【医療業界動向コラム】第145回 包括期病床(急性期一般入院料4-6、地域包括委医療病棟、地域包括ケア病棟)に関する現状を確認する 

2025.07.01

令和7年6月13日、令和7年度第3回入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催され、包括期病床(地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟・急性期一般入院料4-6)・回復期リハビリテーション病棟・療養病棟入院料に関する令和6年度診療報酬改定後の現況確認と、診療報酬改定に向けた論点探しのための課題の明確化作業が行われている。ここでは、包括期病床に関する内容を重点的に確認していこう。

急性期からの移行が進む地域包括医療病棟だが…

DPC対象病院からの移行も進む地域包括委医療病棟だが、今回の議論では概ね厚労省がもくろんだ通りの展開となっているように見えるが、件数としては必ずしも多いとは言い難い(図1)

図1_地域包括医療病棟を届け出る前の入院料(※画像クリックで拡大表示)

なお、転換する病院の傾向としては地域包括医療病棟単独の病院はまだ少ないという結果も出ている(図2)。はじまったばかりなので、手さぐりになるのは仕方ないところだが、複数の機能があることで、最初の患者の受入れをどの機能で担うかなど難しい場面も出てくる。特に地域包括医療病棟は転倒割合の厳しい要件がある。

図2_地域包括医療病棟と合わせて算定されている入院料(※画像クリックで拡大表示)

昨年4月と本年4月の急性期一般入院料の届出件数の比較、本年3-4月の地域包括医療病棟の届出件数の推移をみてみる。地域包括医療病棟の直近の届出状況をみると、届出数にやや頭打ち感がある。また、近畿地方厚生局の管轄で1病院が届出をやめているのがわかる(図3、図4)。

図3_急性期一般入院料の推移(※画像クリックで拡大表示)

図4_地域包括医療病の届出、令和7年3月から4月の推移(※画像クリックで拡大表示)

地域包括医療病棟の件数が伸びない理由としては、様々な実績や転棟割合の要件があるなどのほかに休日リハビリテーションの提供が困難であることが挙げられている(図5)。届出を増やすために要件を緩和することも考えられるだろうが、それは質の低下などのリスクもありうる。

図5_地域包括医療病棟の届出で基準を満たすのが難しいもの(※画像クリックで拡大表示)

包括病床(急性期一般入院料4-6・地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟)の違いは?

今回の議論では地域包括医療病棟の他に急性期一般入院料4-6と地域包括ケア病棟を包括期と一括りにしているが、違いをみるために入院する患者像を年齢区分・認知症の有無・疾病傾向で確認されているが、疾病傾向では概ね一致している(図6)。その一方で、年齢と認知症の有無については急性期一般4-6と地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟で違いがあるようだ。とはいえ、あくまでも全体的な傾向に過ぎず、医療機関個別にみるとやはりばらつきがあるのは確か。地域包括医療病棟において、 医療機関ごとに、診療している疾患の内訳にはばらつきがあったこともわかっている。

ところで、包括期に期待されるのは高齢者救急だ。そこで、救急受入れの実績・傾向に着目してみると、次のような傾向がわかっている。

  • 精神疾患を有する患者の受入れが少ない。
  • 入院~退院までの ADLの変化は、地域包括医療病棟と急性期病棟とで大きな違いはない。
  • 救急受入や在宅等との連携に関する加算等(救急医療管理加算、在宅患者緊急入院診療加算、入退院支援加算、介護連携指導料、退院時共同指導料)の算定回数を医療機関単位で比較すると、急性期病棟をもつ病院、在宅療養後方支援病院、在宅療養支援病院でいずれも多い傾向にあった。
  • 地域包括医療病棟、地域包括ケアを有する200床以上の病院において、在宅療養後方支援病院である病院はそれ以外の病院と比較し、救急や在宅等との連携に係るいずれの加算等の算定件数も多かった。
  • 地域包括医療病棟を有する 200床未満の病院において、在宅療養支援病院である病院はそれ以外の病院と比較し、救急や在宅等との連携に係る加算等の算定件数が多かった。
  • 地域包括ケア病棟を有する 200床未満の病院においては、救急搬送の受入と救急医療管理加算について、在宅療養支援病院でない医療機関の算定件数が多かった。

在宅療養後方支援病院・在宅療養支援病院の届出がある病院の場合は体制が整備され、一定のノウハウを持っていること、地域での認知度が高いと考えられることなどが実績に大きく影響し、アドバンテージとなっていると考えられる。こうした在宅医療に関与する病院による届出に期待が集まる。

包括期と一括りにされ、その機能・役割をどのように整理していくか、入院患者の傾向・対応する疾病・連携の観点から議論されていくことも考えられるが、個人的には急性期一般4-6・地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟の3つを包括期病床として統合して、人員配置や病棟薬剤業務実施加算などの体制整備の加算を設けるとともに、DPCのように今後データが蓄積されていけば、実績や地域性に応じた係数を設定・加味していくことなども将来的には考えられるのではないだろうかと考える。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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