居宅介護支援事業所の収入とは?計算方法や収入を上げるためのポイントを解説

2024.03.07

ケアマネージャーとして介護業界でキャリアを積んできた方であれば、今後のキャリアアップや収入アップを目指しているのではないでしょうか。
居宅介護支援事業所を開業して独立するのも、その手段の1つです。

しかし、独立することでどれくらい収入を得られるのか、さらに収入を増やしていけるのか、といった疑問を持っている方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、居宅介護支援事業所の開業で得られる収入について解説します。

居宅介護支援事業所の開業を検討している方は、ぜひとも本記事を参考にしてください。

居宅介護支援事業所の概要

まずは居宅介護支援事業所がどのようなものか、簡単に触れておきたいと思います。

居宅介護支援とは、利用者が自宅において自立した生活を送れるよう、支援する仕事です。
ケアマネージャーが利用者の心身の状況や環境を把握し、サービス事業者などとの連絡や調整を行います。

居宅介護支援事業所では、主に以下のようなサービスを提供します。

  • 利用者の心身の状況や生活環境、希望、家族の状況などを把握しケアプランを作成
  • ケアプランにもとづいて、必要な介護サービスを受けられるようサービス事業者や関係機関との連絡や調整
  • 介護施設などの紹介やサービスを利用するための手続き

【参考例】ケアマネージャーの年収とは?

厚生労働省が公開した『令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果』によると、令和4年度の介護支援専門員(ケアマネージャー)の平均給与額は常勤で月額361,770円となっています。
年額だと約435万円で、賞与を含めて500万円前後といったところです。

前年度の平均給与額が348,030円のため、13,740円増加しています。

出典:『令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果』(厚生労働省)

居宅介護支援事業所の収入の計算方法

居宅介護支援事業所の収入にはどのようなものがあるのでしょうか。
本章では、居宅介護支援事業所の収入の種類と、それぞれの収入額の計算方法について解説します。

居宅介護支援費

居宅介護支援費は、ケアマネージャーが担当する利用者数と、利用者の要介護度によって変わります。

例えば、ケアマネージャーが1人で30件の居宅介護支援を行うとします。
30件のうち要介護1・2が25件、要介護3・4・5が5件の内訳とした場合、居宅介護支援費は次のとおりです。

  • 1,076単位 × 25件 × 介護報酬単価10円 = 269,000円
  • 1,398単位 ×  5件 × 介護報酬単価10円 =  69,900円

※2024年1月現在、居宅介護支援費の単位は要介護1・2が1,076単位、要介護3・4・5が1,398単位です。
 ただし、2022年4月に介護報酬が改定される予定で、改定後の単位は要介護1・2が1,086単位、要介護3・4・5が1,411単位になります。
※本記事では介護報酬単価を10円にしていますが、本来は地域やサービスによって異なるため、実際には10円+αになります。

各種加算

居宅介護支援業務には、各種加算の制度が定められています。
そのため、加算による報酬も居宅介護支援事業所の収入源の1つと考えて良いでしょう。

各種加算には特定事業所加算、初回加算、入院入所加算、退院退所加算などさまざまな種類があります。

特定事業所加算とは、ケアマネジメントなどの質の高い事業所への評価によって加算されるものです。
加算を取得するための算定要件によってⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Aに区分され、常勤ケアマネージャーの配置人数や計画的な研修の実施などの要件が定められています。

算定要件が比較的ゆるく、取得しやすい特定事業所加算(A)の計算方法は次のとおり。

  • 100単位 × 30件 × 介護報酬単価10円 = 30,000円

初回加算は、新規の利用者に対する居宅サービス計画等を評価する加算です。
300単位が加算されます。

入院時情報提供加算、退院退所加算は、入院や入所時、退院や退所時の病院や介護サービス事業所との情報連携などを評価する加算です。
それぞれの単位数は以下の通りです。

  • 入院入所加算:100〜200単位
  • 退院退所加算:450〜900単位  

要支援・要介護認定調査料

要支援認定調査や、要介護認定調査は地域包括支援センターで実施しますが、居宅介護支援事業所や独立したケアマネージャーに委託されるケースがあります。
地域包括支援センターからの委託で調査を実施した場合、1件あたりの委託料は3,000~4,000円程度です。

例えば、1件4,000円の調査依頼を1か月に10件実施した場合は、調査料として40,000円の収入になります。

居宅介護支援事業所を開業するメリットと注意点

居宅介護支援事業所の開業にはさまざまなメリットがありますが、注意が必要な点もあります。
本章では、居宅介護支援事業所を開業するメリットと注意点について解説します。

開業を検討する際には、これらの情報をぜひ事前に押さえておいてください。

居宅介護支援事業所を開業するメリット

居宅介護支援事業所を開業するメリットは主に3つあります。

  • 低コストで開業できる
  • 自身の都合に合わせて働きやすい
  • 自身のポリシーにもとづくケアマネジメントが実現できる

それぞれ簡単に解説します。

低コストで開業できる

居宅介護支援事業所は他の介護サービスと比較して低コストで開業できるのが特徴です。
なぜなら、建物や設備など他の介護サービスに必要となる高額な初期投資が必要ないためです。

例えば、自宅や賃貸アパートなどを事務所にして1人で独立すれば、最低限の初期投資で開業できるでしょう。

自身の都合に合わせて働きやすい

介護施設などで勤務する場合は自分自身で仕事を選べないため、依頼されればやりたくない仕事であっても受けるしかありません。
しかし、独立して居宅介護支援事業所を開業すれば、自分の裁量で仕事を選べるため、やりたくない仕事でストレスをためずに済むでしょう。

ただし、後述しますが、やりたい仕事を獲得するためにはうまく営業することも必要です。

自身のポリシーにもとづくケアマネジメントが実現できる

ケアマネジメントにおいて自身のポリシーを持っていても、介護施設などで勤務しているとやはり自分の考えどおりに仕事を進められないことがあるでしょう。
しかし、独立開業すれば自分の裁量で仕事を選べると同時に、ケアマネジメントにおける自身のポリシーにしたがって仕事を進められます。

居宅介護支援事業所を開業する上で注意すべき点

居宅介護支援事業所を開業する上で主に注意しておきたい点は下記の2つです。

  • 仕事を獲得するための営業をどうするか
  • 経営に必要な業務をいかに効率的にこなすか

こちらもそれぞれ簡単に見ていきましょう。

仕事を獲得するための営業をどうするか

独立開業するということは当然、自分自身の仕事は自分で確保しなければなりません。
つまり、営業や集客にもそれなりに時間と労力をかける必要があるため、本業以外の業務負担が増えます。

また、営業活動が苦手で思うように仕事を獲得できないと、収入が安定しなかったり、やりたくない仕事も受けたりということが考えられるでしょう。

経営に必要な業務をいかに効率的にこなすか

居宅介護支援事業所を開業すると、本業や営業以外にも経理などの事務作業や管理業務も必要になってくるため、仕事量が増えます。
したがって、経営に必要な業務を委託する、システムを導入するなどして、いかに効率的にこなすかを考えておく必要があるでしょう。

居宅介護支援事業所の独立手順

居宅介護支援事業所を立ち上げて独立するためには、さまざまな準備が必要です。
本章では、居宅介護支援事業所を開業するまでの手順を紹介します。

なお、詳しい解説は下記の記事もぜひ参考にしてください。

参考:『居宅介護支援事業所を立ち上げるには?条件や立ち上げまでの流れを解説』

法人格の取得

居宅介護支援事業所を運営するためには法人格が必要です。
法人格は、株式会社や合同会社などの営利法人、医療法人や社会福祉法人などの非営利法人、いずれの法人格でも運営できます。

ただし、申請する法人格によって取得できるまでの期間や必要な費用が変わるため、ご自身の条件に合った法人格を選びましょう。

事業計画の作成

事業計画では、事業方針や目標とする事業規模と収支、営業地域の範囲、利用者数の見込、競合事業者などを決めて事業計画書を作成します。
指定申請や、金融機関から融資を受ける際には、準備した事業計画書の提出が必要です。

開業資金の調達

居宅介護支援事業所を開業するために必要な資金としては、法人格の取得にかかる費用、事務所に使用する物件の取得にかかる費用、経営に必要な備品類の購入費用などがあります。
そのため、自己資金では開業資金が不足している場合は、自己資金に加えて金融機関からの調達が必要です。

開業に必要な資金はおよそ100万~300万円程度と言われています。
調達先の金融機関には、政府系金融機関である日本政策金融公庫がよく利用されています。

これは、日本政策金融公庫は、スタートアップへの支援にも力を入れており、民間の金融機関に比べて融資審査を通過しやすいと言われているためです。

また、助成金や補助金にもさまざまな種類があって、開業時の資金として利用できるものもあります。
地域操業起業補助金、IT導入補助金や、その他にも自治体が個別に実施しているものもあるため、申請できそうなものを調べておくと良いでしょう。

主任介護支援専門員の資格取得

居宅介護支援事業所を運営するためには、常勤の管理者として主任介護支援専門員(主任ケアマネージャー)が必要です。
ただし、事業所のスタッフに主任介護支援専門員の資格保持者がいれば、必ずしも事業主が資格を取得している必要はありません。

逆に、主任介護支援専門員の資格を取得していれば、資格取得者を雇用せずに1人でも独立できます。

必要な設備や備品などの整備

居宅介護支援事業所の設備基準には、具体的に「どのような備品が必要なのか?」は明記されていません
該当する条文は、以下の通りです。

指定訪問介護事業所には、事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の区画を設けるほか、指定訪問介護の提供に必要な設備及び備品等を備えなければならない。

引用:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準|e-GOV

ただ、一般的には以下の設備・備品が必要とされています。

  • プライバシーを保護する相談室
  • 電話
  • コピー機
  • 独立した洗面台
  • アルコール消毒液
  • 机・椅子
  • 鍵付きのキャビネット

詳しくは、開業を予定している都道府県の介護保険課にお問い合わせください。

指定申請

居宅介護支援事業所を開業するためには、介護保険法に基づく介護事業者としての指定を、都道府県や市町村などから受けなければなりません。
そのための手続きが指定申請です。

居宅介護支援の指定申請には、以下の書類が必要です。

  • 指定申請書(第一号様式)
  • 指定居宅介護支援事業者の指定に係る記載事項
  • 登記事項証明書
  • 従業者の勤務の体制及び勤務形態が分かる資料
  • 資格証の写し
  • 雇用契約書等及び就業規則
  • 事業所の平面図
  • 事業所の外観及び内部の様子がわかる写真
  • 設備・備品等一覧表
  • 運営規程 (厚生労働省令に定められた事項等)
  • 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
  • 事業計画書
  • 収支予算書
  • 資産状況を証明する書類
  • 事業を行う建物の賃貸借契約書
  • 損害保険証書 (損害賠償時の対応用)
  • 法第70条第2項各号、法第79条第2項各号、法第115条の2第2項各号に該当しないことを誓約する書面
  • 介護給付費算定に係る体制等の必要添付書類
  • 社会保険及び労働保険への加入状況にかかる確認票

居宅介護支援事業所の収入を増やすためのポイント

一定以上の利用者数を確保する

居宅介護支援事業所では、居宅介護支援費が主な収入になります。
そのため、収入を増やすにはまず一定以上の利用者数を確保することが重要です。

ケアマネージャー1人につき30~35件の利用者が確保できれば、居宅介護支援費の収入は32万~40万程度になるでしょう。これに、初回加算や入院入所加算などの各種加算の額を加えた結果が事業所の収益となります。

また、居宅介護支援費以外に要支援・要介護認定調査の業務を受託できれば、さらに収入を増やせるでしょう。
ただし、単純に仕事量が増えるため、収入が増える分だけ負担も大きくなります。

質の高い組織づくりで特定事業所加算を取得

ケアマネージャーが1人で独立した場合、受けられる仕事に限りがあるため収入を大きく増やすのは難しいでしょう。
しかし、常勤ケアマネージャーの人数を増やし、計画的な研修を実施するなどの取り組みで特定事業所加算の算定要件を満たせば、加算による収入増が見込めます。

算定要件によって加算される単位数に幅がありますが、利用者1件あたり300~500単位が加算されます。

ICTを活用した業務の効率化

ケアマネージャーの業務は、ケアプランの作成など書類作成が多い仕事です。
加えて、独立開業すると各種管理業務や経理業務などの事務作業も多くなります。

そのため、ICTを活用して業務を効率化することが重要と言えるでしょう。
業務の効率化によってコストが下がれば、居宅介護支援の件数を増やして収入アップにもつなげられます。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

居宅はケアマネであれば誰でも開業でき、そのハードルはとても低いものでした。実際にいわゆる「一人ケアマネ」で開業されている方も数多くいらっしゃいます。しかし、国はサービス付き高齢者向け住宅などに併設する居宅が、その施設入所者のケアプランを担当し、自社サービスへ誘導する“囲い込み”を問題視し、介護保険報酬改定の度に締め付けを強化してきました。結果「一人ケアマネ」の事業者もその煽りを受け、その数は年々減少しています。また、特定事業所加算の単価をどんどんアップさせており、居宅に算定を促しています。いずれは特定事業所加算算定事業所をスタンダードにしたい国の思惑が透けて見えています。実利用者数が40名以下の事業所の収支差率は-4.6%と厳しい数値となっています。加算算定と大規模化は必須であると考えましょう。

居宅介護支援事業所には在宅ケアマネジメント支援システムSPがおすすめ

ワイズマンでは、居宅介護支援事業所の各種業務の効率化をサポートする『在宅ケアマネジメント支援システムSP』を提供しています。
在宅ケアマネジメント支援システムSPを活用すれば、ケアマネジメント業務から給付管理などの請求業務まで効率化が可能です。

従来よりも短時間で事務作業を完了でき、より重要度の高い業務へ集中できるようになるでしょう。
また、人手の入力作業が減ることで、入力ミス・転記ミスを削減できます。

これにより、各種書類の信憑性向上へつながります。

その他製品も含め、対応機能や概要を製品カタログに記載しています。
興味がある方は、以下よりお気軽にご請求ください。

まとめ

日本国内ではまだまだ高齢化が進む局面にあり、高齢者人口は増加が続きます。
そのため、介護需要も引き続き増え続け、居宅介護支援事業所の利用者数も増加が見込まれるでしょう。

その点では、居宅支援事業所を開業して収入を増やすのは十分可能です。
しかし、開業・独立にはメリットと合わせて注意すべき点もあります。

したがって、開業をお考えの方はぜひとも本記事の内容を参考にし、メリットと注意すべき点も踏まえて検討していただければ幸いです。

なお、弊社では、居宅介護支援事業所向けの介護ソフトを提供しております。
事業所の立ち上げに際し、情報管理の電子化をお考えの方は、ぜひご検討ください。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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