2019.07.01
トピックス

2019年7月1日「IT導入補助金の活用ポイント」

Q1ITツールの導入に活用できる補助金とは?

IT導入補助金

  • 補助額40万円~450万円
  • 補助率1/2
  • 補助対象者中小企業・小規模事業者等
  • 補助対象経費業務フローのシステム化およびRPA等による高度な連携・自動化を促進するツール
  • 主な活用法日々のルーティン業務を効率化させるITツールや情報を一元管理するクラウドシステム等、汎用的なITツールの導入に活用

2017年からスタートした経産省管轄のIT導入補助金(補助事業)は、業務効率化や生産性向上を目的としたIT活用を推進する政府の重点施策として、今期3年目を迎えました。

今期の補助額は前期よりも大幅な増額となり、下限額40万円、上限額450万円、補助率1/2と設定されました(上図)。IT導入補助金の対象となるITツールは、事務局の審査・登録による厳選されたパッケージソフトやクラウドサービスなどがあり、導入時にはIT導入支援事業者(ITベンダー)による導入コンサルティング費(役務)も含まれる珍しいタイプの補助金です。ただし、ハードウェアやリース料金、申請代行費などの経費は補助対象外となっています。

補助金の対象者は中小企業・小規模事業者等に限定され、医療法人や社会福祉法人の場合は「従業員数300名以下」、この他の医療や介護の中小企業・個人事業主の場合は中小企業基本法に基づくサービス業の区分における「資本金5千万円以下従業員数100名以下」となっています。

これまで過去2回の補助事業において、中小病院や介護事業所等の活用実例も多くありました(下図)。今期においては補助金が大幅な増額となったことで、より高度なツールの導入やシステムの改修(リプレース)にも対応しているため、今回は特に業務改善の活用に期待できる補助金となっています。

導入ツール導入効果
医療電子カルテ対応レセプトコンピューター患者管理業務・カルテ入力業務・カルテ発行業務・窓口会計、業務・リコール業務などに活用業務の精度が向上して患者の待ち時間は減少。顧客満足度が上がり1日の来院患者数が増加して収益もアップ。IT化することで人為的ミスの軽減による業務の精度向上はもちろん、従業員の負担軽減、それに伴いサービスの向上と良いサイクルが生まれる。
介護ビジネスコミュニケーションチャット社員間のコミュニケーションの円滑化介護業務管理ソフトタブレットを活用した介護記録や帳票の手書き業務・介護報酬請求業務の効率化シフト・スケジュール管理ソフト表計算ソフト年間400時間の業務時間削減を達成。無期雇用のスタッフの離職者がゼロに。
スタッフ間の連絡ミスがなくなり、利用者の離所がなくなった。チャットの利用により、社長が行う電話連絡が10分の1に減少。
看護看護業務管理ソフトタブレットを活用した看護記録や帳票の手書き業務の効率化ホームページ作成ホームページを新規開設訪問記録作成の時間短縮により、訪問件数を増やすことが可能に。計画書・報告書の作成時間を月2~3時間短縮でき、一人あたりの残業時間が月10時間以内まで削減。
  • 参照サイト:IT導入補助金2019サイトより各種情報を一部抜粋・引用
    https://www.it-hojo.jp/

Q2ツール選定や補助金申請はどうしたらよいか?

IT導入支援事業者とは、「補助金を活用する中小事業者等(補助事業者)に対し、ITツールの導入や運用のコンサルティング、及び補助金交付や実績報告等の各種申請・手続きなどのサポートを行うITベンダー」のことです。ITベンダーは、IT導入補助金事務局及び外部審査委員会により採択された事業者であり(下図)、事務局の登録を得たITツールや市販品を取扱っています。

ITツールの種類はとても多岐に亘り、①顧客対応・販売支援、②決裁・債権債務・資金回収管理、③調達・供給・在庫・物流、④人材配置、⑤業務固有プロセス(実行系)、⑥業務固有プロセス(支援系)、⑦会計・財務・資産・経営、⑧総務・人事・給与・労務、⑨自動化・分析、⑩汎用―といった業務プロセスに係るソフトウェアが該当しています。
ツールの選択においては、身近な類似の改善事例が参考になるため、まずはレセコン関係のITベンダーに相談してみるとよいでしょう。

ITツール選定や各種申請にあたり、ITベンダーから計画書の策定や申請支援等の導入コンサルティングが受けられる点を踏まえれば、単なる売買関係ではなく、顔の見えるパートナーシップを築き、継続的なフォローの実施が期待できる業者の選定がポイントになります。申請時には、ツール導入の効果として、3年後の伸び率が1.0%以上、4年後の伸び率が1.5%以上、5年後の伸び率が2.0%以上となる生産性向上を目標とした事業計画の策定(事業実施効果報告は2020年から2024年までの5回)や、生産性に係る情報の見える化などが求められています(下図)。ITツールの選定においては補助金ありきではなく、生産性向上に寄与するかが重要な決め手になるでしょう。

  • 参照サイト:IT導入補助金2019サイト「かんたん解説!IT導入補助金2019(中小企業・小規模事業者向け 公募要領のポイント)」のP7~8より一部抜粋・引用
    https://www.it-hojo.jp/h30/doc/pdf/h30_tyusyo_handbook.pdf

Q3ITツールを導入するにあたっての確認ポイントは?

ITツールの導入はゴールではなく新たなスタートであり、日頃から改善意識を持って利用し、機器を使いこなすには時間をかけた教育が不可欠です。そして、IT導入において留意すべき点は、機器やツール自体がすべての問題を解決してくれる訳ではなく、それを使いこなすスタッフによる継続的なマネジメントがなければ、効率アップできないことを忘れてはなりません。

また、ツール導入自体がスタッフのストレスになってしまっては本末転倒です。組織で導入を決定する際には実働に携わるスタッフの意見を収集し、導入に向けた検討~準備~運用のプロセスの中で、組織全体での話し合いを根付かせていくことができれば、スタッフにも患者や利用者にとっても風通しの良い快適な環境へと近づけていけるはずです。こうした一連の取り組みは働き方改革を遂行していくキッカケとして有用であり、スタッフの働き方も改善する一助となれば、とても有益に補助金を活用することができるでしょう。

なお、補助金活用においては時限的な申請タイミングと財源(予算額)が限られているケースが多く、今期の一次募集は既に締め切られ、次に7月中旬から二次募集が始まりますので、早期の判断が必要とされている点に注意しなければなりません。

今般、AIやセンシング技術の開発が進み、診療や介護に係る各種ソリューションも多様化し、他業種以上に、ICT関連のインフラ整備の必要性が増してきたといえます。医療・介護現場では、サービス提供の効率化や生産性向上のみならず、データヘルス改革の動向なども加味しながら、対応時期を決めていくことが大切です。データヘルス改革は、「国民の健康寿命の更なる延伸」と「効果的・効率的な医療・介護サービスの提供」の実現を目指した改革です(下図)。ビッグデータ解析によるシステム構築やAI活用の基盤などの整備が進められる中、医療・介護現場ではサービス提供に係る連携や情報の共有においてデジタル化が不可欠である点をしっかり押さえておきましょう。

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ワイズマン編集部