なる場合のケア方法の検討
  • 新人スタッフや異動してきたばかりの職員への介護知識の提供

また、ケアカンファレンスは「サービス担当者会議」と異なります。
これは厚生労働省令によって開催が義務付けられているもので、ケアマネジャーを中心に、ケアプランの作成や要介護認定を判断するためのものです。

一方、ケアカンファレンスは施設ごとに自発的に行われ、介護職員や看護師などが参加し、より良い介護サービスの提供を目的としています。
このように、ケアカンファレンスは介護現場において非常に重要な役割を果たしており、利用者のケアの質を高めるために不可欠な会議です。

ケアカンファレンスの実施目的

ケアカンファレンスの実施目的は、本来、職種間の協力を促進し、利用者にとっての最適なケアプランの策定にあります。
このプロセスは、単なる情報共有の場を超え、各専門職が持つ知識と経験を結集することで、ケアの質を根本から高める機会を提供します。

しかし、実際には、職種が異なる者同士の集まりだからこその難しさもあるのではないでしょうか
ここでは、他職種との意見交換の重要性、ケアサービスの品質向上のための具体的な手法、そして介護スタッフの育成に焦点を当て、それぞれの段階での目的と成果について解説します。

他職種との意見交換

ケアカンファレンスの主要な目的の一つに、他職種との意見交換があります。
これは介護の質を向上させるために不可欠な要素です。

異なる専門分野からのスタッフが集まり、それぞれの視点から意見や情報を共有することで、利用者にとって最適なケアプランを策定することが可能です。
例えば、看護師は医療的な観点から、介護士は日常生活のサポートから、ケアマネジャーはサービス調整の観点から、それぞれの専門知識を活かした提案を行います。

また、職種間のコミュニケーションを通じて、スタッフ間の理解が深まり、チームワークが強化され、結果として介護現場でのサービス品質向上に寄与します。
さらに、他職種との意見交換は、新たなアイデアや解決策を生み出す機会です。

異なるバックグラウンドを持つスタッフが集まることで、一つの問題に対して多様な視点からアプローチすることができ、より創造的で効果的なケアプランの策定につながります。
このように、他職種との意見交換は、ケアカンファレンスの実施目的を達成し、介護サービスの質を高める上で、非常に有益です。

ケアサービスの品質を向上

ケアカンファレンスは介護サービスの品質向上を目的としても実施されます。
これは、利用者の状態を詳細に把握し、個別のニーズに合わせたケアプランを策定することにより、サービスの質を高めるためです。

さらに、異なる専門分野のスタッフが集まることで、新たな視点やアイデアが生まれ、ケアサービスの向上に貢献します。
また、ケアカンファレンスは、実際のケーススタディを通じてスタッフの問題解決能力やコミュニケーションスキルを高める絶好の機会です。

スタッフ一人ひとりの能力が向上し、組織全体の成長とより良いケアサービスの提供につながるでしょう。
ケアカンファレンスは、介護サービスの品質を向上させるために重要な役割を果たしますが、利用者の状態把握から職種間の意見交換、スタッフの育成に至るまで、その目的は多岐にわたります。

介護スタッフの育成

ケアカンファレンスは、介護スタッフの育成を目的の一つとして開催されます。
この会議に参加することで、スタッフは他職種の専門家との協力を通じて、多様な視点からの意見交換を経験できます。

例えば、医師や看護師、リハビリテーション専門家との対話は、介護スタッフに新たな知識をもたらし、既存のスキルを磨く機会です。
実際のケーススタディを共有することで、理論だけでなく実践的な問題解決能力の向上も期待できます。

また、ケアカンファレンスはチームワークを強化し、職場内のコミュニケーションの質を高める重要な場です。
介護スタッフが自身の経験や考えを共有し、他者からのフィードバックを受けることで、自己成長の機会が生まれます。

他者からの意見は自己成長の機会です。
より質の高いケアを提供するための動機づけとしましょう。

ケアカンファレンスの進め方

ケアカンファレンスは、チーム全体で利用者のケアプランを最適化するための重要なプロセスです。
このカンファレンスを通じて、介護スタッフは利用者一人ひとりのニーズに合わせたケアを提供するための計画を練ります。

しかし、そのためには、ケアカンファレンスの進行方法を理解した上での適切な実施が不可欠です。
進め方は大きく分けて以下のとおりです。

  1. 適切な資料の準備
  2. 建設的な議論
  3. 振り返りと改善点の実施

適切な資料の準備から始まり、全員が参加する建設的な議論、そしてカンファレンス後の振り返りと改善点の実施に至るまで、各ステップは利用者の生活の質を高めるために欠かせない要素です。
ここでは、ケアカンファレンスを効果的な進め方の具体的な手順を解説します。

1.主催者が資料を用意

ケアカンファレンスの成功は、適切な資料の準備にかかっていると言っても過言ではありません。
主催者が、参加者全員が理解しやすいように、患者や利用者の基本情報、健康状態、ケアプラン、そして介護の目標を明確に示した資料を用意しなければ、具体性のない会議になってしまいます。

例えば、利用者の日常生活の詳細や、過去の介護記録、医療情報、そして家族の意見など、多角的な情報の網羅が重要です。
これにより、ケアチームは利用者に最適なケアを提供するための共通の理解を築くことができます。

また、資料は、利用者の活動量を示す歩数や睡眠時間のデータをグラフで示すなど、具体的な数字やデータを用いて、客観的かつ詳細に作成してください。
加えて、ケアの進捗を示すために、前回のカンファレンスからの変化を数値で表すことも有効です。
資料を充実させることが、ケアカンファレンスを主催する第一歩です。

2.議題について話し合い

ケアカンファレンスでの話し合いで大切なのは、参加者全員が意見を共有し、理解を深めることです。
話し合いの際には、まず議題の重要性を明確にし、それぞれの意見が尊重されるよう心がけましょう。
また、具体的な事例を交えながら、話を進めるとより理解が深まります。

効果的な議論を行うためには、時間配分にも注意が必要で、各議題に十分な時間を割り当て、焦らずに話し合いを進めることが重要です
また、参加者が多い場合は、発言時間を設けるなどして、全員が平等に意見を述べられる環境を整えるように配慮することも大切です。

さらに、話し合いの中で新たな問題点や改善案が出てくることもあるので、これらを記録し、次回のフォローアップにつなげることも、効果的なカンファレンスを実現するために不可欠な要素です。
以上を踏まえ、参加者一人ひとりが積極的に関わり、建設的な議論が行われるように努めてください。

3.振り返りと変更内容の反映

ケアカンファレンスを終えた後の振り返りは、単なる事実確認ではありません。
ケアカンファレンスで議論された内容や提案された改善策を、どのように具体的な行動に落とし込むか検討しましょう。

まず、ケアカンファレンスで記録された、特定された課題、提案された解決策、それに対する合意内容など、参加者全員が共有します。

次に、それらの解決策を実行に移すためのアクションプランを作成します。
このプランには、誰が何を、いつまでに行うのかという明確な責任分担が記されている必要があります。

そして、実行段階に入ると、計画されたアクションが適切に進行しているかを確認し、必要に応じて微調整を行うため、定期的なフォローアップが不可欠です。
このようなプロセスを通じて、ケアカンファレンスが単なる会議ではなく、実際のケアにおける改善と成長への道筋を示すものとなるように努めましょう。

ケアカンファレンスの記録・議事録の書き方

ケアカンファレンスの記録や議事録は、介護の現場でのコミュニケーションと質の向上に不可欠なツールです。
適切な記録方法を身に着けてケアカンファレンスに参加するなら、記録や議事録が、ただの形式的な文書ではなく、実際のケアの質を高めるための強力なツールへと変わるでしょう。

ここでは、カンファレンスのための具体的な記録方法について解説します。

5W1Hを明確にする

ケアカンファレンスの記録や議事録を作成する際、5W1H(Who、What、When、Where、Why、How)を明確にしましょう。
情報を体系的に整理し、現場での活用を促進することができます。

例えば、Whoでは、参加者全員の名前と役割を記載し、Whatでは、議論された内容や決定事項を具体的に述べます。
WhenとWhereは、会議がいつ、どこで行われたかを明記し、Whyでは、その会議を開催する目的や背景を説明します。

最後にHowで、決定された内容がどのように実行されるかのプロセスを詳細に記します。
この方法に沿って記録を行うと、情報が明確かつ網羅的に記録されるため、後日の振り返りや新たなスタッフの情報共有を容易にします。

このように、ケアカンファレンスの記録は事実の羅列ではなく、記録を基にした分析や改善策の検討に直結するように、5W1Hを明確にして残すようにしましょう。

内容を簡潔にまとめる

ケアカンファレンスの記録や議事録を簡潔にまとめることは、現場での情報共有を迅速かつ効果的に行うために不可欠です。
議事録には参加者の意見や決定事項を要約し、具体的な行動計画に落とし込むことが求められます。

内容を簡潔にまとめることで、チームメンバーは次のアクションに移るための情報の素早い取得が可能です。
また、簡潔な記録は、後日の振り返りや評価においても、重要なポイントを素早く把握するための基盤です。

さらに、不要な詳細を省くことで、文書のボリュームを減らし、読み手の負担を軽減します。
ケアカンファレンスの参加の際には、記録の要点を押さえ、情報を整理し、チームにとって本当に必要な情報だけを記載するよう心がけましょう。

構成・テンプレートを活用

ケアカンファレンスや議事録の作成は、介護現場において欠かせない業務の一つです。
記録を残すことは、チームでの情報共有やサービスの質の向上、そして法的な証明としても重要な役割を果たします。

しかし、多忙を極める介護の現場では、議事録作成に多くの時間を割くことは難しいのが現実です。
そこで役立つのが、既存の構成やテンプレートです。

テンプレートの使用は、議事録作成の効率を大幅に向上させます。
例えば、ExcelやWordで作成されたテンプレートは、必要な項目があらかじめ設定されており、記入者は内容を埋めるだけで済みます。

これにより、記録漏れのリスクを減らしつつ、要点を簡潔にまとめることが可能です。
また、テンプレートは再利用が可能であり、一度作成すれば、次回以降の議事録作成時にも同じフォーマットを用いることができます。

介護現場では、日々の業務に追われる中で議事録作成が後回しにされがちですが、より負担を軽減し、ケアの提供に集中するためにもテンプレートをご活用ください。

Microsoft テンプレート一覧

ケアカンファレンスに参加する際のポイント

ケアカンファレンスを有意義なものするためにはいくつかのポイントがありますが、日々の業務が多忙な中、何をどのように収集し、選別するかは容易ではありません。
そこで、ここでは、ケアカンファレンスでの効果的な情報収集の方法、他利用者情報の有効な活用法、そして積極的な意見交換の重要性について、具体的なポイントを解説します。

日頃から情報を収集しておく

ケアカンファレンスに参加する際には、日頃から関連する情報を収集しておくことが重要です。
これにより、ケアカンファレンスでの議論に積極的に参加できます。

特に経験の浅い新人スタッフにとって、発言や記録に自信を持つために日々の情報収集は不可欠です。
例えば、最新の介護技術や政策の変更点、業界のトレンドなど、関連する情報を常にアップデートしておくことで、自分の意見に説得力を持たせることができます。

また、実際にケアに関わる中で気づいた点や改善提案など、具体的な例を交えて話すことで、他の参加者との意見交換がより活発になります。
さらに、事前に情報を整理しておくことで、カンファレンス中に生じる疑問や問題点に対しても、迅速かつ的確な対応が可能にします。

ケアカンファレンスを実り多きものにするためにも、自分なりの視点を持ち、日頃から学び続けるように心がけましょう。

担当利用者以外の情報もメモする

ケアカンファレンスに参加する際は、自分が担当する利用者だけでなく、他の利用者の情報にも注意を払い、積極的にメモを取りましょう。
これにより、ケアの質を高めるための多角的な視点を持つことができ、利用者一人ひとりに最適なケアプランを提案するための重要な情報を得ることができます。

例えば、他の利用者がどのような支援を受けているか、どのような問題に直面しているかを知ることで、自分の担当する利用者に対しても、より効果的なアプローチを考えるきっかけになります。

また、異なる背景を持つ利用者たちからの情報は、思わぬ発見や新たな介護のアイデアをもたらすことがあります。
ケアカンファレンスでは、他のスタッフとの情報共有も大切ですが、それぞれの利用者に関する情報を広く集めることで、より包括的なケアの提供を可能にします。

ケアカンファレンスにおいては、情報を収集する範囲を広げ、アンテナを高く保つことを心がけてください

積極的に意見する

ケアカンファレンスにおいて、ただ聞くだけではなく積極的に意見を述べることは、自身の知見を深めるだけでなく、他の参加者の理解を助け、より実りある会議にするために不可欠です。
日頃から心がけているケアの工夫や取り組んでいる課題の共有は、職種間の連携を促し、利用者にとって最適なケアプランの策定につながります。

例えば、他職種のスタッフが提案するケア方法に対して、自分の経験から得た知識をもとに具体的な改善案を提案することで、ケアの質を向上させることができます。
また、他のスタッフの意見から新たな視点を得ることもできるでしょう。

このような交流は、チーム全体のケアに対する理解を深め、利用者一人ひとりに対するサポートをより充実させることにつながります。
ケアカンファレンスで意見を交換する際には、相手の立場や専門性を尊重する姿勢を忘れずに、互いの知識を尊重し合い、より建設的な議論を進めていきましょう。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

介護現場の管理職の方からよくご相談いただくのが、「会議の場が雑談になってしまい、何も決まらないことが多い。。」というものです。このような会議が続いてしまうと、会議の価値が下がってしまい、スタッフの会議参加率も低下してしまいます。介護スキルとファシリテーションスキルはもちろん別物です。しっかりファシリテーションスキルを身につけないとなかなか質の高い会議とすることは難しいでしょう。しかし、なかなか忙しくこうしたスキルを身につける時間がないという現状でもあります。会議のポイントは「話し合う内容とそれに費やす時間、そして会議のゴールを予め決めておく」ことです。これらを網羅したレジメを事前に用意し、議事録は音声入力などICTを駆使して簡略化していきましょう。会議の内容が大幅に変わってくるはずです。

カンファレンスの記録・文書作成にはICTの活用がおすすめ

カンファレンスの効率化はケアマネジメントにおいて重要な課題です。
ワイズマンソリューションのICT活用は、この課題を解決し、記録や文書作成の時間の大幅な短縮を可能にします。

一例として、会議の内容をリアルタイムでデジタル化し、必要な文書にダイレクトな反映は、後工程の手間の削減です。
また、データの一元管理によって情報の不一致を防ぎ、ケアカンファレンス参加者の情報共有を助けます。

さらに、ICTの活用は利用者ごとの詳細な情報管理を可能にし、個別のニーズに合わせたケアプランの策定とケアスタッフ間での情報共有もスムーズにするため、チーム全体の連携も強化します。
ケア現場での文書作成の負担を軽減し、より質の高いサービス提供を目指すなら、ワイズマンソリューションのICTをご検討ください。

まとめ

本記事では、ケアカンファレンスの目的や進め方、効率的な記録方法について詳しく解説してきました。
ケアカンファレンスは、他職種が集まり、高齢者や障害者の支援について意見交換を行う大切な場です。

特に新人介護スタッフにとって、そのすべてを記録に残すことは難しい課題ですが、ポイントをおさえることでケアカンファレンスの経験を最大限活かすことができるようになります。
この記事が、ケアカンファレンスの記録に関する一助となれば幸いです。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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