混合介護(選択的介護モデル事業)とは?解禁はいつから?メリットや注意点を解説
2026.03.12
近年は介護ニーズの高まりもあり、介護業界全体でさまざまな取り組みが求められるようになりました。
混合介護の解禁に関する議論も、その一環です。
混合介護とは、介護保険サービスと介護保険外サービスを組み合わせて利用することを指します。
近年では、より手厚い介護サービスを受けるための有効な手段として、厚生労働省でも解禁が検討されています。
本記事では、混合介護について解説します。
混合介護の基本的な概要に加え、議論の背景やメリット・デメリットについて理解していきましょう。
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目次
混合介護(選択的介護モデル事業)とは

混合介護とは、公的な「介護保険サービス」と、全額自己負担の「介護保険外サービス」を組み合わせて利用する仕組みのことです。
例えば介護保険では認められない家事援助や趣味活動のサポートなどを、介護保険外サービスで補完することで、より多様なニーズに応えることが可能です。
ただし、混合介護では保険外のサービスとの明確な区分が必要です。提供の際は、次の条件を守りましょう。
1.保険内/外を明確に区分すること
2.内容・提供時間・料金などについて文書で説明し、同意を得ること
3.訪問介護の利用料とは別に請求し、会計を区分すること
4.ケアマネへの情報共有を行うこと
5.認知機能低下等を踏まえ、切替タイミングを丁寧に示して誤認を防ぐこと
また、利用者分と同居家族分の料理を“同時に”作るなど同時一体的提供は不可となります。
指名料・時間指定料などの上乗せ徴収もできませんので、細かな規定を確認しておくことが重要です。
参照:介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて|厚生労働省
選択的介護モデル事業|東京都福祉局
選択的介護の提供について|東京都福祉局
混合介護が解禁されるのはいつから?
混合介護の考え方は以前から存在しましたが、ルールに曖昧な部分があり、利用しにくい状況でした。
このような状況を踏まえ、厚生労働省は混合介護のルールを明確化し、より利用しやすい制度とするために議論を進めてきました。
そして2018年度から東京都と豊島区が連携して「選択的介護モデル事業」として試験的な導入を行い、混合介護の有効性を検証しています。
現在はこのモデル事業を通じて、混合介護の具体的な運用方法や課題を洗い出し、全国展開に向けた準備を進めているところです。
混合介護の導入は、介護サービスの多様化と利用者の選択肢を広げる可能性を秘めており、今後の動向が注目されます。
混合介護の規制緩和が議論される背景

混合介護の規制緩和が議論される背景には、高齢者のライフスタイルや介護を取り巻く環境の変化があります。
特に以下の変化の影響が顕著です。
- 利用者の多様なニーズへの対応
- 介護保険サービスの制約の補填
- 介護施設の収入源確保
ここではそれぞれの変化について、順番に解説します。
利用者の多様なニーズへの対応
現代の高齢者は、介護が必要な状態になっても自分らしい生活を続けたいと願う方が増えています。
趣味を楽しんだり、友人と交流したり、地域活動に参加したりと、そのニーズは非常に多様化しました。
しかし、現行の介護保険制度は、あくまで生命維持や自立支援に必要な最低限のサービスを保障するものです。
そのため、画一的なサービスだけでは、個々の「生きがい」に応える難しさが課題でした。
例えば、長年連れ添ったペットとの生活を続けたい・慣れ親しんだ自宅で最期を迎えたい、といった個別の希望に応えるには、制度の枠を超えた柔軟な対応が求められます。
そのため、今後は介護保険制度を補完する形で多様なニーズに対応できる地域包括ケアシステムの構築や、ボランティアやNPOなど地域資源の活用が不可欠になると見られています。
介護保険サービスの制約の補填
介護保険サービスには、公平性を保つために厳密なルールが定められています。
利用者本人以外へのサービス提供や、日常生活に必須とはいえない行為は原則として認められていません。
例えば、介護保険サービスで「できること」「できないこと」は以下のようなものが挙げられます。
| サービスの種類 | 介護保険サービスで「できること」の例 | 介護保険サービスで「できないこと」の例 |
|---|---|---|
| 家事援助 | 利用者本人の食事作り・居室の掃除 | 同居家族の分の食事作り・庭の手入れ・大掃除 |
| 外出支援 | 病院への通院介助・役所での手続き | 趣味の買い物・友人宅への訪問・観劇への付き添い |
| 身体介護 | 入浴介助・排泄介助・着替えの手伝い | 規定時間以上の長時間の見守りや介助 |
| その他 | 日用品の買い物代行・薬の受け取り | ペットの世話・来客へのお茶出し・資産運用相談 |
混合介護は、こうした介護保険の「できないこと」を補う役割を担っています。
介護施設の収入源確保
混合介護は、介護事業所にとって経営安定化とサービス向上の両面で重要な意味を持つものです。
近年、介護事業所の中には、介護保険サービスの介護報酬のみでは経営が厳しい中小規模の事業所もあります。
一方、保険外サービスは価格を自由に設定できるため、介護事業所にとって新たな収益源となる可能性もあるでしょう。
安定した経営基盤は、介護職員の待遇改善や人材確保を可能にし、結果として介護サービスの質の向上にもつながります。
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介護保険外サービスとは

本章では、介護保険外サービスを以下のカテゴリに分けて見ていきます。
- 生活の質を高める支援
- 家族の負担を軽くする支援
- より手厚い介護・見守り支援
それぞれのサービスの概要を理解していきましょう。
生活の質を高める支援
利用者の生きがいや楽しみを支え、心豊かな生活を送るためのサービスです。
例えば、以下のサービスが挙げられます。
- 趣味活動への付き添い(買い物・映画鑑賞・美術館など)
- 友人との会食やイベント参加のサポート
- 散歩や軽い運動の同行
- 旅行への付き添い
上記のサービスは、多様なニーズに応えるだけでなく、利用者が社会とのつながりを保ち、充実した日々を送れるようサポートするものです。
家族の負担を軽くする支援
利用者の家族の負担を軽くする支援も、保険外サービスに該当します。
例えば以下のようなサービスがあります。
- 同居家族のための食事の準備や洗濯
- 兄弟や親戚など、来客対応の手伝い
- 介護者が休息をとる間の見守りサービス
- 介護に関する相談やカウンセリング
いずれのサービスも、家族の身体的・精神的な負担の軽減が期待できるものです。
また、ビジネスケアラーのような仕事と介護を両立している家族にとっても、上記のような支援は非常に有効です。
より手厚い介護・見守り支援
介護保険の枠を超えて、より手厚く、安心できるケアを提供するためのサービスです。
特に一人暮らしの方や、医療的ケアが必要な方のニーズに応えます。
代表的なサービスは以下のとおりです。
- 介護保険の規定時間を超える長時間の身体介護
- 夜間や早朝の見守り、安否確認
- 入院中の身の回りのお世話(洗濯・買い物など)
- センサー機器などを活用した24時間の見守りシステム
先進技術を取り入れることで、利用者により質の高いサービスを提供できます。
混合介護のメリット

混合介護を実施するメリットは以下のとおりです。
- 利用者の生活の質を向上できる
- 介護サービスの幅を広げられる
- 利用者の家族にかかる負担を減らせる
- 介護施設の収益源を確保できる
混合介護のメリットを把握すれば、実施する意義を理解しやすくなります。
利用者の生活の質を向上できる
利用者がもっとも大切にしている「やりたいこと」の実現を支援できる点が、混合介護の最大のメリットです。
混合介護により、介護が必要になったとしても、これまで諦めていた趣味を再開したり、地域社会とのつながりを維持したりすることができます。
例えば、絵を描くのが好きだった人が、訪問サービスを利用して再び筆を執ったり、外出支援サービスを利用して地域のイベントに参加したりすることも可能でしょう。
このような活動は、利用者の精神的な充足感や生きがいを高め、生活の質を大きく向上させます。
介護サービスの幅を広げられる
混合介護であれば、介護保険の枠にとらわれず、本当に必要なサービスを必要な量だけ利用できる自由度の高い介護が実現します。
例えば、通院介助の際にスーパーへ立ち寄って買い物をする・趣味活動への付き添いをお願いするなど、従来の介護保険では難しかった柔軟な対応が可能です。
画一的なサービスではなく、個人の尊厳を尊重し、その人らしい自立した生活をサポートできます。
利用者の家族にかかる負担を減らせる
利用者の家族のための家事代行サービスは日々の負担を軽減し、家族がより質の高い時間を過ごせるようサポートします。
介護が必要な家族がいる場合、介護者の負担は非常に大きくなりがちです。
しかし、混合介護で家事代行を利用することで、掃除や洗濯、料理などの家事から解放され、介護に専念できる時間を確保できます。
さらに、介護者が休息を取る間の見守りサービスも重要です。
介護者が心身ともにリフレッシュする時間が生まれ、「介護疲れ」や「介護離職」を防ぐことにつながります。
短時間でも自分の時間を持つことで心に余裕が生まれ、より穏やかな気持ちで介護に向き合えるでしょう。
介護施設の収益源を確保できる
事業者にとって、保険外サービスの提供は経営の多角化を促し、新たな収益源を確保する重要な手段です。
介護保険制度に依存しない収入源を確立することで、経営の安定性を高め、将来的なリスクを軽減できます。
得られた収益は、職員の給与アップや待遇改善に充当することも可能です。
さらに、多様なサービスを提供することで、介護職員自身のスキルアップとモチベーション向上にも役立ちます。
混合介護のデメリット

多くのメリットがある一方、混合介護には以下のデメリットもあるので注意しましょう。
- 利用者の自立を妨げるリスクがある
- 介護保険外サービスの費用が高騰しやすい
- 不要なサービスを提供するリスクが高まる
- 介護施設の管理負担が増加する可能性がある
あらかじめデメリットを把握することで、より良いサービスの提供につながります。
利用者の自立を妨げるリスクがある
混合介護で提供される保険外サービスに頼りすぎることで、利用者が本来できるはずのことまで行わなくなってしまう可能性もあります。
介護の本来の目的は「自立支援」であり、可能な限りご自身で日常生活を送れるようサポートすることです。
過剰なサービス提供は、結果として身体機能や認知機能の低下を招き、かえって自立を妨げてしまうリスクがあります。
例えば、少しの移動でもすぐに車椅子を利用したり、簡単な家事もすべて代行したりすると、筋力や生活意欲の低下につながる可能性があります。
介護サービスを提供する際は利用者の能力を最大限に活かし、できることは自身で行ってもらうよう促すことが重要です。
介護保険外サービスの費用が高騰しやすい
介護保険外サービスには介護保険が適用されないため、利用者はサービスにかかる費用を全額自己負担しなければなりません。
介護保険外サービスの料金設定には上限がないため、際限なく負担が大きくなる可能性もあるでしょう。
特に、複数のサービスを組み合わせて利用する場合、月々の費用が予想以上に高額になる可能性があります。
例えば、訪問介護・家事代行・外出支援などを個別に利用すると、それぞれの料金が加算され、結果的に大きな負担となることがあります。
そのため、利用者の経済的負担が増加し、本当に必要なサービスを受けられない状態になりかねません。
不要なサービスを提供するリスクが高まる
混合介護の規制緩和によって保険外サービスの提供が常態化すると、事業者によっては、利益を優先して利用者にとって必ずしも必要でない高額なサービスをすすめるリスクが高まります。
特に専門的な知識が必要な分野において、利用者は事業者の説明を鵜呑みにしてしまいがちです。
適切なサービスを提供するためにも、本当にそのサービスが必要なのか、類似のサービスと比較して価格は適正か、契約内容に不明な点はないかなど、冷静に判断する視点が求められます。
介護施設の管理負担が増加する可能性がある
事業者にとって、保険内サービスと保険外サービスを明確に区分することは、運営上の重要な課題です。
混合介護を実施する場合、会計処理・スタッフの業務分担・請求業務において、両者を混同しないように厳格な管理体制を構築する必要があります。
しかし、管理は事業規模が大きくなるほど複雑になり、現場の混乱や請求ミスのリスクを高めます。
スタッフの研修不足や煩雑な事務手続きによって、本来保険適用されるべきサービスが保険外として扱われる可能性もあるでしょう。
このような事態を防ぐためには、定期的な研修の実施・業務フローの明確化・ダブルチェック体制の導入など、多角的な対策が必要です。
さらに、顧客に対して、サービス内容と料金体系について丁寧に説明することで、誤解や不満を未然に防ぎましょう。
混合介護を実施する際の注意点

規制緩和に伴い、混合介護を実施する際は以下の注意点をチェックしましょう。
- 保険内サービスと保険外サービスのバランスに注意する
- サービスの内容を利用者に丁寧に説明する
- 認知機能が低下した利用者への対応に注意する
それぞれの注意点を意識することで、混合介護の実施によるトラブルを回避できます。
保険内サービスと保険外サービスのバランスに注意する
混合介護を実施するうえで、保険内サービスと保険外サービスのバランスは重要です。
利用者に保険外サービスを必要以上に提供すると、過度な負担を招くことになります。
まずはケアマネジャーと連携し、利用者が介護保険適用範囲を最大限に活用できるよう努めましょう。
保険外サービスは、介護保険では対応できない部分を補完する役割として捉え、本当に必要な場合に提案することが重要です。
過度な保険外サービスへの誘導は避け、利用者の状況とニーズに合わせた適切なサービス提供を心がけてください。
サービスの内容を利用者に丁寧に説明する
従来と同様、サービスの内容を利用者に丁寧に説明することは欠かせません。
特に、利用者に認知機能の低下が見られる場合、契約内容を十分に理解できないことがあります。
必要があれば家族が同席し、サービス内容・料金・契約期間などを丁寧に説明し、納得を得たうえで契約を進めましょう。
契約書は必ず書面で受け取り、控えを保管しておくことが重要です。
認知機能が低下した利用者への対応に注意する
認知症の方などの場合、不必要な契約を結んでしまうリスクが高まります。
不必要なサービスを提供することにならないよう、家族と入念に相談するなど利用者を守る仕組みを整えておくことも有効な対策です。
利用者に配慮した対応を実施することが、介護施設の信頼を守る鍵です。
混合介護は、公的な介護保険サービスに、全額自己負担の介護保険外サービスを組み合わせて利用する考え方です。介護保険だけでは届きにくい「生活の質」や家族支援、より手厚い見守り等を補完し、趣味の外出同行や家事の追加支援など、本人の希望に合わせた選択肢を広げます。その背景には、利用者ニーズの多様化と、介護保険の「できる/できない」の制約があります。
メリットは、本人の「やりたいこと」を支え、家族負担を減らし、事業所の収益源にもなりえる点です。一方で保険外は上限がないため費用が膨らみやすく、過剰な代行は自立を妨げる恐れがあります。利益優先で不要なサービスが勧められるリスク、保険内外の区分管理や請求ミスなど事業者側の負担増にも注意が必要です。実施時はケアマネ等と連携し、保険適用範囲を最大限活用したうえで不足分を補う、内容・料金・契約を丁寧に説明し、認知機能低下がある場合は家族同席などで誤契約を防ぐ姿勢が要点です。保険外は「補完」と位置づけ、必要以上に誘導しない運用が望まれます。
まとめ:混合介護は利用者にとってより良い選択肢になる

混合介護は、画一的な介護保険サービスだけでは満たせなかった、利用者の多様なニーズに応えるための重要な選択肢です。
利用者本人の「自分らしい生活」を支え、同時に介護する家族の負担を軽減する大きな可能性を秘めています。
加えて、混合介護は介護施設にとっては新たな収益源を得られるものでもあります。
一方、利用者の費用負担の増加やサービスの過剰利用などといったデメリットがある点に注意が必要です。
本記事の内容を参考に、利用者に最適なサービスを提供しましょう。
なお、株式会社ワイズマンでは「効果的なアセスメントを実施するための資料」を無料で配布中です。
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監修:梅沢 佳裕
人材開発アドバイザー
介護福祉士養成校の助教員を経て、特養、在宅介護支援センター相談員を歴任。その後、デイサービスやグループホーム等の立ち上げに関わり、自らもケアマネジャー、施設長となる。2008年に介護コンサルティング事業を立ち上げ、介護職・生活相談員・ケアマネジャーなど実務者への人材育成に携わる。その後、日本福祉大学助教、健康科学大学 准教授を経て、ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表として多数の研修講師を務める。社会福祉士、介護支援専門員、アンガーマネジメント・ファシリテーターほか。

