看護現場における睡眠のアセスメント|分析の方法やポイントを解説
2024.12.19

看護現場において、患者の状態を適切に把握するうえでも、アセスメントは不可欠な取り組みです。
健康状態・食事・歩行状態など、アセスメントはさまざまな観点で実施する必要があります。
特に、睡眠は患者の健康状態や回復状況を左右する重要な要素です。
患者によっては睡眠が適切に取れないために、体力が低下したり、持病が悪化したりするリスクが高まります。
本記事では、看護現場における睡眠のアセスメントについて解説します。
患者の睡眠を分析する方法や、アセスメントのポイントについても説明するので、ぜひ参考にしてください。
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目次
看護現場におけるアセスメントとは

看護現場におけるアセスメントは、看護過程のプロセスの一種です。
看護アセスメントは食事・睡眠・排泄など、さまざまな観点で患者の状態を分析・評価する業務です。
多角的な視点で患者の状態を分析することにより、健康上の問題や疾病の兆候などを正確に把握できます。
看護現場における睡眠の重要性
「よく眠れない」「目が覚めてしまう」といった睡眠障害は、入院病棟でよく聞かれる訴えであり、看護師が日常的に対応すべき体調不良の一種です。
睡眠障害は疲労感や判断能力の低下を招くだけでなく、免疫系や心疾患系・脳血管疾患などの原因になるなど、体調に悪影響を及ぼします。
もちろん、睡眠障害は患者が抱える疾病の回復を遅らせるうえに、体調をより悪化させるリスクがあります。
患者の健康を守るためにも、睡眠のアセスメントは徹底的に行いましょう。
睡眠障害が起こる5つの原因

患者に睡眠障害が起こる原因には以下の5つが挙げられます。
- 精神的な要因
- 身体的な要因
- 環境的・習慣的な要因
- 年齢的な要因
- 疾病や治療などの影響
原因の種類を把握すれば、アセスメントがスムーズにできます。
それぞれの原因について順番に説明するので、参考にしてください。
精神的な要因
不安やストレスなど、精神的な要因で睡眠障害が起きるケースは珍しくありません。
特に入院経験がなかったり、検査結果を待っている患者だったりすると、不安を抱えやすいものです。
もちろん、抑うつ症や統合失調症などのような精神疾患が睡眠障害の要因になることもあります。
認知症が睡眠障害を誘発している場合もあるため、要因を判断する際には注意しましょう。
身体的な要因
持病による体調の悪化など、身体的な要因も無視できません。
持病が原因で生じる発熱・痛み・咳などは、悪化すると正常な睡眠を妨げます。
また、患者に装着している治療器具が睡眠障害を招いているケースもあります。
点滴や呼吸器などを患者に装着させる際は、睡眠の妨げにならないように注意が必要です。
環境的・習慣的な要因
入院による環境や習慣の変化も、睡眠障害を引き起こす要因です。
同室者の存在や、慣れない寝具があるだけでも、眠りにくくなると感じる患者は少なくありません。
当然、室温や日光の入り方なども患者の睡眠に影響を与えます。
加えて、入院中の生活習慣や生活リズムの変化によって、眠りにくくなる患者もいます。
特に、病院は22時就寝・6時起床のような規則正しいスケジュールが一般的です。
日常生活と違うスケジュールに慣れていない患者の場合、生活リズムが合わないために満足な睡眠ができなくなる恐れがあります。
年齢的な要因
高齢の患者の場合、年齢的な要因にも注意が必要です。
睡眠の質は年齢によっても左右されるものであり、特に高齢者は睡眠の質が低下しやすくなります。
高齢になると寝つきにくくなるうえに、眠りが浅いため、中途覚醒や早朝覚醒などのような睡眠障害が発生しやすくなる傾向があります。
疾病や治療などの影響
疾病や治療の影響によって睡眠障害が起こるケースにも注意しましょう。
無呼吸症候群や周期性四肢運動障害など、睡眠障害を発生させる疾病は珍しくありません。
認知症も昼夜逆転現象を起こす要因になります。
また、患者が服用している薬剤や摂取した飲料も睡眠障害を誘発するケースにも注意しましょう。
ステロイドや抗がん剤などの薬剤は副作用として睡眠障害を引き起こすリスクがあります。
加えて、コーヒーや緑茶などの飲料に含まれるカフェインは覚醒効果や利尿作用があるため、17時以降は提供を控えましょう。
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睡眠のアセスメントを行う方法

睡眠のアセスメントを行う方法は以下のとおりです。
- 患者の睡眠の状況を確認する
- 患者にヒアリングを行う
- 原因を分析し看護介入を行う
睡眠のアセスメントの基本となるので、あらかじめ確認しましょう。
患者の睡眠の状況を確認する
まずは患者の睡眠の状況をチェックしましょう。
患者の主観的な訴えに耳を傾けつつ、患者の睡眠の傾向をチェックすることで、睡眠障害の種類や原因を探ります。
先述したように、睡眠障害の要因にはさまざまなものがあります。
適切な対策を講じるためにも、患者の状況は具体的に確認しましょう。
患者にヒアリングを行う
睡眠の状況を確認する際は、患者へのヒアリングは欠かせません。
全体の睡眠時間・眠りについた時間・目を覚ました回数などをヒアリングし、患者の睡眠状況を客観的に評価します。
ヒアリングの際は、セントマリー病院睡眠質問票や、ピッツバーグ睡眠質問票のようなアセスメント用のツールを活用しましょう。
前者は患者の24時間以内の睡眠のアセスメント、後者は1カ月以内の睡眠のアセスメントに役立ちます。
原因を分析し看護介入を行う
ヒアリングが完了したら、原因を分析し、適切な看護介入を行いましょう。
精神的な要因や環境的・習慣的な要因だった場合、患者が不安に感じている要素や病室の環境を改善するだけでも睡眠障害が緩和される可能性があります。
ただし、身体的な要因・疾病や治療などの影響が原因の際は、医師や薬剤師などのような他職種との連携が不可欠です。
アセスメント結果を共有し、有効的な対応を検討しましょう。
患者の睡眠を改善する4つの方法

患者の睡眠を改善するなら、以下のような方法が効果的です。
- 睡眠衛生指導を行う
- 室内環境を改善する
- 生活習慣を工夫する
- 就寝儀式を行う
ささいな取り組みでも、患者の睡眠障害を改善するきっかけになる可能性があります。
アセスメントで得た情報を基に、適切な対策を講じましょう。
睡眠衛生指導を行う
患者の睡眠障害を改善するなら、まずは睡眠衛生指導を実施しましょう。
睡眠衛生指導は、厚生労働省が提示している「睡眠障害対処12の指針」を参考にして実施してください。
睡眠障害対処12の指針とは、厚生労働省の研究班が発表した、睡眠障害を防止するうえで必要な取り組みを記載したものです。
睡眠障害対処12の指針の内容は以下のとおりです。
- 良い睡眠で、からだもこころも健康に。
- 適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
- 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
- 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
- 年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
- 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
- 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
- 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
- 熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
- 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
- いつもと違う睡眠には、要注意。
- 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。
患者の状況に合わせて、上記の指針を踏まえた睡眠衛生指導を行いましょう。
なお、睡眠衛生指導は看護師による一方的な指導ではなく、患者とともに改善策を検討するスタンスで臨みましょう。
一緒に睡眠障害と向き合い、改善を試みることで、患者の意向を踏まえた対応ができるようになります。
室内環境を改善する
環境的な要因で睡眠障害が発生しているなら、室内環境の改善が不可欠です。
睡眠の質は光・音・温度によって左右されます。
そのため、病室の環境を細かくチェックし、睡眠の妨げになる要素は改善しましょう。
例えば日没の際に必ずカーテンを閉めて高照度の光を防いだり、廊下で業務をする際の音に注意したりするだけでも、睡眠障害の改善につながります。
加えて、空調の温度を確認し、快適に眠れる室温を保つことも重要です。
医療機関によっては方角などの影響で、病室によって環境にバラつきが生じるケースは珍しくありません。
画一的な対応はせず、患者が利用している病室の状況に合わせて対応を適宜調整することを意識しましょう。
生活習慣を工夫する
生活習慣の工夫も、睡眠障害を改善するうえで効果的です。
例えば、高齢者は睡眠時間が短くなる一方で、ベッド上で過ごす時間が長くなる傾向があります。
しかし、ベットで過ごす時間が長くなると中途覚醒が起きやすくなるため、結果的に睡眠障害を誘発するリスクが高まります。
この場合は、睡眠制限療法を取り入れ、ベッドで過ごす時間と睡眠時間のギャップを減らすような方法が効果的です。
また、就寝時にアロマオイルのようなリラックス効果のあるものを利用する方法もおすすめです。
就寝儀式を行う
就寝前に特定のルーティンを実施する就寝儀式も積極的に実施しましょう。
就寝前に読書をしたり、リラクゼーションをしたりするなど、患者がリラックスできる習慣を取り入れると眠りにつきやすくなる可能性があります。
眠りが浅い患者のために、就寝前に落ち着いた雰囲気のラウンジで過ごす習慣を作る方法も有効的です。
さらに、患者が就寝時に必要なアイテムを前もって確認しておくと、より効果が期待できます。
患者によっては、就寝時に抱き枕や特定のBGMなどがあると寝つきやすくなる場合があります。
特に小児は就寝時におしゃぶりやタオルなどが必要になる場合があるので、前もって家族に用意してもらいましょう。

睡眠には、日中活動し続けてへとへとになった脳や体を休養させて疲労を回復する働きがあります。また、睡眠中は傷ついた細胞を修復したり、病原体を退治する免疫物質をつくったりと、体のメンテナンスも行われています。 日中に見たことや学習したことを脳に定着させ、整理するのも睡眠の効果です(全国健康保険協会資料より抜粋)。メジャーリーガーの大谷翔平選手が睡眠を大事にしているという話もあり、睡眠の重要性は多く語られるようになりました。患者の睡眠に対するアプローチは非常に重要です。一方で、人は歳をとればとるほど睡眠時間は短くなり、80代だと5時間程度の睡眠時間の方も多いでしょう。消灯時間に合わせて就寝した場合、早朝に目が覚めてしまうことになります。早朝に起床してしまうことを問題視しない観点も重要です。
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看護現場において睡眠のアセスメントは重要

看護現場において、睡眠のアセスメントは睡眠障害を防ぎ、患者の体調を守るうえで重要な取り組みです。
患者の睡眠の状況を丁寧に観察し、ヒアリングを通じて有効的な対策を講じられるようにしましょう。
疾病や治療などの影響で睡眠障害が発生している際は、医師や薬剤師と共同で対策を検討しなければなりません。
しかし、精神的・環境的な要因などで睡眠障害が発生している場合は、看護師の対応次第で睡眠障害を改善できる可能性があります。
適切なアセスメントを行い、原因を分析したうえで、患者に合わせた対応を心がけましょう。

監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。