【医療業界動向コラム】第188回 透析医療に求められる地域医療連携
2026.05.21
新たな地域医療構想では、従来の入院医療だけではなく、外来医療・在宅医療・精神医療・介護も含めた構想を策定することが求められる。それは、地域全体を一つの総合病院と見立てたような体制を作ることでもある。令和8年度診療報酬改定は、新たな地域医療構想の始まりを控えた環境整備ともなっているといえ、基幹病院を中心とした連携に関する評価が新設されている。骨太の方針2025でも謳われていた末期腎不全の患者への対応も地域医療連携の取組の一つとして注目されている。
新規透析導入患者は2022年以降から減少の傾向にあり、直近の2024年では36,404人となっている。「経済財政諮問会議 経済・財政新⽣計画」において設定されている「2028年度までに新規透析導入患者数を年間3.5万人以下にする」という目標に着実に近づいている。そのため、人工透析患者数は全体で減少しているその一方で、医療技術の進歩もあり、人工透析を長期間利用できるようになり、高齢の患者が増えてきている。その結果、終末期の対応が急務となってきている現状にある。
令和8年度診療報酬改定では、人工腎臓の評価が一律20点引き下げられることとなったが、腎代替療法診療体制充実加算が新設され、算定できれば20点加算される(図1)。この加算は、BCPの策定の他、腹膜透析の実績等(令和10年5月31日まで経過措置あり)が必要となること、シャントトラブルに対する地域連携での対応が必須となり、緩和ケアが提供できる体制が望ましいとしている。人工透析が長期にわたることや高齢化でシャントの血管不足や合併症などで人工透析の継続が困難となった場合に、腹膜透析を選択する(PDラスト)ことがある。腎代替療法診療体制充実加算は、災害発生時の対応と高齢の透析患者への対応を強化することを求めるものといえる。

図1 腎代替療法診療体制充実加算の施設基準
令和8年度診療報酬改定説明会資料を参照して、HCナレッジ合同会社にて作成(クリックして拡大表示)
腹膜透析を安心して推進するための連携体制を評価
また、基幹病院をはじめとする病院では、人工透析患者の後方支援を行いやすい環境整備が推進される。腹膜透析を導入した基幹病院においては、かかりつけ医からの求めに応じて指導管理を行った場合に在宅自己腹膜還流指導管理料2(1,500点)が算定できるようになった。また、回復期リハビリテーション病棟入院料、地域包括ケア病棟入院料、精神科療養病棟入院料では人工腎臓・腹膜透析に係る特定保険医療材料は出来高算定が可能となる。
先述したように、腎代替療法診療体制充実加算では災害発生時の対応となるBCPの策定が必要になるが、地域医療連携を意識した内容を取り入れていくことで、より実効性のあるものとなる。例えば、災害が発生することを前提とした、特定保険医療材料や医療用医薬品などの採用品を地域で共有化し、当該地域内で適正に備蓄をするなど考えられる。現在、経済性も踏まえた地域での医療用医薬品の採用品リストと言える地域フォーミュラリの策定を国は推進しているが、透析領域においても同様の取組は効果的であると考えられる。地域で共有化することで、災害発生時の緊急事態でも医療機関の垣根を越えた対応が可能となる。
今後増えてくる高齢の人工透析患者を地域で支援するための連携体制作りについて、改めて確認しておきたい。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。https://www.hckn.work

