【医療業界動向コラム】第193回 骨太の方針2026に向けた医療分野の議論を確認する
2026.06.25
例年通りであれば、経済財政政策の基本方針を示す骨太の方針は6月に閣議決定されるところだが、今回は7月以降になる見通しだ。給付付き税額控除や食料品の消費税率に関する議論を行う社会保障国民会議で夏前に中間とりまとめを行うこととなっていることが影響の一つだと考えられる。従来の骨太の方針は、歳出を社会保障の高齢化要因の範囲内に抑えることになっているなど、社会保障政策の動向は大きな影響を与えるものとなっており、医療分野に関する今後の政策を読み解くうえで骨太の方針に記載される内容は重要な意味を持つ。
遅れている骨太の方針2026だが、社会保障・医療分野に焦点に関する議論の現状について整理しておきたい。
持続可能な社会保障制度の構築に向けて
令和8年5月22日に第7回経済財政諮問会議にて、社会保障・医療分野に関する議論が行われている。そこでは厚生労働大臣より、持続可能な社会保障制度の構築に向けて、と題されたテーマと3つの取組方針が示されている(図1)。

図1 持続可能な社会保障制度の構築に向けて(内閣府 第7回経済財政諮問会議)(クリックして拡大表示)
まず1つ目は、社会保障の担い手確保について、人口減少に伴い、患者も減少するが、働き手も同じく減少していく中で新たな地域医療構想を着実に推進し、役割分担明確化・連携・再編・集約化を実施し、専門人材の適正配置を行うことで実状に合った担い手の確保を目指すとしている(図2)。

図2 2040年に向けた社会保障の担い手確保(内閣府 第7回経済財政諮問会議)(クリックして拡大表示)
物価高・賃上げへの対応として、令和9年度予算編成において加減算を含めた必要な対応を行う、と記載されていることに注目をしたい。令和8年度診療報酬改定では、物価対応料やベースアップ評価料の拡充が図られたものの、告示以降は戦争の影響もあり、せっかくの診療報酬での対応も帳消しになりかねない状況になっている。ただ、加算だけではなく、減算も行われる可能性があることを意識しておきたい。
2つ目は、攻めの予防医療だ。とりわけ脚光を浴びているのが、働く女性を主な対象に据えた女性の健康課題の解決だろう(図3)。

図3 攻めの予防医療等の推進(内閣府 第7回経済財政諮問会議)(クリックして拡大表示)
これからの高齢社会、労働力確保の観点からは、治療と就労の両立支援が重要になるとともに、健診の推進に向けて健康意識を高めるための取り組みが並んでいる。栄養・食生活の項目が横断的に扱われている点にも注目するとともに、診療報酬・介護報酬でもさらなる栄養食事指導に関する評価の拡充に期待が集まる。
3つ目は、社会保障改革の着実な実行だ。健康保険法改正に伴うOTC類似薬の保険適用除外など。また、連立政権合意書の検討も盛り込まれている(図4)。

図4 連立政権合意書(内閣府 第7回経済財政諮問会議)(クリックして拡大表示)
世代間格差を是正することを目的とした高齢者の医療費負担割合の見直し(段階的に3割負担へ)は大きく注目を集めている。なお、先述の健康保険法改正では、高齢者の金融所得を踏まえた保険料率の見直しについても盛り込まれている。早ければ、5年後にも保険料率の見直しがはじめられ、さらに高額療養費の見直しが今後も断続的にあると考えられるので、外来受診頻度は減少していくことが考えられる。給付と負担の改革努力で制度の持続可能性を進める、ということだ。
なお、連立政権合意書では、医療機関の収益構造の増強や営利事業の在り方についても明記されている。また、新たな地域医療構想を推進するための首長の権限強化や保険者機能の強化など、骨太の方針への提言となる財務省の春の建議と考えが近いものも目立つ。
骨太の方針2026は、積極財政をキーワードにこれまでと異なる考え方で構成されることになる。ただ、社会保障・医療分野については課題は大きく変わらず、社会保障費の抑制が図られると共に、世代間格差の是正策が盛り込まれ、結果としての高齢患者の受診抑制もしくは受診頻度の減少につながることになる可能性がある。そういった世の中になるだろうことを見据え、地域の中でどういった役割を発揮していくべきか、新たに何に取組むべきかを考えるきっかけにしたい。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。https://www.hckn.work

