【医療業界動向コラム】第94回 生活習慣病管理料のポイント。医療DXの活用で負担軽減を。 

2024.06.11

※このコラムは2024年6月7日時点の情報をもとにしております。

令和6年度診療報酬改定がいよいよ実施されたところ。日常生活における食費、電気代などの値上げもやむを得ないという雰囲気の中、受診に関する話題も様々なメディアで取り上げられ、同様の雰囲気を醸し出しているが、生活習慣病管理料に関する話題は一般紙でも取り上げられ、これまでの経緯などを詳細に解説しているメディアもある。

特に気を付けておきたいのは200床未満病院における特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料へ移行のケースだ。患者の負担が上がる(診療報酬点数が高くなる)ため、懇切丁寧な説明が必要になるだろう。注目を集める生活習慣病管理料の算定について、改めてポイント整理して確認しておきたい。

〇生活習慣病管理料ⅠとⅡの選択は、患者ベースで考える

糖尿病患者を例にして、初診を含めて生活習慣病管理を6か月間診療する場合を見てみると、患者の状態(重症度だけではなく、経済も含む)に応じて、いろんなパターンが考えられる。

図1_糖尿患者を例に生活習慣病管理料の算定パターンを検討(※画像クリックで拡大表示)

生活習慣病の場合は、1回の診療で患者負担を考えるよりも、半年・1年単位での患者負担の違いを検討し、本人に説明をすることが必要だ。また、生活習慣病管理料ⅠとⅡの患者が同一医療機関内に混在してもよいことになっているので、診療時間のリソースを適正に配分するためのオンライン診療や長期処方の活用も視野に入れておきたい。

生活習慣病管理料Ⅰを算定するのは、主に病院や専門医のいる専門医療機関などが想定されていると思われる。

図2_生活習慣病管理料Ⅰのパターン(※画像クリックで拡大表示)

毎月HbA1cなどの検査が必要である場合やチーム医療が望ましいとされていること、外来栄養食事指導料や診療情報提供料などの連携にまつわる評価が包括されているためだ。
なお、これまでは月に1回の診療が必須となっていたが、今回の改定からは月に1回でなくても構わないこととなり、長期処方・リフィル処方箋に対する要望に応えることとなった。

図3_長期処方・リフィル処方箋への対応(※画像クリックで拡大表示)

そのため、長期処方をベースにして、3か月ごとに対面診療・検査を行う、ということもできる。生活習慣病管理料Ⅱよりも高い評価ではあるが、検査が包括されていること・長期処方ができることで、1回の診療における患者負担は高くなるが、対面診療の回数次第では、生活習慣病管理料Ⅱよりも年間で患者の負担を減らしながら管理ができる。長期処方の場合は対面診療の回数が減ることから、薬局と連携して服薬情報等提供料を通じた服薬フォローを依頼し、必要に応じて受診勧奨を行うなど薬局との連携がポイントになる。

生活習慣病管理料Ⅱは、従来の特定疾患療養管理料とほぼ同様の考え方だ。検査が包括されていないため、オンライン診療ができるのがメリットになる。

図4_生活習慣病管理料Ⅱのパターン(※画像クリックで拡大表示)

そのため、これまで特定疾患療養管理料で管理をしてきた一般診療所を主な対象としていると考えられる。外来栄養食事指導料や診療情報提供料など連携にまつわる項目の併算定が可能となっている。

なお、特定疾患療養管理料と異なり、月に1回しか算定ができない。基本的には、病状が安定している患者を対象としているともいえるが、生活習慣病以外の疾病で頻回な検査が必要な患者の場合などでは生活習慣病管理料Ⅱを選択することが有効だといえる。オンライン診療・長期処方への対応も可能であることから、重症患者の割合が増えてきた場合は、意識的にオンライン診療・長期処方の患者割合を高めるなど調整し、重症患者の対応時間を創り出すことや、在宅医療や専門外来などの新規の取組時間の創出なども考えていきたい。

〇療養計画書は初回に時間をかけること。電子カルテ情報共有サービスで効率化できる

生活習慣病管理料ⅠとⅡでは療養計画書の作成が必須で、初回は患者からの署名が必要だ(2回目以降は療養計画に大きな変更がなければ署名は不要)。生活習慣病管理料の算定を開始する初回に時間をかけて話をし、一般的に言えることについてはテンプレート化しつつ、患者の個別性が伝わるように、例えば患者の好物や利用する公共交通機関など具体的に盛り込んだ指導内容を計画へ反映して作ることが重要だ。オンライン診療・長期処方で管理をしていく場合は、服薬フォローをする薬局とも目標を共有していくことも考えたい。

なお、今回の診療報酬改定では処方箋料が引き下げられている。これは、オンライン資格確認や電子処方箋を活用することで業務負担が減ることを前提にしているためだと思われる。

また、生活習慣病管理料においても、電子カルテ情報共有サービスの利用で療養計画書の作成の負担を減らすことができるが、DXの基盤ができていることが前提となったものとなる。DXへの取組はもはや必須であるともいえる。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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