【訪問看護】サービス提供体制強化加算|算定要件のポイントを解説

2024.05.16

「サービス提供体制強化加算」は、令和3年度に要件が見直された比較的新しい加算制度です。
しかし、算定率は4割程度と低く、算定できていない事業所が多い状況です。

本記事では、訪問看護サービスにおける提供体制強化加算について、算定要件や注意事項を解説します。
これまで算定できていない場合は、要件をしっかり把握して、算定の参考にしてください。

訪問看護事業所のサービス提供体制強化加算とは?

訪問看護事業所における「サービス提供体制強化加算」とは、サービスの質を一定以上に保つ事業所を評価するための加算制度です。

提供体制強化加算は、訪問看護サービスの質の向上や、訪問看護スタッフのキャリアアップを目的に設立されました。
加算制度の対象は訪問看護事業所ですが、介護保険の加算制度に区分されます。

ここでは、加算の対象施設や種類、単位数など、より詳しい基礎知識を解説します。

サービス提供体制強化加算の対象施設と種類・単位

サービス提供体制強化加算は、要件の違いで(Ⅰ)と(Ⅱ)に分かれています。
また、対象施設によって、以下のように単位数が異なります。

施設(Ⅰ)の単位数(Ⅱ)の単位数
訪問看護ステーション6単位 / 回3単位 / 回 
定期巡回・随時対応訪問介護事業所と連携する場合50単位 / 月25単位 / 月

サービス提供体制強化加算の取得状況

訪問看護事業所でのサービス提供体制強化加算の取得率は、約40%です。

下記の図は訪問看護事業所が算定している加算要件の算定率です。

引用:社保審-介護給付費分科会|厚生労働省

訪問看護事業所でよく聞かれる「特別管理加算」は約70%もの事業所が算定しています。

一方で、サービス提供体制強化加算については約40%と、それほど高くありません。
しかし、平成29年から令和元年までの4年間でもわずかですが、微増していることがわかります。

サービス提供体制強化加算の算定要件

サービス提供体制強化加算の算定要件は以下の4つです。

  • 個別の研修の実施
  • 定期的に会議を開催
  • 健康診断
  • スタッフの勤続年数(3年または7年以上)と割合

それぞれの要件の詳細について解説します。

研修の実施

要件を満たすには、サービス提供者にあたる看護師に対して、研修を実施しなければいけません。

研修では、看護師ごとに個別の研修計画を作成します。
この計画にもとづいた研修を実施していること、または、実施予定があることが要件です。

一般的に、研修計画には以下の内容を盛り込みます。

  • 研修目標
  • 研修の内容
  • 研修時期、時間

定期的に会議を開催

利用者に関する情報の共有、サービス提供時における留意事項などを伝達する会議を定期的に開催します。
定期的な開催というのは、おおむね1カ月に1回以上を意味します。

また、利用者に関する情報とは主に、以下のような項目です。

  • 利用者のADLや意欲
  • 利用者からのサービスへの要望
  • 利用者とその家族の環境
  • 利用者の近況
  • サービス提供時に必要な配慮 など

会議には、サービス提供にあたるすべてのスタッフ(看護師)が参加しなければいけません。
しかし、全員が一堂に出席する必要はなく、グループ単位での実施も可能です。

また、看護師の技術向上のための指導なども会議の目的に含まれます。
会議の実施記録も必要なため、開催時には会議の概要を記録に残しておきましょう。

健康診断の実施

訪問看護事業所のすべての看護師に、健康診断の実施が定められています。
労働安全衛生法による「常時使用する労働者」に該当しない場合であっても、健康診断の実施が必要です。

健康診断の開催頻度は、少なくとも1年に1回以上です。
なお、費用は事業者側で負担することとしています。

また、新たに加算算定を行う際には、健康診断の実施が1年以内に計画されていることが必要です。

看護師の30%以上が勤続年数3年もしくは7年

サービス提供体制強化加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の要件で異なるのは、看護師の勤続年数です。

サービス提供体制強化加算(Ⅰ)では、「看護師の総数のうち30%以上を、勤続年数7年以上の者が占める」とされています。
一方で、サービス提供体制強化加算(Ⅱ)の要件は、「看護師の総数のうち30%以上を、勤続年数3年以上の者が占める」となっています。

この勤続年数は、加算対象の事業所に限られません。
例えば、同一法人内の病院や社会福祉施設等で従事した経験があれば、この期間も勤続年数に含みます。

また、産休・育休を経たスタッフであっても、雇用の関係が続いている期間は勤続年数としてカウントします。

算定要件についての注意事項

算定要件については下記の注意事項に気を付けましょう。

  • 勤続年数は前月末時点で計算
  • 会議はオンライン開催も可

加算要件に大きく関わる部分のため、正しく把握しておきましょう。

勤続年数は前月末時点で計算

サービス提供体制強化加算における勤続年数は、前月の末時点で換算します。
介護サービス事業所や病院だけでなく、介護予防訪問看護でのサービス提供も経験年数に含まれます。

また、職員の割合は、前年度の平均を常勤換算法を用いて計算しましょう。
なお、前年度の3月は割合の算出時には含まれません。

事業開始後6カ月未満の場合には、届出を行う前月から直近3カ月の割合で算出します。
この場合には、届出をおこなった月以降、毎月職員の割合を計算しなければいけません。

要件にある割合を下回る場合には、即座に加算取り下げの届出を申請しましょう。

会議はオンライン開催も可

「定期的な会議の開催」は、テレビ電話などを用いたオンライン開催も認められています。
ただし、個人情報の取扱いやシステムのセキュリティ面においては、厚生労働省が指定するガイドラインを遵守しなければなりません。

特に、個人情報の漏えいを防ぐために、使用する端末機器ではスマートフォンやパソコンとの接続を制限するなどの措置も必要です。

参照:「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」|厚生労働省

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

訪問看護サービス提供体制強化加算を算定するにあたって、もっともネックとなる要件は勤続年数でしょう。ここでいう勤続年数は、看護師としての経験年数ではなく、現在勤務している訪問看護ステーション、及び、同一法人で経営するその他の介護サービス事業所や病院等において、利用者様に直接サービスを提供する職員として勤務した通算年数となっています。つまり、立ち上げたばかりの法人の場合、算定不可能な要件なのです。2024年介護報酬改定は1.59%のプラス改定となりましたが、訪問看護の基本報酬はわずか1~3単位増に留まっています。今後も基本報酬が劇的に増加することはまずあり得ないでしょう。本加算のように物理的に算定不可能なケースは仕方がありませんが、今後加算算定の重要性はさらに増していくため確実に算定していきましょう。

サービス提供体制強化加算の取得にシステム活用もおすすめ

サービス提供体制強化加算をはじめ、訪問看護の加算を取得するのであれば、システムの導入を検討してみるのもおすすめです。
訪問看護事業所向けのシステムでは、訪問看護指示書や利用者一覧表などを作成できます。

この他、訪問看護事業所向けシステムの導入には、業務の効率化や加算の適正化といったメリットもあります。

利用者情報をスムーズに共有可能

システムを導入すれば、情報共有を円滑化できます。

一般的に、会議などで利用者情報を共有する際は、資料を作成する必要がありスタッフの負担となるでしょう。
システムを導入していれば各端末から情報を確認できるため、資料を作成する手間を省けます。

なお、普段の業務でも、訪問記録や申し送り事項をタイムリーに共有可能です。

加算数を自動計算できる

加算の算出を手作業で行うとすると、算定要件について適切な知識を持った職員が必要です。
また、多くの手間がかかるため、従業員への負担になる恐れがあります。

その点、システムを活用すれば必要事項を入力するだけで自動的に計算ができるため、業務を効率化できます。

弊社の「訪問看護ステーション管理システムSP」では、加算の自動算出や利用者への請求なども一括で処理できます。

まとめ

訪問看護の提供体制強化加算は、要件自体はそれほど厳しい加算制度ではありません。
適切に算出を行い、事業所運営に役立てるべき加算制度の1つと言えます。

しかし、定期的な会議や研修が、スタッフにとって負担となってしまわないよう工夫が必要です。

また提供体制強化加算の本来の目的は、看護サービスの質の向上です。
スムーズな会議や研修を実施するために、システムの導入を検討してみてください。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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