【令和5年度】サ高住の補助金制度とは?補助要件・上限額・申請手順を解説

2024.04.08

昨今、高齢化の進行に伴うニーズの高まりもあり、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)を開業する方が増加しています。

ただし、サ高住は土地購入や施設建設などによって、初期コストが高くなりやすい傾向があります。
そのため、収益を上げるなら、可能な限りコストを抑制しなければなりません。

本記事では、コスト抑制に役立つサ高住の補助金制度について、クリアしなければならない要件や申請手順などを解説します。
実際にサ高住の開業を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

【国土交通省】サ高住の補助金制度とは?

昨今は高齢化の進行により、介護施設のニーズが一層高まりました。
サ高住も平成23年に創設されて以降、登録件数が年々増加しています。

補助金制度は、サ高住のさらなる供給を実現するために、国土交通省が制定しました。

また、補助金制度とは別に、固定資産税や不動産取得税などの税制優遇措置も実施するなど、サ高住向けの支援をより拡充させてます。

「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」の対象となる15の要件

サ高住の補助金制度である「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」に申請するには、サ高住の登録基準と、15の要件をクリアしなければなりません。

本章ではサ高住の定義と、サービス付き高齢者向け住宅整備事業に設けられている要件について解説します。

補助金制度で認められるサ高住の定義

サ高住は一般的な賃貸住宅に近い介護施設ですが、その定義は細かく定められています。
サ高住の定義は以下のとおりです。

設備・床面積は原則25㎡以上
・構造や設備が一定の基準を満たしていること
・バリアフリー構造(廊下幅・段差解消・手すり設置)
サービス・安否確認サービス・生活相談サービスを提供していること
・ケアの専門家が少なくとも日中駐在していること
契約内容・長期入院を理由とした一方的な解約ができないなど、居住の安定が図られている
・敷金・家賃・サービス対価以外の金銭を徴収しない
・前払金において入居者保護が図られている
参照元:高齢者向け住まいについて|厚生労働省

サ高住の登録条件を満たすには、設備だけでなく、提供するサービスや契約の内容にも配慮しなければなりません。
もし登録基準を違反した場合は、登録を取り消されるリスクがあります。

サ高住の補助金制度が定める15の要件

サービス付き高齢者向け住宅整備事業では、申請にあたって細かく要件が定められており、その数は15に達します。
要件はそれぞれ以下のとおりです。

  1. 高齢者住まい法に基づく登録を受けたサ高住を供給する
  2. 家賃の限度額は所在市区町村に応じて設定した額(11.2~24.0万円/月)以下とする
  3. 入居者の家賃の額が、近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないように定められている
  4. 入居者からの家賃等の徴収方法が前払いによるものに限定されていない
  5. 高齢者住まい法に基づくサ高住として10年以上登録する
  6. 事業に要する資金調達が確実である
  7. 市町村のまちづくり方針と整合している
  8. 地方公共団体からサ高住に対して応急仮設住宅又は福祉避難所としての利用について要請があったときは、協定締結等の協議に応じる。また、発災時には、運営上支障がある等の特段の事情がある場合を除き、地方公共団体と協議の上、要配慮者(原則としてサ高住入居資格者)を受け入れる
  9. 新築のサ高住の立地が、土砂災害特別警戒区域及び浸水被害防止区域に原則該当しない
  10. 「立地適正化計画区域内の居住誘導区域外」かつ「災害レッドゾーン(災害危険区域、地すべり防止区域、土砂災害特別計画区域、急傾斜地崩壊危険区域又は浸水被害防止区域)内」で建設された住宅のうち、3戸以上のもので、都市再生特別措置法に基づく市町村長の勧告に従わなかった旨の公表にかかるものに原則該当しない
  11. 入居者が、任意の事業者による介護サービスを利用できる
  12. 情報提供システムの運営情報の提供、更新を行う
  13. サ高住運営事業者が遵守するべき事項として国が明示した内容を遵守する宣誓を行い、その旨を情報提供システムに開示する
  14. 原則として省エネ基準に適合する
  15. 市町村地域防災計画に位置づけられたサ高住について、避難計画を作成し、避難訓練を実施する

参照元:サービス付き高齢者向け住宅の登録制度の概要|国土交通省

サービス付き高齢者向け住宅整備事業は、災害リスクへの対応強化の側面もあるため、要件の一部には施設の災害対策の拡充を求めるものがあります。

そのため、施設の整備や設備の導入だけでは満たせない要件がある点には注意しましょう。

【タイプ別】サ高住の補助金制度はいくらまで?

サ高住の補助金制度は、対象によって補助の上限が異なります。
また、同じ対象でも規模や工事の種類によって上限が異なる場合があるため、事前に必ず確認しましょう。

1.住宅

サ高住の施設となる住宅に対する補助金は、新築・改修で異なります。
それぞれの補助金の内容は以下のとおりです。

【新築】

床面積補助率限度額補助対象
30㎡以上1/10135万円/戸・全戸数の2割を上限に適用
・ZEH相当水準の整備を実施する場合は限度額を1.2倍
25㎡以上1/10120万円/戸・ZEH相当水準の整備を実施する場合は限度額を1.2倍
・車椅子使用者に必要な空間を確保した便所や浴室等を設ける場合は10万円/戸を上乗せ
25㎡未満1/1070万円/戸・ZEH相当水準の整備を実施する場合は限度額を1.2倍
・車椅子使用者に必要な空間を確保した便所や浴室等を設ける場合は10万円/戸を上乗せ
参照元:サービス付き高齢者向け住宅の登録制度の概要|国土交通省

【改修】

補助率限度額補助対象
1/3195万円/戸・共用部分及び、バリアフリー化に係る工事
・用途変更のために建築基準法等の法令に適合させるために必要となる構造や設備の改良に係る工事
参照元:サービス付き高齢者向け住宅の登録制度の概要|国土交通省

新築と比較すると改修の方が補助金の上限が高いですが、以下の工事のみが対象です。

  • 階段室型の共同住宅を活用した共用廊下の設置
  • 戸建住宅や事務所などを活用した用途変更に伴う建築基準法等の法令適合のための工事
  • 車椅子使用者に必要な空間を確保した便所や浴室等を設ける
  • 省エネ性能の向上のための構造・設備の改良

上記4点の工事以外は新築と同じ上限が適用されます。

2.高齢者生活支援施設

サ高住で介護サービスを提供する高齢者生活支援施設も、補助金の対象です。
高齢者生活支援施設は、新築・改修それぞれで補助率が異なります。

工事の種類補助率限度額
改修・既設改修1/31000万円/施設
新築1/101000万円/施設
参照元:サービス付き高齢者向け住宅の登録制度の概要|国土交通省

3.再エネ等設備

再エネ等設備とは、再生エネルギーを活用した設備を指します。
補助金の対象となる再エネ等設備は、以下の要件を満たしていなければなりません。

・発電した全量が自家消費
・災害後の停電時に電源が確保できる仕様
・やむを得ない場合を除き、災害時に地域住民へ電源を提供する

なお、再エネ等設備の補助金は以下のように設定されています。

設備の種類補助率限度額
太陽光パネル・蓄電池1/10合わせて4万円/戸
太陽熱温水器1/102万円/戸
参照元:サービス付き高齢者向け住宅の登録制度の概要|国土交通省

サ高住の補助金制度の申請手順

サ高住の補助金制度の申請は、以下のように少々複雑な工程です。
本章では交付申請者(画像:青側)に着目し、申請手順を解説します。

出典元:令和5年度サービス付き高齢者向け住宅整備事業の補助申請に係る事前審査について

1.事前審査願の提出交付申請書の提出

事前審査とは、補助金の本申請の前に行う補助要件の審査です。
本申請の要件にある、「サービス付き高齢者向け住宅としての登録」「市区町村への意見聴取の手続き」「金融機関からの融資の内諾」の手続きが終わる前に申請できます。

事前審査で本申請に必要な一部の書類を先に提出すれば、本申請に必要な添付書類を減らせます。

2.交付申請書の提出

提出交付申請書をはじめとする必要書類は、サービス付き高齢者向け住宅整備事業事務局のWebサイトでダウンロードが可能です。

なお、添付書類としてサ高住の登録通知の写しや工事内訳書などが必要です。
本申請・事前審査に必要な書類はそれぞれ以下のとおりです。

出典元:令和5年度サービス付き高齢者向け住宅整備事業の補助申請に係る事前審査について

3.事業着手

審査を無事に通過し、交付決定通知書が届いたら事業に着手できます。
事業に着手している間も、事務局とは事業スケジュールの報告・完了実績報告の事前相談などをしなければなりません。

4.完了実績報告書の提出

工事が完了したら、完了実績報告書を事務局に提出します。
報告内容についても審査が行われるため、正確な内容の報告書を作成しましょう。

5.補助金の受領

完了実績報告書の審査をクリアし、補助金額確定通知書が届いたら補助金を受領できます。
補助金は通知書が到着してから約2か月後に、登録した口座へ振り込まれます。

6.運営状況・計画変更等の報告

もし申請した事業計画や、工事の内容などに変更が生じた場合、必ず事務局に報告し、知事の承認を得なければなりません。
ただし、補助金の額に変更が生じない程度の変更であれば、知事の承認は不要です。

【注意】サ高住の補助金が受けられないケース

サ高住の補助金は、特定の要件に該当すると申請対象外になるケースがあります。
申請対象外になる要件は以下のとおりです。

  • 1戸あたりの家賃が月額30万円以上の住居
  • 事業目的の達成に必要な範囲を逸脱する華美、又は過大な設備

家賃が高額だったり、過度に豪華な施設を建設すると補助金の申請ができません。
補助金の申請を行う際は、要件に該当しないか事業内容を確認しましょう。

【番外編】サ高住が対象の税制優遇・融資制度

サ高住を開業するなら、補助金制度だけでなく、税制優遇措置や融資制度も活用できます。
本章ではサ高住開業の際に役立つ税制優遇・融資制度について解説します。

「サービス付き高齢者向け住宅供給促進税制」の概要

サ高住向けの税制優遇措置は、固定資産税と不動産取得税を対象にしています。
それぞれの優遇措置の内容は以下のとおりです。

参照元:サービス付き高齢者向け住宅の登録制度の概要|国土交通省

固定資産税

固定資産税の優遇措置は、1戸当たり120㎡相当部分につき、5年間税額の2/3を参酌・1/2以上5/6以下の範囲内で軽減されます。
市町村が条例で定める割合が適用されるため、事前に自治体の条例を確認しましょう。

なお、固定資産税の優遇措置を受けるなら、以下の要件に適合させなければなりません。

  • 床面積が1戸につき30㎡以上160㎡以下。(共用部分含む。一般新築特例は1戸につき40㎡以上280㎡以下)
  • 戸数が10戸以上
  • 国からサービス付き高齢者向け住宅に対する建設費補助を受けている
  • 主要構造部が耐火構造、又は準耐火構造

不動産取得税

不動産取得税の優遇措置は、家屋・土地でそれぞれ内容が異なります。
不動産取得税の優遇措置の内訳は、以下のとおりです。

家屋課税標準から1戸につき1200万円の控除
土地いずれか大きい方の金額を控除
・4万5000円
・土地の評価額/㎡×1/2(特例負担調整措置)×家屋の床面積の2倍(200㎡を限度)×3%

なお、不動産取得税の優遇措置の要件は、固定資産税とおおむね同じです。
ただし床面積については、一般新築特例で1戸につき40㎡以上240㎡以下と規定されています。

「サービス付き高齢者向け賃貸住宅融資」の概要

サ高住の建設向けの融資も、開業に役立てられます。

「サービス付き高齢者向け賃貸住宅融資」は最大35年まで返済期間を設定できるうえに、長期固定金利を採用しています。
加えて元金据置期間を利用できるため、当初1年間の返済負担の軽減も可能です。

建設事業費の最大100%まで融資を受けられますが、申請するには利用条件に加え、技術基準や物件検査をクリアしければなりません。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

「本当は18㎡のサ高住に補助金は出したくない」
ある国交省関係者の言動です(非公式)。この言葉からもわかる通り、国交省としては、25㎡以上というサ高住の基準を崩したくはないのです。しかしながら、実際にはサ高住の実に約7割が18㎡程度の面積となっています。
なぜでしょうか?非常に複雑な事情も孕んでいるのですが、端的に言ってしまえば『収益化』というキーワードに集約されるでしょう。25㎡の居室にするよりも、18㎡の方が当然多くの室数を確保することができます。また、サ高住の7割以上が訪問介護事業所等のサービス事業所を併設しています。これは、建築コストが高騰していることにより、家賃等建物に付随する収入だけでは、経営が難しいことが大きな要因です。サ高住経営は特にコンセプトメイクが非常に重要なのです。

サ高住の開業をお考えの方へ

サ高住の経営は初期投資のコストの高さが課題でしたが、解説した補助金に加え、税制優遇措置や専用の融資を活用すれば、軽減が可能です。

ただし、サ高住は初期投資だけでなく、開業以降の経営でも無視できない課題が山積しています。
とりわけ、昨今の介護業界を悩ませている人手不足は最たるものでしょう。

たとえ入居者が集まったとしても、適切な人数のスタッフがいなければ、日々の業務を回すことすら困難です。
そのため、限られた人数でも現場を回せるように業務の効率化を推進する施設が増加しています。

弊社「ワイズマン」では、サ高住を含め、さまざまな介護施設の業務を効率化するソリューションを提供している企業です。
介護ソフト「ワイズマンシステムSP」を活用すれば、事務作業の効率化や、データ活用によるサービスの品質向上につながります。

サ高住の開業にあわせ、ぜひ介護ソフトの導入をご検討ください。

サ高住の補助金を活用してスムーズな開業を

サ高住の補助金は、適切に活用すれば初期投資のコストを抑えつつ、スムーズな開業を実現できます。
しかし、補助金の申請にはさまざまな要件をクリアしなければならないため、事前に必ず確認しましょう。

また、補助金だけでなく、税制優遇措置やサ高住を対象にした融資も開業に役立てられます。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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