【医療業界動向コラム】第186回 医療機関の窓口業務費用を保険給付外にすることも検討を〜骨太の方針2026に向けた財務省からの提言「春の建議」の議論を確認する〜
2026.05.11
令和8年4月28日、財政制度分科会が開催された。本年6月上旬にも閣議決定される骨太の方針2026に対する財務省からの提言となる「春の建議」を取りまとめることが目的となっている。
医療提供体制に関するもの、患者負担に関するもの、保険者に対するものと多岐にわたっているが、ここでは医療機関の経営・医療提供体制に直接的に関連しそうな内容に焦点を当てて確認しよう。
新たな地域医療構想の着実な推進に向けた環境整備の視点
引き続き地域医療構想の推進を厳格に進めていくことが今回の提案に盛り込まれている。とりわけ、外来医療の機能分化、慢性疾患患者に対するかかりつけ医の明確化と継続受診率を高めることと医療費適正化の観点を目的とした外来診療報酬の包括化を提案している(図1)。

また、病状が安定している患者に対するリフィル処方・長期処方の推進についても改めて盛り込まれ、さらなる推進を求めていることがわかる。今後の具体的な推進策に注目が集まる。
地域医療提供体制の整備の観点としては、引き続き地域医療連携推進法人の利活用の促進、医療情報基盤となる医療DXのさらなる推進を提案している。医療DXについて注目してみよう(図2)。

令和8年1-2月を目標に電子カルテ情報共有サービスがリリースされる予定となっている。今後のポイントは、医療機関側による電子カルテ情報共有サービスへの参画もさることながら、患者側によるマイナポータルを利用した患者サマリー機能の利活用や電子処方箋及び電子処方管理サービスを活用したリフィル処方箋の管理などだろう。患者に対する医療DXのメリットを伝え、利活用してもらうことが古くから言われている「患者参画型医療」ということだろう。
また、医療機関においてはAIサービスを始めとする医療ICT機器の利用促進も重要なテーマになる。補助金なども今後引き続き出てくることが考えられるので、厚生労働省のホームページやJ-net21などを定期的に確認しておきたい。
医療機関の経営に関しては、医療法人の業務拡大についても提案されている。今後、医療機関の経営統合や廃業は増えていく一方で、高齢患者も増加していくことから、医療法人の経営基盤を強化するためにも業務範囲拡大は必要との考えだ。ただ、非営利性を担保していく必要もあるため、経営状況の可視化も合わせて必要となる。
保険給付範囲の見直しなど患者自己負担割合の見直しも検討を
現役世代と高齢世代の格差是正が選挙の争点になるなど、現役世代の社会保険料負担軽減、雇用延長などの推進もあり働き続ける高齢者が増えていることに合わせた施策が注目を集めている。今回の提案でも「選定療養の拡大/保険給付範囲の縮小」と「高額医療費に関する自己負担割合の見直し」が取り上げられている。
「選定療養の拡大/保険給付範囲の縮小」については、医療機関の窓口業務は診療行為ではないものの基本診療料に包括されて評価されていると考えられていることに着目して、オンライン診療ではアプリの利用料は自費になっていることなどを引き合いに、窓口業務費用を保険給付外にすることを検討することを提案している(図3)。

人口減少がすすみ、働き手も減っていくこと今後のことを考えると、医療DXを推進していくことと同時に生産性向上に貢献できる部署に適応できる人材育成を医療機関でも対応していくことが必要になる。患者負担の観点では、特定疾病制度についても提案が行われている。人工透析患者が特例成立時よりも大きく増えていることと他の疾患患者との負担の公平性の観点から、自己負担上限額を見直す。要するに自己負担上限額を引き上げることが提案された。
そして、後期高齢者の保険料負担と窓口負担について見直すことが提案されている。窓口負担を原則3割負担とすることを具体的に提案している。なお、令和8年特別国会で健康保険法等改正に関する審議は衆議院を通過し、成立する見通しとなっているが、今後後期高齢者の金融所得も考慮した保険料率の設定が5年後を目処にできるようになる見通しだ。
持続可能な社会保障制度を財源の面から考えると確かに必要なことだと思えるが、一方で、高齢になっても雇用の機会を提供できる社会の仕組み、治療をしながら働いて収入を得続ける事ができる社会の仕組みを同時に作っていくことが必要だ。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。https://www.hckn.work

