医療事務で電子カルテの導入が難しい理由とは?使い方や導入時のポイントも解説

2024.11.16

医療事務で電子カルテを導入すれば、業務を効率化し、ヒューマンエラーを防止できます。
しかし、「医療事務を効率化したいが、電子カルテの導入が難しい」と感じている事業所もあるのではないでしょうか。

医療事務に電子カルテを導入するべきか悩んでいる事業所は、導入が難しい理由とメリットの双方を確認して、利用するべきか検討しましょう。
本記事では、医療事務で電子カルテの導入が難しい理由を4つご紹介します。

電子カルテを導入するメリットや使用する際の注意点もあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

電子カルテと医療事務の関係性は

電子カルテは、医療事務における患者情報をデータで作成し、管理できるシステムです。
紙のカルテより、情報共有を円滑化でき、書類管理や検索の手間がかかりません。

医療事務に電子カルテを導入すれば、デジタルデータで患者情報を取り扱えるため、スムーズな情報共有と漏えいを防止する管理体制を実現できます。
また、タブレットやスマートフォンからアクセスできる電子カルテを導入すれば、訪問先や外出先など場所を問わずに、カルテの作成や確認ができます。

そのため、医療事務に電子カルテを導入すれば、業務効率化と従業員の負担軽減が期待できるのです。

電子カルテが必要となる医療事務の主な業務

電子カルテが必要となる医療事務の主な業務は、次のとおりです。

  • 受付
  • 会計
  • レセプト

医療事務には、さまざまな業務がありますが、中でも上記の業務で電子カルテが必要となります。
それぞれの業務をどのように効率化し、業務改善できるか確認しておきましょう。

受付

受付は、医療機関で患者と初めに接する大切な業務です。
病院やクリニックで患者をお迎えし、保険証や診察券を受け取って、カルテに患者情報を記入します。

電子カルテを導入すれば、受付での患者情報の入力と確認作業にかかる時間を短縮できます。
従業員の業務負担を軽減できるだけでなく、患者の待ち時間の短縮につながるため、顧客満足度を向上させられるのです。

また、患者情報や医療履歴などをデータベースで管理することで、ヒューマンエラーを防止できます。
さらに、受付で患者から質問を受けた際に、電子カルテの情報をもとに回答ができます。

会計

会計は、医師による診察や治療が終わった後に、診療費を計算して患者から受け取る業務です。
医師が記入したカルテやレセプトの情報を確認し、患者の医療保険情報から医療費を算出します。

紙のカルテで会計業務を行う場合、医療費を算出する際に時間がかかり、計算ミスのリスクも生じるのです。
電子カルテを導入すれば、診察情報の入力から医療費の算出まで自動化できます

医療費の計算と請求を同時に行えるため、患者の待ち時間を軽減することが可能です。
さらに、計算ミスのリスクを軽減できるため、ヒューマンエラーによる顧客満足度の低下を防げます。

レセプト

レセプトは、診療報酬明細書のことを指し、患者が支払った診察費の残りを、健康組合や自治体に請求する業務です。
保険適応される診療報酬を健康組合や自治体に請求し、医療機関の収入を増やす重大な役割があります。

レセプト業務は、医療機関の収益に直結する業務となるため、十分な知識と処理能力がなければ務まりません。
電子カルテを導入すれば、診療結果に基づき医療費を自動的に計算し、レセプト業務を効率化できます。

計算ミスを無くし、保険請求をスムーズに行えるため、従業員の負担軽減にもつながります。
また、過去の請求データをシステム上に残せるため、監査対応を効率化することが可能です。

医療事務にとって電子カルテを扱うのが難しいと感じる理由4選

電子カルテは、業務の効率化につながるツールとなるため、医療機関での導入が推奨されます。
しかし、事業所によっては医療事務で電子カルテを扱うのが難しいと感じるケースがあります

医療事務にとって電子カルテを扱うのが難しいと感じる理由は、次の4つです。

  • 紙カルテからの移行に抵抗を感じるから
  • 操作に慣れるまで時間がかかるから
  • トラブル時の対応が大変になるから
  • 診療報酬のセットコードを作る必要があるから

それぞれの理由を確認して、事業所が抱える課題を把握しましょう。

紙カルテからの移行に抵抗を感じるから

長い期間、紙カルテで医療事務の業務を行ってきた事業所では、電子カルテへの移行に抵抗を感じる可能性があります。
今まで紙カルテで行ってきた業務を、電子カルテへ移行して手順を変えることに、不安を感じる従業員もいます

新たに電子カルテの操作方法を覚え直し、従来の作業手順を見直す改変は、従業員にとって負担がかかるものです。
いきなり紙カルテを破棄し、電子カルテへ切り替えることは難しいため、併用しながらの移行作業が求められます。

紙カルテと電子カルテの併用で、従業員に負担がかかる可能性があるため、抵抗を感じてしまうのです。

操作に慣れるまで時間がかかるから

電子カルテを導入しても、操作方法を覚えて使いこなすには時間がかかります。
操作に慣れるまで時間がかかるので、電子カルテを扱うのが難しいと感じてしまうのです。

多忙な業務に追われる中、新しいシステムの操作やマニュアルを覚えるのに、抵抗を感じる可能性があります。
特にPCの操作に慣れていない方は、操作に慣れるまで時間がかかり、業務効率が低下するリスクがあります

トラブル時の対応が大変になるから

医療事務に電子カルテを導入し、トラブルが発生した際には対応が大変です
患者情報や過去の診察情報を確認できず、手作業でカルテを再度作成しなければなりません。

トラブルによって、電子カルテから紙のカルテへ作業を切り替えた場合は、急な対応で作業量が増加してしまいます
患者の待ち時間の増加につながるため、事前にトラブル時の対応方法をマニュアル化しておきましょう。

診療報酬のセットコードを作る必要があるから

電子カルテを導入するには、診療報酬のセットコードを作る必要があります
セットコードとは、診療報酬の計算を自動化し、レセプト業務や会計業務を効率化するコードです。

診療報酬のセットコードを作れば、業務効率を向上させ従業員の負担を軽減できます。
しかし、セットコードは医療行為ごとに異なり、それぞれ複雑なルールを理解し適用させなければなりません。

さらに診療報酬の計算基準は、保険制度の変更によって変わるものです。
診療報酬の計算は、事業所の収益につながる重要な業務であり、保険制度の変更に対応できる制度の高いセットコードを用意する必要があります。

医療事務に電子カルテを導入する4つのメリット

医療事務に電子カルテを導入する4つのメリットは、次のとおりです。

  • 業務を効率化できる
  • ヒューマンエラーを防止できる
  • カルテを管理する手間を減らせる
  • 情報共有を円滑化できる

電子カルテを扱うのに抵抗を感じている方もいるでしょうが、医療事務の負担を軽減し、業務効率を向上させるメリットがあります。
それぞれのメリットを確認して、電子カルテの導入を検討しましょう。

業務を効率化できる

医療事務に電子カルテを導入すれば、業務を効率化できます。
なぜなら、受付から会計、レセプト業務までデータを共有できるため、患者情報や診療情報を確認し、カルテに記載する手間を省けるからです。

また、電子カルテには診療情報提供書や診断書などのテンプレートがあるため、医療事務に慣れていない方でも簡単に必要書類を作成できます。

ヒューマンエラーを防止できる

紙のカルテから電子カルテへ切り替えれば、ヒューマンエラーを防止できるため安心です。
紙のカルテは、手書きで情報を記載するため、正しく文字を判別できなかったり、書き間違えたりするリスクがあります。

対して、電子カルテでは、手書きのような文字の判別しづらさが無くなり、入力ミスがあればシステムが検知してくれます。
そのため、判別ミスや転記ミスなどのヒューマンエラーを防止し、医療事務の精度を向上できます

カルテを管理する手間を減らせる

カルテを管理する手間を減らせることも、電子カルテを導入するメリットです。
紙のカルテは、保管スペースを確保する必要があり、必要なカルテを探す際にも手間がかかります。

対して、電子カルテはシステム上にデジタルデータでカルテを保管できるため、広いスペースを確保する必要がありません。
また、必要なカルテを探す際も、システム上で検索すれば、すぐに必要な書類が見つかります。

電子カルテを導入すれば、紙のカルテを保管していたスペースを空けて、別の用途に有効活用でき、書類探しの手間を軽減できます。

情報共有を円滑化できる

電子カルテを導入するメリットの1つが、情報共有を円滑化できることです。
電子カルテに入力した情報はリアルタイムで反映されるため、多職種間での情報共有を円滑化できます。

医師が診察や治療を終えた後、すぐに診察結果や治療データがシステムに反映されるため、会計業務をスピーディーに対応できます。
情報共有を円滑化することで、患者の待ち時間を減らせるので、顧客満足度を向上させることが可能です。

医療事務で電子カルテを使いこなすための3つのコツ

医療事務で電子カルテを使いこなすための3つのコツは、次のとおりです。

  • カルテの項目を覚えてもらう
  • 実践で操作に慣れてもらう
  • 診察内容を正確に反映してもらう

電子カルテの扱いが難しいと感じている事業所は、上記のコツを押さえておきましょう。

カルテの項目を覚えてもらう

電子カルテを使いこなすためには、まずカルテの項目を覚えてもらう必要があります
システムによってカルテの項目は異なりますが、主に次のような項目が設けられています。

  • 患者の個人情報(氏名、住所、保険証番号など)
  • 疾患名
  • 既往症、アレルギー情報、主要症状、経過など
  • 診療内容
  • 診療報酬

それぞれの項目を覚えて、カルテの書き方を覚えることが、電子カルテを使いこなすコツです。
電子カルテを導入する際は、研修会や説明会を開催して、カルテの項目と使い方を教育しましょう

実践で操作に慣れてもらう

座学や研修会で電子カルテの使い方を教えても、操作方法に慣れるまで時間がかかります。
電子カルテを使いこなすためには、実践で操作に慣れてもらう必要があります

業務の合間に電子カルテの操作練習を行ったり、実際の医療現場で先輩従業員が見守りながらカルテを操作させたり、実際にシステムを操作する機会を増やしましょう。
何度も電子カルテを操作するうちに、操作方法に慣れて使いこなせるようになります。

電子カルテを扱える人材を育成し、不明点や疑問点を相談できる体制を整えれば、操作に不慣れな従業員も安心してシステムを扱えます。

診察内容を正確に反映してもらう

医療事務が電子カルテを使いこなすためには、診察内容を正確に反映してもらうことが大切です。
具体的には、医師の診察内容を正確にカルテへ反映させる能力が求められます。

医師の意向を汲み取り、診察内容を正確に反映するため、次のポイントを押さえておきましょう。

  • 医師がどのような考えで診察したかを考える
  • どのような診察、治療を行ったか事実を記載する
  • 診察内容をカルテに記載した後、医師に確認してもらう
  • 医療用語や略語を理解するため、医療知識を身につける

医師の考えを理解して、診察内容を正確に反映させるには、正しい医療知識が必要不可欠です。
医療知識と技術は日々進化しているため、継続的に医療知識を学習する必要があります

医療事務で電子カルテを使用する際の注意点

医療事務で電子カルテを使用する際の注意点は、次のとおりです。

  • ランニングコストが発生する
  • セキュリティ対策が求められる
  • 最低限のPCスキルが求められる

それぞれの注意点を確認して、電子カルテを導入するべきか検討してください。

ランニングコストが発生する

医療事務に電子カルテを導入すると、ランニングコストが発生します。
初期コストとして、タブレットやPCなどのデバイス購入費がかかり、ランニングコストとしてシステムを保守、更新するための費用が必要です。

院内にサーバーを置く場合は、電気代や管理するための人件費、クラウド型のシステムでは通信費も発生します

セキュリティ対策が求められる

電子カルテは、クラウド上やシステム上に患者の個人情報を保管するため、セキュリティ対策が求められます。
セキュリティ対策を怠ると、膨大な量の患者情報が流出するリスクがあるため、情報漏えいやサイバー攻撃への対策が必要です。

定期的なセキュリティ対策を実施し、従業員一人ひとりがセキュリティ意識を高めて、情報漏えいを防止する必要があります。

最低限のPCスキルが求められる

電子カルテを扱うには、最低限のPCスキルが求められます。
テンプレート機能や操作マニュアルなど、導入後に電子カルテを扱えるようさまざまな機能が備わっていますが、最低限のPCスキルがなければ使いこなせません

普段からPCを触っておらず、苦手意識のある方は電子カルテを扱うことに抵抗を感じてしまうでしょう。
電子カルテの導入に伴い、従業員のPCスキルを確認し、研修を実施しましょう

医療事務に電子カルテを導入する際のポイント

医療事務に電子カルテを導入する際のポイントは、次のとおりです。

  • 病院の運用に適した種類を選ぶ
  • 必要な機能を明確化する

それぞれのポイントを確認して、事業所に適した電子カルテを導入しましょう。

病院の運用に適した種類を選ぶ

医療事務に電子カルテを導入する際は、病院の運用に適した種類を選びましょう
病院の規模や電子カルテを必要とする職種によって、適したシステムが異なります

例えば、多職種や関連施設と連携できるシステムを求めている場合、クラウド上でデータを共有できるものが適しています。
病院固有の仕様や要件に合わせてシステムをカスタマイズしたい場合は、自由に仕様や機能を変えられるものを選びましょう。

電子カルテを選ぶ際は、デモやトライアルを利用して、病院の運用に適しているか確認してから、導入を検討してください。

必要な機能を明確化する

電子カルテを導入する際は、必要な機能を明確化することが大切です。
「なぜ電子カルテを導入するのか」目的と現在の課題を明確化し、必要な機能を洗い出しましょう

例えば、電子カルテの操作に不安を感じている従業員がいる場合は、テンプレート機能が備わっているシステムや操作性が簡単なシステムが適しています。

他にも、既存システムと連携させたい場合は、電子カルテの連携性を確認しておくことが大切です。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

現在、小学校でもタブレットを使用した授業は当たり前のように実施されています。子供たちのこうしたIT機器リテラシーは必然的に向上しています。小学6年生の7割近くがスマホを所持しているというデータもあります。こうした世代にとって、タブレットやスマートフォンは子供のころより身近にあり、そういった機器のリテラシーは非常に高くなっています。一方、介護労働者の平均年齢は50.0歳(令和4年介護労働実態調査より)となっています。50代のスマートフォン利用率は96%と非常に高値であり、比例してリテラシーも高いように思えますが、多くの現場でスマホやタブレットの導入は苦戦しているのが現状です。ここには「慣れたやり方を変えたくない」という現場の心理が働いているということを認識・対策することがスタートなのです。

電子カルテを導入して医療事務を効率化しよう

電子カルテを導入すれば、医療事務の負担を軽減できます。
業務を効率化し、情報共有を円滑化できるため、患者の待ち時間を減らすことも可能です。

また、文字の判別ミスや転記ミスを減らせるため、ヒューマンエラーの防止につながります。
電子カルテを導入する際は、病院の運用に適したシステムを選ぶため、必要な機能を明確化しておくことが大切です。

操作方法に不安がある従業員のために、研修会や説明会を実施して、現場で実際に操作する機会を増やして、電子カルテを使いこなせるよう教育しましょう。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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