介護施設でのペーパーレスの進め方|メリット・デメリットと成功のポイントを解説

2024.01.16

介護施設の現場では、たびたび、人材不足による業務負担や、ICT化の遅れが問題とされてきました。
ようやく近年、ペーパーレス化を推進する動きは介護業界全体に広がっています。

とはいえ、自施設においてペーパーレス化を導入すると、どのような変化があるのか、漠然としたイメージしか持てていない方も多いはず。

本記事では、ペーパーレス化の現状から今後の動き、自施設においてどのようなペーパーレス化が可能かなどをイメージを持ってもらえるよう解説します。
ペーパーレスをうまく導入し、メリットを活用していけるよう、参考にしてみてください。

介護業界におけるペーパーレス化の現状

介護業界におけるシステム化などの話になると「介護業界でのDX化は遅れている」という話を見かけるかと思います。
人材不足や予算の都合、ほかにもシステムへの知見を持つ人材の確保が困難などの理由が、介護施設においてDX化が遅れる原因とされます。

介護事業者を対象に実施されたアンケートから、実際にどの程度ペーパーレス化が進んでいるのか、見てみましょう。

約8割がペーパーレス化の重要性を実感

「今後介護業界のDX化の一環として、ペーパーレスの推進は重要と思うか」という問いに対して、76.7%が「非常にそう思う」「ややそう思う」と回答しました。
約8割の介護事業者が、ペーパーレス化の重要性を感じているということです。

また、このうちの7割以上がペーパーレス化を重要と思う理由として「スタッフの業務が多く、多忙だから」をあげています。
このほか、人材不足や利用者が増加していることなども理由にあがっていました。

約8割の施設でペーパーレスが推進されていない

約8割もの介護事業者がペーパーレス化を重要と捉えている一方で、「ペーパーレス化が十分に進められているか」という問いに対して79.6%もの回答者が十分に進められていないと感じています。

そのなかで「今後ペーパーレス化に取り組んでいきたい」と約8割の事業者が答えています。
また、ペーパーレス化を進められていないと答えた事業者のうちの85.5%が、ペーパーレス化による業務の効率化を期待しているといった回答がありました。

このほかに、費用の削減や社内スペースの有効活用などを期待する回答もあがっています。

参照:介護業界のペーパーレスに関する実態調査|ペーパーロジック株式会社

【意味がない?】介護施設がペーパーレスを推進するメリット・デメリット

介護施設でのペーパーレス化が進まない要因には、以下の理由があげられます。

  • 文書保管の義務(5年間)が定められている
  • 自治体や病院とのやりとりに書類の提出が必要

自施設でペーパーレス化を進めても、結局紙ベースにする必要が出てきてしまうのです。
このため、介護施設のペーパーレス化が進みにくくなっています。

文書保管については押印が必要な書類以外は、電子媒体での保管が認められているため、まったくペーパーレス化が無理というわけではありません。

また厚生労働省では、Web申請なども導入されました。
今後、施設のペーパーレス化を推進しやすい状況がさらに整備されるでしょう。

ペーパーレス化を進める意味がまったくないわけでなく、将来的には介護施設のペーパーレス化もよりいっそう、進むことが期待できます。

ここでは、自施設のペーパーレス化を推進するメリットやデメリットを紹介します。
それぞれについて知っておくと、自施設のペーパーレス化が必要かどうか、ペーパーレス化されたときの業務がどうなるか、などをイメージしやすくなるでしょう。

ペーパーレスを推進するメリット

介護施設のペーパーレス化を推進するメリットは、下記のものがあげられます。

  • 職員の負担軽減、業務の効率化
  • 最新情報をスムーズに共有、転記ミスの防止
  • 経費削減、スペースの有効活用

介護施設では、利用者の介護している間にバイタル記録やサービス内容をメモしておいて、介護サービスが終わってから、その日の記録を記入する場合も多くあります。
しかし、不測の事態が起きたり、単純に忙しくて記録を記入している時間がとれない場合には、残業して記入をするといったこともあるでしょう。

ペーパーレスが進み、電子端末で記録を入力できれば、介護中にメモで記録していた内容をそのまま端末に入力できます。
一度入力すれば、そのまま記録として残るため、終わってから記録を記入し直す必要がありません。

一度の入力がそのまま記録として残るのは、転記ミスを防ぐというメリットにもつながります。
常に入力されたリアルタイムの情報が更新されるため、職員同士の情報共有もスムーズです。

このほか文書をプリントアウトする費用を抑えられることや、紙で保管していた場所が不要になるため、有効スペースが増えることもペーパーレスのメリットに入ります。

ペーパーレスを推進するデメリット

ペーパーレスを推進するデメリットももちろんあります。
自施設のペーパーレス化を進める際には、デメリットを考慮して対策を考えておくといいでしょう。

  • ペーパーレス化にコストがかかる
  • 業務効率が低下するリスクもある

ペーパーレス化する際には、紙からデータにするためのスキャナーや閲覧のためのパソコンなどの電子端末を購入しなければなりません。
文書の管理を継続してペーパーレスで進める場合、システムの導入なども必要です。

こうしたペーパーレス化の初期段階にかかるコストが、ペーパーレスを推進するうえでの、大きなデメリットと言えます。

また、介護施設では高齢の職員が多く、電子端末の操作に抵抗感がある場合も多いでしょう。
新しい業務フローへの移行は、不便と感じてしまい、かえって効率を悪くしてしまうリスクがあります。

さらに、電子端末の画面では、一度に把握できる情報量に限りがあるため、多くの情報を一度に見たい場合にも、不便と感じることもあるかもしれません。
紙ベースの方が便利な資料は、ペーパーレス後にもプリントアウトして対応するなど、使い分けが必要となるでしょう。

介護施設でのペーパーレスの進め方

介護施設でペーパーレスを進める場合には、以下の流れに沿って導入していくといいでしょう。

  1. ペーパーレス化の目的を設定
  2. 対象範囲と紙の使用量を把握
  3. データ化する方法を検討
  4. 運用方法の設定と実行
  5. 効果検証と最適化

それぞれの段階を詳しくみていきます。

ペーパーレス化の目的を設定

ペーパーレス化によってどのような課題を解決したいのか、目的を設定しましょう。
目的には下記のような例があげられます。

  • スムーズな情報共有を実現
  • スタッフの業務負担を軽減、効率化
  • 印刷代や管理維持費などのコストを削減

介護スタッフと一緒に、ペーパーレス化によってどのような課題を解決したいかを洗い出してみましょう。
そのうえで、まずはペーパーレス化の目的を明確に設定してください。

対象範囲と紙の使用量を把握

目的を設定できたら、ペーパーレスにする対象範囲や、それぞれの業務で使用している紙の使用量を把握しましょう。
はじめから、すべてをペーパーレスにしてしまうと、業務へ大きな影響を及ぼしかねません。

最悪の場合、職員の抵抗感がより強くなってしまい、業務への意欲低下につながりかねません。
文書でのやりとりが必要な書類は従来のフローを取り入れたり、全体像を把握したい資料については紙ベースで継続するなど、ペーパーレス化との棲み分けが必要です。

ペーパーレス化する対象範囲が決まったら、それぞれの業務における紙の使用量を把握してみてください。
ペーパーレスによってどのくらいのコスト削減が可能かを把握できれば、ペーパーレス化に職員の意識が向きやすくなります。

また、紙の使用量が多い業務がペーパーレス化の対象外となっていれば、ペーパーレス化に取り込んでいけないかなどをあらためて検討できます。

データ化する方法を検討

ペーパーレス化の目的や対象範囲に合わせて適切なツールを検討しましょう。
ペーパーレス化といっても、大規模なシステムをはじめから導入する必要はありません。

例えば、利用者情報の管理をパソコン上で完結するだけであれば、紙の書類でなく、エクセルで一覧にまとめるのも、ペーパーレスの一環です。
施設の規模がそれほど大きくなく、請求業務のみをペーパーレスにしたい場合は、請求業務に特化したシステムを取り入れるという手もあります。

将来的にすべての業務をペーパーレス化し、システム中心にしたいのであれば、大規模な介護施設向けのシステムの導入を検討しましょう。

運用方法の設定と実行

ペーパーレス化にともない、業務フローが変更されるため、運用方法を設定していきます。
介護施設では、事務作業の進め方がスタッフによって異なるケースが多々見られます。

ただ、作業効率を高めたり、問題を早期発見・改善したりするには、業務を標準化するのが効果的です。
各業務を細かく区切って、業務フローを設定していきましょう。

また端末を使用するのであれば、個人情報漏えいを防止しなければなりません。
端末の画面をオフにするようフローに盛り込んだり、万が一紛失した場合の対処方法なども設定しましょう。

運用のルールが設定できたら、ペーパーレス化を実行に移します。

効果検証と最適化

運用してからは、効果の検証と運用方法の見直しを行い、最適化を進めていきます。

はじめに設定したルールがうまく運用できるとは限りません。
ペーパーレス化を導入して完了ではなく、見直しながら改善していくことが大切です。

最初に設定したペーパーレス化の目的を達成できるように、運用を最適化していきましょう。

介護施設がペーパーレスを成功させるためのポイント

ペーパーレス化をスムーズに進め、成功させるためのポイントを解説します。
ポイントをおさえて、施設全体でペーパーレス化を進めていきましょう。

段階的にペーパーレスを推進する

ペーパーレス化の手順でも述べているとおり、ペーパーレス化は対象を区切って、段階的に進めていきましょう。
いきなりすべての業務をペーパーレス化すると、慣れない作業ばかりに職員が混乱してしまいます。

したがって、まずは部分的に実施し、問題がないかを試してみるところからスタートしましょう。
段階的にペーパーレス化を取り入れることで、トラブルが発生したときに即座に対処でき、改善サイクルを高速で回すことも可能です。

業務の効率化とセットで実施する

ペーパーレス化を導入する根本的な目的は、業務の効率化にあります。
導入するにあたっては、全体の業務フローを見直し、問題箇所を改善することも大切です。

全体で業務の効率化がされれば、職員の働きやすさやモチベーションアップにもつながるでしょう。

また、業務の効率化について介護スタッフから意見が出た場合には、ペーパーレス化以外でも、これを機に反映させていく姿勢も大切です。
ペーパーレス化という新たな取り組みに施設職員が一丸となって取り組んでいけるよう、前向きな姿勢で寄り添っていきましょう。

現在の自施設に適したソリューションを選択する

自施設の現状の課題や業務内容、ペーパーレス化の対象に合わせたツールやシステムを選択することが大切です。

パソコン操作やシステムの導入、操作などに抵抗がある職員が多い場合、サポート体制が整っていないシステム会社のソフトを取り入れても、活用しきれないことや、トラブル時に業務に支障をきたすことが考えられます。
施設スタッフのICTへの適応度によっては、サポート体制が手厚いシステム会社にペーパーレス化をサポートしてもらうことも検討してみてもいいでしょう。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

介護業界ほど紙に溢れている業界も珍しいかもしれません。ただ、これは決して事業者側だけの問題だけではなく、そもそも複雑にしてしまった介護保険制度によるものが大きいでしょう。運営基準に従っている証として、各種書類を事業者側は保管する必要があるため(保管されていない場合、運営基準違反となる可能性大※原則2年保管)、紙で溢れている現状は国のミスリードの結果という側面もあります。国にも色々言いたいところですが、今すぐに変わるわけではないので、必然的に事業者側の工夫が必要になります。まずは法定書類ではないものをピックアップしてみましょう。例えばデイサービスの家族向け連絡帳は法定書類ではありません。こうした書類の廃止などを検討しつつ、必要書類のムダ・ムラを抽出しICT機器の有効活用を検討していきましょう。

「ワイズマンシステムSP」は介護施設のペーパーレスをサポート

ワイズマンの介護施設向けソフト「ワイズマンシステムSP」は、介護施設のペーパーレス化をサポートします。
ペーパーレス化を検討している事業所は、ほぼ初めてのシステム導入で、導入の流れや機能などに不安も感じるでしょう。
ワイズマンでは豊富なシステム導入実績から、施設の業務効率化のサポートを行います。

あらゆる介護事業に対応

ワイズマンの介護向け製品は、全介護事業向けにシリーズ展開しています。

自施設にどのようなシステムがいいのかわからない場合でも、施設種別ごとに適したシステムを導入していただけます。
また、オンプレミス型のみならず、導入コストを抑えやすいクラウド型も提供しています。

ペーパーレス化や業務改善だけでなく、コスト面でも選びやすいシステムです。

介護施設内・外の情報共有を円滑化

ワイズマンでは、電子カルテやリハビリ管理システムも開発しています。
同一法人内で医療機関などを運営しているのであれば、システム同士を連携も可能です。

文書でのやりとりが続いていた部分も、システムで連携できるため、ペーパーレス化を実現できます。

また、即座に情報共有できることも大きな魅力です。
利用者の体調の変化などをタイムリーに医師へ相談できるため、より質の高いサービスを提供できるでしょう。

タブレットを活用した業務支援

訪問介護でも使用可能で、訪問先で介護記録を記録できるタブレットもオプションにそろっています。
事業所へ寄らずに直接利用者宅へ向かうことも可能なため、直行直帰といった新しい働き方も実現できるでしょう。

タブレットとバイタル機器を連携できるオプションもラインナップしています。
日々行う体調管理も、より効率的に進めることが可能です。

測定値がそのまま自動でシステムに反映されるため、記入ミス防止にもつながります。

まとめ

介護業界におけるペーパーレス化は、今後より多くの事業所で推進されていくことが予想されます。
ペーパーレス化を進めることで、介護スタッフの負担軽減が可能です。

事務作業の効率化は、職員のモチベーションの向上や、より良い介護サービスにもつながるでしょう。

ペーパーレス化は、一度に進めず、現状を見ながら徐々に進めていきましょう。
本記事が介護事業者様のペーパーレス化の助けになれば幸いです。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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