【名南経営の人事労務コラム】第18回 社有車管理の注意点

2023.03.23

 通常、医療機関や福祉施設においては、複数の社有車を有しており、利用者の送迎のみならず役所に書類を持参等する等の目的でそれらの車輛は用いられます。職員にとっては自分のマイカーを業務に用いないことでマイカーの摩耗等を回避することができるといった利点がありますが、逆の見方をすれば自分のマイカーではないということを理由に雑に扱われることもあり、そうした背景から社有車管理を巡るトラブルも少なからず発生しているのが実態です。

 社有車を巡る一番のトラブルは、損傷ではないかと考えられます。入れ替わり立ち代わり様々な職員が社有車を利用することで壁等に接触したものの誰にも報告することなく、気がついたときには社有車が傷だらけになっているということは残念ながら少なからずの施設で散見され、犯人捜しをしたことで職場の雰囲気が悪くなったというケースもあります。もちろん、職員も社会人としての倫理観を高く持っていれば損傷時に報告をするものですが、過去に誰も報告をしていなかったり、自分が損傷させた箇所以外にも損傷個所があって誰が損傷させたのかわからないということであれば、このまま黙っておこうという意識に駆られることもあるのではないかと思います。そして、複数の損傷個所がそのままの状態になっていれば、丁寧に取り扱おうという気持ちが低下しやすくなり、更に損傷個所が増えるといった悪循環に陥ることもあります。

 こうした問題が発生しやすい背景には、損傷をさせた職員がその損傷個所について費用弁償をさせられるといったことがあり、そのこと自体はやむを得ないと理解をするものの社有車を運転したがらない職員がいることによる不公平感であったり、安全運転をしてもプラスになるインセンティブは何もなく、運転をする職員が損をする、といったことがあります。そういった意味では、安全運転を心がけてくれる職員には「安全運転手当」であったり、社有車を運転したがらない職員が一定数存在するのであれば社有車を運転する職員には「運転手当」といった手当を支払うといった配慮が必要です。

 同時に、損傷を報告しないということであれば、社有車を運転する前に車両を一周回って損傷個所がないか確認をしたり、乗り終えた後も1周回って確認し、それを社有車使用のルールとすれば、未報告ということは最小限に抑制されます。

 また、社有車の管理については、違反時の罰金等の負担はどうするかといったこともルールで決めておかなければなりません。当然、その負担は運転者が負担すべきですが、「施設長から言われた道を通ったら切符を切られた」「主任から時間がないから急げと言われた」等といったような場合が生じると、責任転嫁される可能性もあり、お互いに嫌な気分になるものです。

 更には、運転における禁止事項の徹底化についても推進すべきでしょう。送迎の帰りに私的な立ち寄りはしてはならないとか、むやみにクラクションを鳴らさない等、倫理的な問題も絡めた禁止ルールはいろいろあるはずです。

 こうした様々なトラブル対策については、社有車管理規程としてルールをまとめ、職員に浸透させるとよいでしょう。

服部 英治氏

社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー

株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士

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