【医療業界動向コラム】第155回 新たな地域医療構想、医療機関機能の考え方と整備方針が示される

2025.09.16

 令和7年8月27日、第3回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会が開催されている。今回の検討会では、これまで議論されてきた構想区域の考えた方と急性期拠点機能と高齢者救急・地域急性機能を中心とした医療機関機能の配置について、さらに医療と介護の連携、構想区域の策定の考え方について検討されている。

急性期拠点機能は人口20-30万人毎に1拠点を目安に

 新たに設定される医療機関機能報告をベースに、まずは急性期拠点機能をどういった目安で配置していくか、議論されてきたところだが、今回の議論でその一応の決着がついたといえる。人口20-30万人毎に1拠点を目安にする方針だ。例えば、100万人規模の大都市型であれば3−5拠点といったことになる(図1)。

図1 地域の実状を踏まえた医療機関機能の考え方(案)(クリックして拡大表示)

 その一方で気になるのが、人口20万人未満の人口が少ない地域の場合だ。厚生労働省からは「⼈⼝推計や医療資源などのデータを踏まえて急性期拠点機能を1つ確保・維持できるかの観点で点検する」として、当該区域内での連携・再編・集約化だけでなく、隣接する区域との合併等も含めて検討する事となる。その際、必要な医療へのアクセスで問題が生じないように、オンライン診療や巡回診療、医師の派遣といった取り組みを踏まえた地域医療構想の策定が必要となる(図2)。

図2 人口の少ない地域における医療へのアクセス確保(クリックして拡大表示)

 なお、人口が集中する都市部、例えば東京23区内などでは多くの医療機関が所在する中で連携・再編・集約化を進めて効率的な医療提供体制を構築できるか、病床機能や医療機関機能について区域内で医療資源の偏在がある場合、偏在を是正して均質な医療が提供できるか、といった観点で地域医療構想を策定していくこととなる。

 人口が少ない地域だけではなく、都市部には都市部の課題が有る。こうした課題をどのように顕在化し、新たな構想区域を設定していくか、注目したい。

介護との連携、まずは精緻なデータの収集と把握、既存の協議の場の活用を

 新たな地域医療構想は、従来の入院医療だけではなく、外来・在宅・介護もひっくるめた構想を策定することになる。介護については、地域ケア会議やサービス担当者会議などがすでに存在していることや、来年度からは新たにかかりつけ医機能報告制度に基づく協議の場も設けられて在宅についての地域での協議もはじまる(図3)。地域医療連携ネットワークのカンファレンスなども広義の意味で言えば協議の場とも言える。

図3 医療及び介護の体制整備に係る協議について(クリックして拡大表示)

 協議の場が増えすぎてしまっては、間接業務時間が増えてしまい、患者・利用者に向けたケアの時間確保に支障が生じたり、スタッフの負担ばかりが重くなってしまう。そこで、既存の協議の場を有効に活用していく、場合によっては今回の新たな地域医療構想を契機に合理化を図っていくことが必要だろう。そのため、今後の方針の一つとして「構想区域単位等の範囲で都道府県、市町村、医療関係者、介護関係者等が将来の提供について検討することとし、圏域内において提供体制について特に課題がある地域については、既存の協議の場も活用しながら、具体的に検討することとしてはどうか」といった提案がなされている。

 なお、そうした協議の場において必要とされるデータについては「国が都道府県に提供することとし、そのために必要なデータについては国で把握すること等の対応を検討してはどうか」と提案され、負担の軽減を図るように考えられている。

 医療と介護の連携の考え方や進め方の具体的な事項については、「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」で検討することになりそうだ。

連載記事に関連するコラム

資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら
検討に役立つ資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら