医療介護連携システムの機能やメリット|比較すべきポイントまで解説

2023.10.03

医療と介護両面からのサポートには、多くの人手と手間がかかり、双方の連携も欠かせません。
しかし、人材不足や過疎地域での医療体制の縮小など、高齢者ケアを取り巻く環境には多くの課題もあります。

これらの課題を解決する方法として、「医療介護連携システム」が注目されています。
医療介護連携システムでは、業務の効率化や地域医療・介護サービスの品質向上が可能です。

本記事では「医療介護連携システム」の機能や導入のメリット、システムの比較ポイントについて解説します。
現状、患者や利用者のケアや他業種間での連携に課題を感じているなら、本記事を参考に医療介護連携システムの導入を検討してみてはいかがでしょか。

医療介護連携システムとは

医療介護連携システムとは、医療機関・介護施設等が抱える患者や施設利用者の情報を統合し、相互に共有できるシステムです。
本システムの利用対象には、訪問介護や診療所、薬局なども含まれます

これまで分断されていた医療機関・介護施設等のデータを連携することで、より柔軟なサービス提供につながります。
例えば、介護施設が普段から利用者の容体や健康状況を医師と共有していれば、適切なアドバイスを受け容体が悪化する前に対応できるかもしれません。

医療機関・介護施設等がスムーズに情報をやりとりすることで、地域ケアサービス全体の品質向上が可能です。
本章では、医療介護連携システムが注目される理由と搭載機能を紹介します。

医療介護連携システムが必要とされている背景

高齢化社会により、ケアを必要とする人が増えているなか、自宅での療養を希望する人も増えています。
こうした背景から、「地域包括ケアシステム」の構築が2025年をめどに立てられてきました

しかし、地域包括ケアシステムの構築には以下のような問題点があります。

  • 高齢化社会により、ケアを必要とする人が増加している一方、人材の確保が厳しい
  • 高齢者のケアには医療と介護の両面からのサポートが必要であり、ニーズは多様である

こうした問題をクリアし、よりスムーズに地域包括ケアシステムを運用していく方法として、医療介護連携システムが注目されています。

また、コロナ禍において、在宅医療の希望が増えたことも、医療介護連携システムの必要性を高めました

ある調査では、「新型コロナウイルス感染症や大規模災害によって、ICT化された多職種連携ネットワークの重要性が増たか?」を尋ねた結果、約9割の自治体が「重要性が増している」と回答しています。
医療機関・介護施設等の連携は、パンデミックや大規模災害への対応策としても注目されています。

参照:デジタル行政

医療介護連携システムの機能

医療介護連携システムは、主に以下の機能を搭載しています。

連絡機能(掲示板・申し送り)スタッフ間で連絡事項を共有できる機能。
データ共有電子カルテ情報を閲覧できたり、介護利用実績や予定を多職種間で共有できたりする。
スケジュール管理訪問予定、通所サービスの利用予定などを管理できる。利用状況に合わせてスタッフの勤務予定や事業所全体の会議予定などの管理も可能。
実績・利用状況の登録介護サービスの実績登録や各種サービスの利用状況を記録する。
服薬管理服薬情報の管理や記録ができる。

医療介護連携システムは患者(利用者)のサポートに必要なスタッフ同士の連携を可能にします。
患者本人が把握しきれない診療内容や必要なサポートも、スタッフ同士で正確な情報を共有できます。

医療介護連携システムのメリット

医療介護連携システムの必要性は理解しているものの、具体的な導入メリットを描けていない方も多いでしょう。
代表的な導入メリットは、以下の4つが挙げられます。

  • 業務の効率化
  • ヒューマンエラーの防止
  • 適切な治療・サポートに活用
  • 地域医療の向上

それぞれのメリットを詳しく知ることで、現状の業務フローのなかでどう活用できるのか、より具体的にイメージできるようになります
メリットについて詳しく見てみましょう。

業務の効率化

これまでは多職種間での連携に書類を作成し、ファックスや郵送、メールで送るというフローになっていました。
必要に応じて電話での問い合わせもあるなど、情報共有のため作業が生じています。

特に、ケアマネージャーをはじめとする介護職員にとっては医療側との連携が常に課題となってきました。
例えば、「多忙な医師への連絡はタイミングを見計らってしまう」、「なかなか連絡がつきにくく業務が止まりやすい」などの悩みを抱える事例も少なくありません。

医療介護連携システムを導入すると、患者や利用者の最新情報が常にアップデートされ、リアルタイムで把握できます。
電話連絡やメール、郵送などの手間も必要なくなるうえに、情報提供のための書類をわざわざ作成する必要もありません。

患者情報の共有だけでなく、スタッフ間での連絡事項や申し送りも、システムの連絡機能を使うことでスムーズに進みます。

ヒューマンエラーの防止

一度入力した情報がシステム上のデータ全てに反映されるため、人手で転記する必要がありません。
これにより、転記漏れや転記ミスなどヒューマンエラーの発生を回避できます。

また、手書きの記録では個人の書き方の癖などによる誤読のリスクもありました。
システムでは、フォーマットにテキストを入力する形式なため、誤読のリスクも減らせます

適切な治療・サポートに活用

常に患者の最新の情報がアップデートされ、システムによっては動画や写真による記録も可能なため、正確な情報が共有できます。
看護・介護スタッフが異変に気づいた場合には、連絡機能を使って医師に相談もできるため、次回の診察を待たずとも対処できます。

また、診察時に患者自身や付き添いの家族、介護スタッフだけでは把握しきれていない体調の変化なども、介護・看護実績から確認が可能です。
より正確な情報に基づいて診察ができるので、医師にとっても大きなメリットと言えます

なお、医師からの最新の処置内容をタイムリーに知ることができるので、介護サポートのサービス向上にもつながります。
患者の特徴や過去の履歴も一元管理できるので、担当のスタッフに急な変更があっても同じサポートを提供できることも、システム利用のメリットです。

地域医療の向上

高齢者の多くは住み慣れた場所での療養を望む一方、地域での高齢者サポートには人手が不足しています。
特に、過疎地域では十分な医療機関がないことで自宅療養が難しかったり、高度な医療を受けにくかったりなどの問題も発生しています。

医療介護連携システムを活用することで、医師が遠方にいても正確な情報のもと診察を受け、指示を出してもらうことも可能です。

厚生労働省からは、地理的特徴にもとづき医療の拡充ができない地域での早めのシステム導入が推奨されています。
(参照:厚生労働省HP

医療介護連携システムのデメリット

メリットを見ると、ぜひ取り入れたい医療介護連携システムですが、デメリットもあります。

主なデメリットは以下の3つがあげられます。

  • 導入コストがかかる
  • 運用までに時間と労力がかかる
  • 個人情報漏洩のリスクがある

デメリットをあらかじめ把握し、対策を考えておくことで対処しやすくなるでしょう。

導入コストがかかる

医療と介護の2職種、必要に応じて薬局や自治体など広い範囲で導入するとなると、費用も高額になります。
システムに対応した電子端末も必要になるため、それらの購入費用も考えなければなりません。

さらに、システムの導入後に研修が必要であったり、アフターサービスに別料金がかかったりすることもあります。

長期的に見れば、ペーパーレスのために経費削減にはつながります。
しかし、一時的に大きな費用がかかってしまうことは大きなデメリットとしてあげられます

導入コストについてはシステムを比較する際に、よくよく検討しておくと良いでしょう。

コストには、導入時にかかる「イニシャルコスト」と、導入後にかかる「ランニングコスト」があります。
ついイニシャルコストに目が行きがちですが、教育コストや月額料金・オプション料金などランニングコストにも注視し適切な製品を選定してください。

運用までに時間がかかる

医療介護連携システムを導入したらすぐに翌日から運用開始となるわけではありません。
システムの使用方法を習得し、システムを運用していくルールもマニュアル化させなければいけません。

システム導入によってこれまでの業務フローが大きく変わる場合には、業務フローの見直しも必要になるでしょう。
導入に際しては、管理者側で協議することが多いですが、運用していくうえでは現場のスタッフから現状の業務フローを確認し、反映させる必要があります

通常業務と並行しながらこれらを進めるため、現場スタッフにシステム導入の必要性を共有することが大切です。

個人情報漏洩のリスクがある

電子端末で個人情報がすぐに確認できることは便利である一方で、個人情報漏洩のリスクも高くなります

端末の画面をつけたままで放置してしまう、端末を置き忘れてしまうなど職員のミスによって情報漏洩することは避けたい事態です。
研修段階で画面オフの徹底を習得すること、端末の紛失時の対応(遠隔操作による画面ロックやデータ消去など)をあらかじめ確認しておきましょう。

運用時のマニュアル作りの時点で、これらの項目を盛り込み、あらかじめスタッフに周知させておくことも大切です。

医療介護連携システムを運用するまでの流れ

参考までに、医療介護連携システムの導入から運用までの流れを見てみましょう。

①医療介護連携システム導入の目的の明確化

医療介護連携システムの導入目的を明確化することで、どのような機能が必要か、または不必要か見えてきます。
目的については、できるだけ明確に、どのような機能があれば目的達成できるのか、といったことを挙げておきます。

例えば、医療機関・介護施設のほかに、薬局や診療所とも連携したい場合は、これに対応した機能を明確にする形です。

②導入システムの決定

導入システムを比較する時には、

  • 費用:予算内におさまるか
  • 操作性:現場のスタッフにとって使い勝手がいいか
  • 機能:①で挙げた目的を達成できる機能がそろっているか

この3つをメインに比較します。
検討する際には、どのポイントを優先するのかをあらかじめ決めておくとスムーズに選定できます。

③導入スケジュール案作成

導入スケジュールはシステム会社より提示されてきます。
それに従い、また事業所や自治体の都合をすり合わせてシステム会社とスケジュールを調整していきましょう。

④運用ルール・マニュアルの作成

運用ルールはスケジュール作成と同時進行で進めていきます。

どのようなルールを決めておくべきか、システム会社に相談しつつ現状の業務フローと照らし合わせて作成していきましょう。
運用ルールの作成時に現場のスタッフからの意見を取り入れることで、現場業務とのミスマッチを防止できます。

⑤試験導入

本格導入の前にトライアル期間を設けることがほとんどです。
試験期間で気づいた点があれば、システム会社にフィードバックして、本格運用の前に改善できるか確認しましょう。

また、作成したマニュアルが実際の運用に即しているかも確認しておきます。
今後、新しい人材が入った時に、マニュアルが運用と合っていれば、引継ぎなどがスムーズに行えます。

⑥実施

本格稼働となります。
稼働後にはシステム会社によって、アフターフォローの有無が異なります。

運用後のトラブル時の連絡先や対処法などを事前に確認しておきましょう。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

ケアの質、利用者の生活の質を向上させることを目的に、厚労省主導のもと医療・介護間の円滑な情報共有の仕組みづくりが推し進められています。やりとりも増えているなかで、医療・介護両関係者共に円滑な情報共有は悩みの種なのではないでしょうか。 こうした悩みを解消してくれるのが、医療介護情報連携システムです。
「在宅復帰」「重度者対応」の2点は、今後国が推し進めていく医療・介護の重要なテーマです。端的に言えば、看取りの場を病院から介護施設へ本気でシフトさせようとしています。こういった流れを鑑みても円滑な情報共有が今後さらに求められていくことは明確です。
業態毎に温度差はあるでしょうが、既に連携をしている事業所に関しては、こうしたシステムの活用を真剣に検討する必要があるといえるでしょう。

ワイズマンの医療・介護連携システム「MeLL+(メルタス)」とは?

ワイズマンの「MeLL+(メルタス)」は、地域の医療と介護を連携させるサポートシステムです。

  • 地域の医療と介護の連携体制を構築するうえで出てくる課題をどう対処すればいいのか分からない。
  • システムを導入することでどんな課題が解決できるのかがいまいち理解できない。
  • 医療と介護の連携を強化し、自治体の医療体制を強くしたい。

こういった悩みを持つ自治体は多くあります。
医療介護連携システムを導入しても、自治体の体制や希望、現状課題に合っていないと、うまく機能せず、課題解決どころか、スタッフの負担を増やしてしまいかねません。

ワイズマンでは、医療・介護施設への導入実績を多数持ち、地域の医療介護連駅の立ち上げから運用までをサポートが可能です。

参加事業所を追加できる

「MeLL+(メルタス)」は、地域の医療介護連携を統括するMeLL+communityに参加する事業所の数に関わらず、料金が一定です。
参加する事務所が増えた場合も、参加する事業所内での職員数が増えた場合にも、料金が追加されることはありません。

新たに連携を図る時にも、スムーズな情報共有が可能です。

掲示板・回覧板機能で未読・既読チェックが可能

施設・事業所内でのお知らせを掲示板・回覧板機能を使って連絡できます。
掲示板・回覧板機能には未読・既読のチェックもできるので、伝達漏れも防げます。

会議室機能で意見交換が可能

多職種のスタッフから意見を求めたいとなった場合に、スケジュールを調整してわざわざ会議を開くとなると労力がかかります。

MeLL+の「会議室」機能では、相談ごと(テーマ)に関係するメンバーを招待し、システム上で「部屋」を作ることができます。
時間や場所を問わず、空いた時間に意見・情報交換ができるので、会議をスケジューリングしたり、時間を固定したりする必要もありません。

まとめ

本記事では、将来の地域包括ケアシステムの構築に欠かせない「医療介護連携システム」の機能や導入メリットについて解説してきました。

医療、介護どちらにもICT化は進んできていますが、今後は双方向での連携がより良いケアや住みやすい地域づくりにつながります

また、今後ますます深刻化するであろう人材不足にも、システムの活用は有効です。
これまで介護職や訪問看護サービスでは、業務量が多く、一人ひとりへの負担が大きくなってしまっていました。

システムを導入することで、業務負担の軽減や、訪問先の患者の異変を医師にすぐ相談できるなどのメリットが期待できます。

現状で人手が足りていても、今後より働きやすい環境に改善していくには早めの対処がおすすめです。

医療介護連携システムの導入で、今後の自治体の医療体制の強化や、住民へのより良いサービス提供、安心して過ごせる地域づくりを目指してはいかがでしょうか。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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