処遇改善加算の実績報告に必要な書類と提出期限をわかりやすく解説

2024.12.19

処遇改善加算の実績報告書の作成は、事業所の担当者を悩ませる業務の一つです。

「実績報告書の作成方法がよくわからない」
「必要な書類が揃っているか不安」
「提出期限に間に合うか心配」

このような悩みを抱える担当者も少なくないでしょう。

実績報告書の提出は、処遇改善加算を継続して受けるために必要不可欠な手続きです。しかし、初めて担当する方はもちろん、経験者でも書類の準備や記入方法に戸惑うことが少なくありません。
特に、基準額の考え方や賃金台帳の準備期間など、細かな注意点を見落としがちです。

本記事では、実績報告書の作成に必要な書類から提出期限、具体的な記入方法まで、実務担当者の視点でわかりやすく解説します。

毎月の書類管理から実績報告書の作成まで、確実な手順を踏んで、処遇改善加算の実績報告を適切に行っていきましょう。

処遇改善加算の実績報告で必要な提出書類と期限

処遇改善加算の実績報告では、加算算定の継続に必要な書類を期限内に正確に提出しなければなりません。

ここでは、実績報告に必要な書類やその期限などを詳しく説明します。

実績報告書の提出期限

処遇改善実績報告書の提出期限は「最終の加算支払いがあった翌々月の月末まで」と定められています。

実績報告書は、前年度の処遇改善計画書に基づいて、実際にどのような処遇改善を行ったかを証明する重要な書類だからです。
具体的には、前年4月から当年3月までの加算取得額と賃金実績を報告する必要があります。

このスケジュールを踏まえ、確実な提出のために以下のようなスケジュールで進めると良いでしょう。

  • 4月:サービス提供実績の最終確認
  • 5月:国保連からの入金確認、書類準備開始
  • 6月:実績報告書の作成、内容確認
  • 7月中旬まで:提出完了

処遇改善加算を継続して算定するためには、計画書と実績報告書の両方を期限内に提出することが必須です。
提出スケジュールを十分に理解し、余裕を持って計画を立てておきましょう。

作成の際に準備する書類

処遇改善実績報告書の作成には、主に3つの重要書類を準備する必要があります。
これらの書類は、加算が目的通りに介護職員の賃金改善に使われたことを証明するために必要です。

必要な書類は、以下の3点です。

  • 賃金台帳(前年度5月支払分~今年度5月支払分)
  • 処遇改善加算等の総額のお知らせ(12ヶ月分)
  • 前年度の処遇改善計画書

賃金台帳を13ヶ月分必要とする理由は、国保連からの入金と実際の賃金支払いにタイムラグがあるためです。
3月サービス提供分の加算が5月に入金されることから、その期間の賃金支払い記録が必要となります。

処遇改善加算等総額のお知らせは、国保連から毎月送付される通知書です。
ここで重要なのは、記載されている金額には利用者負担分(1割)も含まれている点です。
自治体はこの総額を基準に実績報告書の内容を確認するため、1円単位で正確に確認する必要があります。

処遇改善加算は受け取った額以上の賃金改善が必要なため、書類の準備と確認は慎重に行いましょう。

都道府県別の提出方法と提出先

処遇改善実績報告書の提出方法は都道府県によって異なり、正しい提出先と方法を確認する必要があります。

提出方法や提出先を間違えると、書類の受理が遅れたり、提出期限に間に合わなかったりする可能性があります。
都道府県ごとに求められる様式が異なるため、必ず事前に確認しておきましょう。

主な提出方法には、以下のようなものが挙げられます。

  • 電子申請システムによる提出
  • メールでの提出
  • 郵送による提出
  • 窓口への直接持参

提出先は基本的に処遇改善計画書を提出した先と同じ部門となります。ただし、都道府県によって担当部署が異なる場合があるため、必ず確認が必要です。

提出方法と提出先は、各都道府県のホームページで確認するか、直接担当部署に問い合わせましょう。

実績報告書作成時に確認すべきポイント

実績報告書を作成する際には、処遇改善加算の内容を正確に報告しなければなりません。
集計や計算の正確さが求められるため、各書類のチェックポイントを理解しておくことが大切です。ここでは、実績報告書作成時に特に注意すべきポイントを詳しく説明します。

国保連からの処遇改善加算総額通知

国保連から送付される「介護職員処遇改善加算等総額のお知らせ」は、実績報告書の作成時に加算総額を正確に把握するために必要な帳票です。

介護職員処遇改善加算は、介護業界の人材確保と長期就労環境の整備を目的に導入された制度です。そのため、加算の使途を正確に報告する必要があり、この通知書が実績報告の根拠になる資料となります。

「介護職員処遇改善加算等総額のお知らせ」には以下のような情報が記載されています。

  • 事業所番号
  • 介護職員処遇改善加算総額
  • 介護職員等特定処遇改善加算の額
  • 加算額の内訳

介護職員処遇改善加算等総額のお知らせは、都道府県への実績報告の根拠となる重要書類です。
令和4年10月の制度改正でベースアップ等支援加算が新設されたことに伴い、通知書の様式も変更されているため、最新の様式で正確に管理してください。

賃金台帳の集計方法

賃金台帳の集計では、処遇改善加算の対象となる職員の賃金と加算額の関係を正確に把握する必要があります。

処遇改善加算は受け取った額以上の賃金改善が必要です。
そのため、対象職員の基本給与や手当、一時金などを含めた総支給額を適切に集計し、加算額との比較を行う必要があります。

賃金台帳の集計手順としては、以下のような手順で計算すると良いでしょう。

  1. 対象職員の特定と確認
  2. 処遇改善に関連する手当の抽出
  3. 基本給与と各種手当の合算
  4. 一時金や調整金の確認

集計の際は、賃金台帳から処遇改善加算による賃金改善分を明確に区分できるようにしておきましょう。
特に年度末の調整では、加算総額に対する実際の支給額の過不足を確認し、必要に応じて一時金等での調整を行います。

加算総額の計算方法

処遇改善加算の総額計算は、国保連からの通知額と実際の賃金改善額を照合する作業です。
加算は必ず職員の賃金改善に充てる必要があり、通知された額以上の改善が求められます。

計算の基本手順は、以下のとおりです。

  1. 国保連通知の加算総額確認
  2. 職員への支給実績集計
  3. 加算総額と支給実績の照合

金額は1円単位での確認が必要です。
計画書に沿った職員への配分と、着実な賃金改善の実施を確認しましょう。

実績報告書における基準額

実績報告書における「基準額」は、計画書の金額をそのまま転記するのではなく、実際の賃金支払い実績を反映させる必要があります。

基準額を記入する際には、以下の点に注意が必要です。

  • 賃金台帳から実際に支払った賃金総額を算出して記入
  • 変更の場合は、変更理由を明記(報告書の「⑦その他」欄に記載)

職員構成の変動による賃金額の変更は当たり前に発生します。
賃金台帳で実績を確認し、実際に支払った金額を基準額として記載し、変更理由(「人員構成の変動によって賃金額が変動したため」など)を明確に記入してください。


この手順を省くと、自治体から修正指示が入るため注意しましょう。

効率的な実績報告の準備と運用のポイント

効率的に実績報告書を作成し、提出するためには以下のポイントをおさえておく必要があります。

  • 日常的な記録管理
  • 実績報告に活用できる管理ツール

それぞれ詳しく説明します。

日常的な記録管理

実績報告書の作成を円滑に行うためには、毎月の必要書類を計画的に整理・保管しておくことが大切です。

年度末にまとめて書類を集めようとすると、書類の紛失や内容の確認漏れのリスクが高まります。月次での確実な管理が、正確な実績報告につながります。

特に、以下の書類は月次ごとに保管しておきましょう。

  • 国保連からの処遇改善加算総額通知
  • 賃金台帳
  • 給与明細の控え

毎月の給与支払い時に、これらの書類を専用のファイルに整理して保管しましょう。
特に国保連からの通知は、実績報告の根拠となる重要書類なため、受け取り次第すぐに保管することをおすすめします。

実績報告に活用できる管理ツール

実績報告書作成を効率化するためには、給与システムやデータ管理ツールの活用が有効です。

手作業での集計や記録管理は時間がかかり、ミスのリスクも高くなります。
そのため、各種ツールを活用して効率的な管理を行うようにすると良いでしょう。

具体的な活用例には、以下のようなものが挙げられます。

  • 賃金データの自動集計
  • 処遇改善加算の配分管理
  • Excelのテンプレートを活用
  • 月次データの一元管理

ツールを選ぶ際は、施設の規模や業務フローに合わせて検討してください。
特に給与システムは、処遇改善加算の管理機能が付いているものを選ぶと良いでしょう。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

処遇改善実績報告書の提出時期になると胃が痛くなる方は相当数にのぼるのではないでしょうか。処遇改善関連加算(処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ加算)が一本化されたことにより、多少報告内容はスリムになることが期待されますが、それでもかなりのボリュームになるのは間違いないでしょう。実績報告書の提出は、処遇改善加算の算定要件でもあるため必ず行う必要があります。「介護職員処遇改善加算等総額のお知らせ」は、請求を紙・FD・CD-Rで行っている事業所には紙媒体が郵送されます。伝送で行っている事業所にはデータファイルを送信されるのが一般的です。前者の事業所は少数派でしょうが、システム導入をしていないと根本的に計算難易度が上がってしまいます。処遇改善加算算定も見据えてシステムを選定していきましょう。

処遇改善加算の実績報告は計画的に進めていこう

処遇改善加算の実績報告は、事業所が受け取った加算を適切に職員の賃金改善に充てたことを証明する手続きです。

正確な報告のためには、国保連からの処遇改善加算総額通知や賃金台帳、処遇改善計画書など、必要な書類を確実に準備する必要があります。

提出期限は、最終の加算支払いがあった翌々月の月末までと定められています。
3月のサービス提供分の場合、事業所からの請求が4月、国保連からの入金が5月となり、実績報告書の提出期限は7月末です。このスケジュールを踏まえて計画的に準備を立てていきましょう。

スムーズな実績報告のためには、日々の記録管理が欠かせません。
給与システムやデータ管理ツールを活用しながら、毎月の書類を丁寧に管理すれば、正確な実績報告につなげられるでしょう。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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