有料老人ホームの補助金制度|対象者や条件などを解説【2025年最新】
2025.05.25

高齢化が進む日本において、有料老人ホームの需要は高まる一方です。
しかし、有料老人ホームの開設や運営には多額の費用がかかり、資金繰りに悩む事業者も少なくありません。
本記事では、有料老人ホームの運営を支援するさまざまな補助金制度について、対象者・条件・申請方法などを詳しく解説します。
補助金制度を賢く活用することで、資金繰りの負担を軽減し、より質の高い介護サービスを提供できます。
ぜひ本記事を参考にしてください。
なお、本記事で紹介する補助金制度は一般的に利用されているものです。
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有料老人ホームとは

有料老人ホームとは、高齢者を入居させ、入浴・排泄・食事の介護・洗濯・家事・健康管理などのサービスを提供する施設です。
介護保険法上の特定施設入居者生活介護の指定を受けている施設では、介護サービスも提供されます。
本章では有料老人ホームにおける、種類や費用などについて解説します。
有料老人ホームの種類
有料老人ホームは、大きく分けて以下の3種類があります。
介護付き有料老人ホーム | 「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた有料老人ホーム。介護スタッフが24時間常駐しており、身体介護や、生活支援・機能訓練などのサービスを提供します。 |
住宅型有料老人ホーム | 食事・洗濯・掃除などの生活支援サービスを提供する施設。自立した生活を送れる利用者や、軽度の介護が必要な利用者向けの施設であり、介護サービスは提供していません。 |
健康型有料老人ホーム | 自立した高齢者向けの施設。健康増進を目指すサービスやレクリエーションなどを提供します。介護サービスは提供されておらず、要介護状態となった際は退去が必要。 |
種類によって、運営に必要な費用は異なります。
例えば、介護付き有料老人ホームは人員基準などの関連法律を遵守しなければならず、介護サービスを提供する専任の職員などを配置する必要があります。
その結果、人件費や設備費などのコストが高騰するリスクに注意が必要です。
有料老人ホームにかかる費用
有料老人ホームの運営にかかる費用は、提供されるサービスや施設の規模などによって大きく異なります。
想定される費用には以下のようなものがあります。
- 人件費
- 水道光熱費
- 食費
- 管理費
- 介護サービス費
- 備品購入費
- 設備費
上記はあくまでランニングコストに該当する費用です。
有料老人ホームを開業する際に必要な初期費用も含めると、トータルで数億円程度の費用が発生するケースも珍しくありません。
そのため、有料老人ホームを運営するうえでも、安定的な資金調達方法は必ず用意する必要があります。
有料老人ホームの収支状況
有料老人ホームの収支は、入居率や介護サービスの提供状況、人件費などによって大きく変動します。
一般的に、有料老人ホームは入居率が高いほど、介護サービスの利用者が多いほど、収益は増加します。
しかし、人件費や光熱費などのコストもかかるため、収益を最大化するには効率的な運営が不可欠です。
有料老人ホームの収支を改善するためには、以下の点が重要です。
入居率の向上 | 魅力的な施設づくりや積極的な広報活動により、入居希望者を増やすことが重要です。 |
介護サービスの質の向上 | 質の高い介護サービスの提供によって、利用者の満足度を高め、長期的な利用につなげることが重要です。 |
コスト削減 | 光熱費や人件費などのコストを削減することで、収益性を向上できます。 |
また、近年では、介護ロボットやICT(情報通信技術)を導入することで、業務効率化や人手不足の解消を図る動きも広がっています。
より質の高い介護サービスを提供しながら、コスト削減も実現するうえでも、上記の取り組みは不可欠です。
有料老人ホームの補助金とは

有料老人ホームの開設や運営には多額の費用がかかるため、国や地方自治体はさまざまな補助金制度を設けています。
本章では、有料老人ホームの補助金について、基本的な知識を解説します。
補助金と助成金の違い
補助金と助成金は、どちらも国や地方自治体から交付される資金ですが、その性質には違いがあります。
補助金 | 助成金 | |
目的 | 政策目標の達成を支援 | 特定の条件を満たす事業者を支援 |
対象 | 要件に合致する事業者 | 要件に合致する事業者 |
審査 | 審査あり(採択件数が限られる) | 審査あり(要件を満たせば受給できる可能性が高い) |
支給 | 後払いが多い | 後払いが多い |
補助金は、国の政策目標に沿った事業を支援するために交付されるもので、審査があり、採択件数が限られる場合があります。
一方、助成金は、特定の条件を満たす事業者を支援するために交付されるものです。
いずれも要件を満たせば受給できる可能性がありますが、どちらも後払いとなるケースが多い点には注意しましょう。
厚生労働省の補助金
厚生労働省は、介護サービスの質の向上や、介護職員の処遇改善などを目的としたさまざまな補助金制度を設けています。
代表的な補助金としては、以下のようなものがあります。
- 地域医療介護総合確保基金
- 介護ロボット導入支援事業
上記の補助金は、介護施設の整備・介護ロボットの導入などに活用できます。
各補助金の詳細な内容や申請方法については、厚生労働省のホームページで確認できるので、利用する際は必ずチェックしましょう。
国土交通省の補助金
国土交通省は、高齢者が安心して暮らせる住環境の整備を目的とした補助金制度を設けています。
特に、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の整備に対する補助金が充実している点が特徴です。
サ高住は、バリアフリー構造で、安否確認や生活相談などのサービスを提供する高齢者向けの賃貸住宅です。
国土交通省の補助金を活用することで、サ高住の建設費や改修費の一部を補助できます。
サ高住の整備は、高齢者の住まいの選択肢を広げ、地域包括ケアシステムの構築にも貢献します。
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有料老人ホームの補助金の種類

本章では、代表的な補助金の種類について、以下のものを解説します。
- 各自治体の補助金
- サ高住向けの補助金
- 税制優遇措置
- 地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金
- 介護テクノロジー導入支援事業
- エイジフレンドリー補助金
- 働き方改革推進支援助成金
- 介護テクノロジー導入支援事業補助金
いずれの補助金も、有料老人ホームの経営に役立つものです。
実際に活用する補助金を探す際の参考にしてください。
各自治体の補助金
多くの自治体では、地域の実情に合わせた独自の補助金制度を設けています。
これらの補助金は、施設の開設費用・運営費用・人材育成費用など、幅広い用途に利用できるものです。
自治体の補助金には以下のようなものがあります。
ただし、補助金の名称・支給要件・金額などは自治体によって大きく異なるため、必ず所在地の自治体に確認しましょう。
サ高住向けの補助金
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者向けの賃貸住宅であり、有料老人ホームとは別に、サ高住独自の補助金制度があります。
サ高住向けの補助金は、主に施設の建設費用や改修費用を支援するものが多く、バリアフリー化や省エネ化などの特定の要件を満たす場合に支給されます。
サ高住向けの補助金で代表的なものが「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」です。
サービス付き高齢者向け住宅整備事業は主に施設の建設費用や改修費用を支援するもので、バリアフリー化や省エネ化などの特定の要件を満たす場合に支給されることがあります。
参照:サービス付き高齢者向け住宅整備事業|スマートウェルネス住宅等推進事業
税制優遇措置
補助金とは異なりますが、有料老人ホームの運営事業者は、税制上の優遇措置を受けられる場合があるため、積極的に活用しましょう。
有料老人ホームに限らず、社会福祉法人は法人税の優遇措置を受けられます。
さらに収益事業の収益を非収益事業に支出した際、その支出を寄付金として損金算入できる「みなし寄付金制度」も有用です。
みなし寄付金制度を活用すれば、損金加入によって法人税を削減できます。
なお、サ高住の場合は固定資産税と不動産取得税で優遇措置を受けられます。
それぞれの内容は以下のとおりです。
参照:サービス付き高齢者向け住宅供給促進税制の概要|国土交通省
なお、サ高住の税制優遇措置は国土交通省の所管です。
税制優遇措置は、施設の種別・規模・地域などによって適用条件が異なるため、税理士などの専門家にご相談ください。
地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金
地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金は、高齢者介護施設等の整備を支援する国の交付金です。
この交付金は、施設のバリアフリー化・耐震化・防災対策・感染症対策などを目的とした改修や整備に利用できます。
交付金の対象となる事業や要件は年度によって異なるため、厚生労働省の情報を確認するようにしましょう。
参照:地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金および地域介護・福祉空間 整備推進交付金の交付について|厚生労働省
介護テクノロジー導入支援事業
介護テクノロジー導入支援事業は、介護現場におけるテクノロジーの活用を促進し、介護職員の負担軽減やサービスの質向上を図ることを目的とした補助金制度です。
介護ロボットやICT(情報通信技術)を活用した見守りシステム・記録システムなどの導入費用が補助されます。
これにより、業務効率化や省力化を図り、より質の高い介護サービス提供を実現できる可能性が高まります。
エイジフレンドリー補助金
エイジフレンドリー補助金は、高齢者が安全・安心に働ける職場環境の整備を支援する国の補助金制度です。
介護施設においては、高齢の職員が働きやすいように、作業環境の改善や安全対策の実施、健康管理体制の強化などに活用できます。
高齢者の就労促進と、経験豊富な人材の活用を目指すうえで、有効な補助金です。
自施設の介護職員に高齢者が多い場合は、積極的に利用しましょう。
働き方改革推進支援助成金
働き方改革推進支援助成金は、介護事業所における労働時間短縮・有給休暇取得促進・生産性向上などの取り組みを支援する国の助成金制度です。
この助成金を活用することで、介護職員の労働環境を改善し、離職率の低下や人材確保につなげられます。
働き方改革は補助金を得るだけでなく、自施設の職場環境を改善するうえでも重要です。
働きやすい環境を実現すれば、介護職員の定着率の向上も期待できます。
介護施設等の大規模修繕の際にあわせて行う介護ロボット・ICTの導入支援
介護施設等の大規模修繕を行う際に、介護ロボットやICTを導入する場合、その費用の一部を補助する制度です。
この制度は、施設の機能強化と効率的な運営を支援することを目的としています。
施設の老朽化対策と同時に、最新テクノロジーを導入することで、介護職員の負担軽減とサービスの質向上を両立させられます。
参照:介護施設等の大規模修繕の際にあわせて行う介護ロボット・ICTの導入支援|横浜市公式サイト
有料老人ホームの補助金を利用する際の注意点

有料老人ホームの運営において、補助金は大きな助けとなりますが、利用する際には以下の注意点を意識しましょう。
- 業務体制を整備する
- 補助金に頼り過ぎない
- 不正受給は絶対に避ける
いずれも、適切に補助金を運用するうえで重要なポイントです。
それぞれ順番に解説します。
業務体制を整備する
補助金は、要件を満たす適切な業務体制が整っていることが前提で支給されます。
人員配置基準を満たしているか、介護サービスの質を維持するための研修制度が確立されているかなど、日々の業務体制を見直しましょう。
特に特定の設備の導入を対象としていたり、何かしらの施策を実行したりする必要がある補助金の場合、業務体制を全体的に見直す可能性があります。
業務プロセスに影響を与える事態も想定されるため、現場の意見も取り入れながら実施しましょう。
また、記録体制の整備も重要です。
補助金の申請や実績報告には、詳細な記録が必要となるため、正確な記録を残せる体制を構築しましょう。
これらの記録は、補助金の使途が適切であったことを証明するために不可欠です。
補助金を申請する際に透明性を担保するためにも、記録を適切に作成し、保存する体制を整えましょう。
補助金に頼り過ぎない
補助金はあくまで一時的な支援であり、恒久的な収入源ではありません。
補助金に過度に依存すると、補助金が打ち切られた際に経営が破綻する危険性があります。
そもそも補助金は要件を満たさなければ取得できないものであり、安定的な資金調達方法とはいえません。
経営状況や業務体制が変化すると、要件を満たせず、補助金が打ち切られるリスクがあります。
補助金は、あくまで持続的な経営改善や顧客サービスの向上を達成するための手段として認識し、長期的な視野に立った経営戦略を策定しましょう。
入居率の着実な向上・サービスの品質向上・コストの徹底的な削減など、補助金に頼らずとも安定した経営が可能な体制を構築するための取り組みを積極的に推進することが重要です。
補助金は一時的な助けに過ぎず、自立した経営基盤を確立することこそが重要です。
将来を見据え、補助金がなくなった後も継続的に成長できるような強固な組織を作り上げることが求められます。
不正受給は絶対に避ける
不正受給は、法律で厳しく禁じられている行為です。
虚偽の申請や報告・不正な経費計上など、不正な手段で補助金を受け取った場合、補助金の返還だけでなく、行政処分や刑事罰が科せられる可能性もあります。
また、不正受給が発覚した場合、施設の信用を大きく損ない、運営に深刻な影響を与えます。
補助金の申請や使用にあたっては、法令やルールを遵守し、透明性の高い運営を心がけましょう。
少しでも不明な点があれば、行政機関や専門家(社会保険労務士や中小企業診断士など)に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。

高齢化が進む日本において、有料老人ホームの需要は高まる一方ですが、開設・運営には多額の費用がかかり、資金繰りが課題となります。本記事が示す通り、国や地方自治体による多様な補助金制度は、施設の整備、介護テクノロジー導入、労働環境改善など、多岐にわたる側面から支援を提供する有効な手段です。これらの補助金を賢く活用することは、資金負担を軽減し、結果として質の高い介護サービス提供に繋がると言えます。ただし、補助金はあくまで一時的な支援であり、これに過度に依存することは避けるべきです。補助金を受けるための適切な業務体制の整備、補助金に頼らない自立した経営基盤の構築、そして不正受給の厳格な回避が極めて重要です。補助金は長期的な経営戦略の一環として、計画的に活用されるべきツールと認識することが肝要です。
なお、株式会社ワイズマンでは「介護・福祉向け製品総合パンフレット」を無料で配布中です。
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有料老人ホームの補助金制度を賢く活用しよう

有料老人ホームの運営において、補助金制度は経営を安定させ、より質の高いサービスを提供するための重要な要素です。
しかし、補助金は申請すれば必ずもらえるものではなく、要件を満たす必要があったり、業務体制を整備する必要があったりと、注意すべき点もいくつか存在します。
また、補助金はあくまで資金調達方法の一種であり、経営基盤を担うものではありません。
過度に依存せず、適切に運用するのを心がけましょう。
補助金制度を賢く活用し、健全な施設運営を目指しましょう。

監修:梅沢 佳裕
人材開発アドバイザー
介護福祉士養成校の助教員を経て、特養、在宅介護支援センター相談員を歴任。その後、デイサービスやグループホーム等の立ち上げに関わり、自らもケアマネジャー、施設長となる。2008年に介護コンサルティング事業を立ち上げ、介護職・生活相談員・ケアマネジャーなど実務者への人材育成に携わる。その後、日本福祉大学助教、健康科学大学 准教授を経て、ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表として多数の研修講師を務める。社会福祉士、介護支援専門員、アンガーマネジメント・ファシリテーターほか。