2023.02.11
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【斉藤正行のはなまる介護】「次期報酬改定を読み解く。令和5年度介護報酬改定検証」

2023年1月16日に本年最初の介護給付費分科会が開催されました。いよいよこれから本格的に次期介護報酬改定に向けた議論がスタートすることとなります。16日の審議会では、2021年介護報酬改定の検証を行う来年度の調査研究事業「令和5年度調査」の内容案が示されました。来年度調査となりますので、最終的な調査結果は来年の2月・3月ごろとなるので、2024年報酬改定へ完全影響とはならないものの、速報段階での調査結果は今年の9月・10月ごろの予定が示されており、一定の次期改定への影響を及ぼすことともなります。

調査内容は6つ。「①介護サービス事業者における業務継続に向けた取組状況の把握およびICTの活用状況に対する調査研究事業」次期報酬改定において、改めて感染症対策やBCPに対する対応を求められていくことが予測されます。同様に、更なるICT化の推進へと繋がることともなります。「②介護老人保健施設及び介護医療院におけるサービス提供実施等に関する調査研究事業」昨年末に介護保険部会で取りまとめられた介護保険制度に対する意見書において、老健・介護医療院の多床室の室料負担を特養と同等の扱いとすることについては、方向性の議論が決着せずに本年の夏ごろの決着方針が示されたところです。本調査事業の速報値がこの議論の決着に何らかの影響を及ぼすこととなるかどうかは1つの注目ポイントと言えます。「③個室ユニット型施設の整備・運営状況に関する調査研究事業」前回改定において個室ユニット型特養の定員上限が10名以下から、概ね10名以下とし15人を超えないものとするとの一部要件緩和が行われました。この影響調査を進める事業となり、今後の人員配置要件の緩和等にも一定の影響を及ぼす可能性のある大変重要な調査事業となります。

「④LIFEの活用状況の把握およびADL維持等加算の拡充の影響に関する調査研究事業」前回改定における最大注目となった科学的介護推進に向けた根幹となる科学的介護情報システム(LIFE)の運用状況を継続的に調査することとなります。次期報酬改定においてLIFEに関連する加算の更なるサービス種別の拡大、点数評価、加算種類の増加にどのような影響となるのか?大注目の調査事業です。同時にADL維持等加算の影響調査を行うことからもアウトカム評価の更なる推進にも影響を及ぼすこととなり、とりわけLIFEで収集している高齢者の各状態に関するアウトカム加算の更なる創設に繋がる可能性も秘めた調査と言えると思います。「⑤認知症グループホームの例外的な夜勤職員体制の取扱いの施行後の状況把握・検証、必要な対応の検討に関する調査研究事業」前回改定において議論が紛糾した見直し項目の1つであるグループホームにおける夜勤職員体制について、最終的には、平屋で見通しの良い3ユニットのグループホームにおいてのみ2名の夜勤職員での配置となる極めて限定的な要件緩和となった影響を調査します。次期報酬改定において2ユニットで1名の夜勤職員の配置への更なる要件緩和へと繋がるかどうかの大変重要な調査事業となります。「⑥認知症介護基礎研修受講義務付けの効果に関する調査研究事業」前回改定におけるこちらも注目の見直し内容である無資格の介護従事者の配置要件において介護基礎研修の受講義務付けに関する影響調査です。3年間の猶予期間が設けられており期限まで後1年数カ月となりましたが、現状の研修受講状況などを調査し、猶予期限の延長を含めた次期報酬改定での対応判断にも影響を及ぼす大変重要な調査事業となります。

この6つの改定検証調査から少しづつ次期報酬改定に向けた方向性の形が見えてきていると言えると思います。前回報酬改定で示された5つの分野横断テーマこそが、引き続き次期報酬改定における大きなテーマとなることは間違いないと思います。これから1年間次期報酬改定に向けて業界大注目の議論が続くこととなります。

斉藤 正行氏

  • 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
  • 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役
  • 一般社団法人日本デイサービス協会 名誉顧問
  • 一般社団法人日本在宅介護協会東京支部 監査
  • 一般社団法人全日本業界活性化団体連合会 専務理事
  • その他、介護関連企業・団体の要職を歴任

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