【医療業界動向コラム】第189回 新型コロナウィルス治療薬の扱いの見直しと地域医療連携

2026.06.02

抗ウイルス剤(新型コロナウィルス感染症の効能又は効果を有するものに限る)に係る取扱いについて、令和8年5月 31 日をもって終了し、以降は包括対象となることになる。すなわち、地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟、療養病棟などの入院料に薬剤料が包括される病棟において新型コロナウィルス治療薬は6月1日以降、包括評価されるということになる(図1)。その一方で、DPC対象病院においては「新型コロナウィルス感染症」のDPCコードが新設されることとなった。介護保険施設や在宅からの受け入れ先としてはDPC対象病院を、DPC対象病棟やDPC対象外の一般病棟を有する場合は院内転棟をしていくことになる。

図1 入院料に包括されない除外薬剤・注釈の範囲
   厚生労働省 令和8年度診療報酬改定説明会資料(クリックて拡大表示)

DPCコードの確認と計算例、ワクチン接種勧奨を地域医療連携の中で

新設されたDPCコードを確認すると、経口薬や点滴静注を使用する場合、人工呼吸器や人工心肺を使用する場合など6つのパターンがある(図2)。

図2 新型コロナウィルス感染症のDPCコード
厚生労働省 診断群分類(DPC)電子点数表を参照してHCナレッジ合同会社にて作成(クリックして拡大表示)

この中で、経口薬を使用する場合と点滴静注を使用する場合で比較をしてみる。いずれも7日間入院、医療機関別係数を1.5と仮に設定している(図3)。おそらくDPC対象病院では、医療依存度が高い状態の患者が多くなると思われるため、点滴静注を使用するケースが多くなると考えられる。計算例では、7日入院で70,553点となる。なお、薬剤費は28万円くらいになると考えられる。一方で、経口薬を使用する場合も計算してみると、34,669点となる。なお、薬剤費は9,9万円くらいになると考えられる。包括内検査・処置や人件費、薬剤の保管コスト、そして入院の長期化のリスクも踏まえて考えると、経口薬が可能であれば優先して考えておくことも必要だ。

図3 DPCの計算例
HCナレッジ合同会社作成(クリックして拡大表示)

令和8年度診療報酬改定では、電子的診療情報連携体制整備加算や在宅療養支援病院・在宅療養支援診療所、機能強化加算、腎代替療法診療体制充実加算においてBCPの策定が必須となり、薬剤や診療材料の適正な備蓄と地域内での相互融通などの取組も必要となってくることを意識しておきたい。本年3月30日に厚生労働省保険局医療介護連携政策課より事務連絡「地域で協働して作成する推奨薬リスト(地域フォーミュラリ)について(周知)」が発出され、地域でフォーミュラリを策定を検討する場作りが求められている。自院だけではなく、地域全体にも目を向けた適正な対応と新型コロナウィルス感染症への対応方針を進めるようにしたい。

なお、新型コロナウィルスワクチンの接種率が低下していることが伝えられている。ワクチン接種をすることで発症・重症化を防ぐことができ、医療従事者の負担の軽減にもつながる。退院時に新型コロナウィルスワクチン以外のワクチンについても未接種の患者に対する案内と共に地域医療連携の中でワクチン接種勧奨をしていくことを共有しておきたい。

後方支援機能の観点から、入院料に包括されない薬剤などを確認

新型コロナウィルス治療薬の扱いが見直される一方で、生物学的製剤・JAK阻害薬(いずれも免疫・アレルギー疾患の維持期で、他の治療薬に代替不能なもの)を使用する患者に対しては出来高算定できることになる。また、精神科の病棟では人工透析患者の受入れも出来高算定が可能となる見直しが行われている(図1)。入院対象となる患者の拡充となることから、連携体制について改めて検討をしたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。https://www.hckn.work

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