介護ソフトの勘定科目は何?タイプ別の仕訳例と減価償却方法を解説

2024.04.08

介護業界において、ソフトウェアの会計処理はしばしば頭を悩ませる問題です。
特に、介護ソフトの購入費用をどの勘定科目に計上すべきか、多くの経理担当者や事業主が疑問を抱えています。

  • インストール型とクラウド型の介護ソフト、それぞれの会計上の扱いにはどのような違いがあるのか?
  • 10万円以上の介護ソフトを購入した場合、その減価償却の処理はどう行うべきなのか?

これらの疑問に答えるため、本記事では介護ソフトの勘定科目の選定方法、タイプ別の仕訳例、減価償却方法

などについて詳しく解説していきます。

【基礎知識】介護ソフトの勘定科目とは?

【基礎知識】介護ソフトの勘定科目とは?

介護ソフトの勘定科目には、具体的なルールやガイドラインが存在しません。
つまり、介護ソフトをどの勘定科目で会計処理するかは、組織によって異なります。

それでは、どのようにして適切な勘定科目を選択し、会計処理の透明性を保つのでしょうか。
ここでは、介護ソフトの勘定科目を選定する際の基本的な考え方と、それに基づく具体的な処理方法を紹介します。

介護ソフトの勘定科目に明確な指定は存在しない

介護ソフトの勘定科目は、法律や規則で明確に指定されているわけではありません。
組織によって、どの勘定科目を使用するかが異なるため、一概に「これが正しい」とは言えないのです。

このため、組織内で一貫したルールを設けることが重要です。
例えば、一度「ソフトウェア」として分類した場合は、以降も同じ勘定科目での計上が望ましいでしょう。

また、財務諸表の信頼性を高めるためにも、このような統一された取り扱いが推奨されます。
会計処理の透明性と整合性を保つためにも、介護ソフトを導入する際には、組織内でのルール作りに注意を払いましょう。

介護ソフトの勘定科目は「消耗品費」・「通信費」が一般的

介護ソフトの勘定科目には、「消耗品費」や「通信費」が一般的に使用されます。
これは、介護ソフトの種類や購入金額によって異なるため、注意が必要です。

例えば、10万円未満のパッケージ型介護ソフトの場合、一般的には「消耗品費」に分類されます。
これには、ソフトウェアの導入に必要な諸費用も含まれることが多いです。

一方、クラウド型の介護ソフトでは、利用料金を「通信費」として処理することが一般的です。
こうした勘定科目の選択は、自施設の会計基準やソフトウェアの使用方法によって異なるため、適切な判断が求められます。

介護ソフトの種類によっては減価償却が必要

一部の介護ソフトには減価償却を要するものが含まれています。
特に、10万円を超える購入価格のパッケージ型ソフトウェアは、無形固定資産に分類され、財務年度の終わりには減価償却費の計上が必要です。

実際、国税庁も以下を発表しています。

ソフトウエアは、減価償却資産(無形固定資産)に該当し、その取得価額及び耐用年数は次のとおりです。

引用:ソフトウェアの取得価額と耐用年数|国税庁

減価償却の一般的な方法は直接法です。
これは、無形固定資産に分類される「のれん」の減価償却に似ており、介護ソフトの帳簿価値を直接減少させる手法です。

ただし、クラウド型介護ソフトは、減価償却の対象外です
クラウド型介護ソフトの所有者は、あくまでもシステム提供会社であり、導入時に製品本体を取得するわけではないためです。

したがって、介護ソフトの種類に応じて正しい会計処理を行うことが、適切な仕訳には不可欠です。

【タイプ別】介護ソフトの勘定科目

【タイプ別】介護ソフトの勘定科目

介護ソフトの勘定科目を選定する際、その種類によって異なるアプローチが必要です。
インストール型・パッケージ型とクラウド型・ASP型の介護ソフトでは、会計処理が大きく異なりますが、それぞれどのように会計上扱うべきでしょうか。

ここでは、それぞれの種類に応じた勘定科目の選択方法と、必要に応じた減価償却の処理について触れていきます。

インストール型・パッケージ型の介護ソフト

インストール型やパッケージ型の介護ソフトは、物理的なパッケージやダウンロードを通じて提供されるソフトウェアです。
これらのソフトウェアは購入後、特定のコンピュータシステムにインストールして利用されます。

このタイプの介護ソフトの会計処理は、購入価格が10万円未満かそれ以上かで異なります。
10万円未満の場合、通常「消耗品費」として計上されることが多く、インストールに必要な追加費用や人件費も含まれます。

しかし、10万円を超える購入の場合は、「無形固定資産」として処理され、減価償却が必要です。
30万円以下で購入した場合には、少額減価償却資産の特例を活用して全額を損金に算入することも可能です。

また、10万円を超え20万円未満の購入では、一括償却資産として損金算入し、3年間で減価償却することができます。

クラウド型・ASP型の介護ソフト

クラウド型・ASP型の介護ソフトは、インターネットを通じて提供されるソフトウェアのことです。
これらは物理的な媒体を必要とせず、インターネット経由でアクセスして使用されます。

クラウド型やASP型の介護ソフトは、インストール型のものとは違い、資産としての計上は行われません。
これは、ソフトウェアが提供会社によって保有されており、施設自体がソフトウェアを直接取得しているわけではないからです。

このようなソフトウェアに関する支払いは通常、「通信費」として経理処理されることが多いです。
契約は月額又は年額プランが一般的で、支払いはすべて経費に計上されます。

サポート料が別途発生した場合、それは「諸会費」や「支払手数料」として処理されることが一般的ですが、サポート料が月額料金に含まれている場合は、通信費などの勘定科目に計上することが適切です。

クラウド型やASP型のソフトウェアは減価償却の対象外であり、会計処理は比較的シンプルですが、支払いの性質を正しく把握し、適切な勘定科目で処理することが重要です。

インストール型・クラウド型介護ソフトの仕訳方法

インストール型・クラウド型介護ソフトの仕訳方法

介護ソフトの会計処理において、インストール型とクラウド型では異なる仕訳方法が必要です。
これは、ソフトウェアの購入形態や利用方法によって、会計上の取り扱いが変わるためです。

では、具体的にどのようにこれらのソフトウェアを仕訳すべきでしょうか。
ここでは、実際の日付や金額を用いて、インストール型とクラウド型介護ソフトの仕訳例を具体的に示します。

インストール型介護ソフトの仕訳方法

ここでは、インストール型介護ソフトの仕分け方法を紹介します。
インストール型介護ソフトは、10万円以上・10万円未満とで勘定科目が異なるため、それぞれ順に紹介します

金額が10万円以上の介護ソフト

10万円以上の介護ソフトは、無形固定資産として計上され、減価償却の対象です。
10万円以上のインストール型介護ソフトの仕訳は、無形固定資産として計上し、かつ、減価償却が必要です。

例えば、250,000円で購入した介護ソフトは、耐用年数5年を想定し、年間50,000円(250,000円×0.2)の減価償却費を計上します。
この場合の仕訳例は以下のとおりです。

日付借方科目金額貸方科目金額摘要
2023年9月5日ソフトウェア250,000円普通預金250,000円インストール型介護ソフト購入
2023年12月31日減価償却費50,000円累積減価償却額50,000円インストール型介護ソフトの減価償却

金額が10万円未満の介護ソフト

10万円未満の介護ソフトは、消耗品費として計上されます。
例えば、99,000円で購入したソフトウェアの場合、以下のように仕訳します。

日付借方科目金額貸方科目金額摘要
2023年9月5日消耗品費99,000円普通預金99,000円インストール型介護ソフト購入

この場合、減価償却の必要はありません。
購入時に発生した追加のカスタマイズ料金や設定費用も、消耗品費に含めることが可能です。

クラウド型介護ソフトの仕訳方法

クラウド型介護ソフトの仕訳方法は、その利便性と経済性から特に重要です。
クラウド型ソフトは物理的な商品の購入ではなく、サービスの利用として扱われます。

そのため、これらの支払いは通常「通信費」として計上されることが多いです。
クラウドサービスの利用料は、月額又は年額で定期的に支払われることが一般的ですので、月ごと、あるいは、年ごとに仕訳する必要があります。

仕訳例:

日付借方科目金額貸方科目金額摘要
2023年9月30日通信費1,078円普通預金1,078円クラウド型介護ソフトの購入

介護ソフトにおけるサポートサービスの勘定科目

介護ソフト関連のサポートサービスに対する会計処理は、サービスの性質に応じて異なる勘定科目を使用します。
技術サポートやカスタマイズにかかる費用は、一般に「諸経費」や「支払手数料」としての計上が一般的です。

これには、ソフトウェアのトラブルシューティング、機能調整、ユーザートレーニングなどが含まれることがあります。
また、サポートサービスがソフトウェア購入契約の一部である場合、その費用は購入価格に含めて「無形固定資産」として計上されることもあります。

仕訳例:

日付借方科目金額貸方科目金額摘要
2023年10月30日諸経費700円普通預金700円介護ソフトのサポート費用
伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

厚労省は2024年度より全ての介護事業者に対して、経営情報の毎年の報告などを義務化することを決定しました。都道府県への経営情報の報告と、介護情報公表制度を通じて公表することが求められることになります。その目的は、経営実態をより正確に把握し、介護報酬改定などの精度を上げることにあります。財務諸表を公表するというのは、経営者にとってなかなかインパクトのある内容ではないでしょうか。
介護業界には「会計の区分」という特殊なルールがあります。介護サービス毎に会計を算出する必要があり、また介護サービス以外の事業とは会計を分けなければなりません。適正に会計を区分できていない場合、運営基準違反となってしまいます。本施策により、更に会計の区分が重要になってくる可能性があるので、これまで以上に注意が必要です。

介護ソフトならワイズマンソリューションがおすすめ

介護ソフトならワインマンソリューションがおすすめ

ワイズマンの「地域包括支援センター支援システムSP」は、小規模事業者にとって理想的な介護ソフトです。
このシステムは、PDCAサイクルに即し、計画作成から評価まで介護予防においてケアマネジメントを実施して業務の効率化をサポートします。

特に、地域包括支援センターの業務フローに沿った使いやすいシステム設計が特徴で、ケアマネジメントサイクルの品質向上に貢献します。
本記事のテーマである勘定科目の分類においても、このシステムは「無形固定資産」としての計上が一般的であり、減価償却の対象です。

介護ソフトをお探しの際には、ぜひワイズマンソリューションをご検討ください。

まとめ

まとめ

本記事では、介護ソフトの勘定科目に関する適切な会計処理方法について解説してきました。
また、インストール型とクラウド型の介護ソフトに応じた勘定科目の選択方法と、必要に応じた減価償却の処理についても紹介しました。

介護ソフトの勘定科目には明確な指定がなく、組織によって異なるため、一貫したルールを設けることが重要です。
この記事が、介護ソフトの会計処理に関する理解を深め、適切な勘定科目の選定に役立てば幸いです。

業務効率化のために介護ソフトの導入をご予定の方は、ぜひワイズマンソリューションご検討ください。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

介護・福祉に関連するコラム

資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら
検討に役立つ資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら