訪問看護の長時間加算とは?2025年最新情報と算定事例を徹底解説

2025.06.22

訪問看護の現場で働く方は、長時間加算について、しっかりと理解しておく必要があります。法改正が頻繁に行われる介護報酬において、最新の情報を収集しておけば、適切な加算算定を実現できます。

本記事では、訪問看護の長時間加算について、算定要件から具体的な事例、複数事業所連携時の取り扱いまで詳しく解説します。

2025年の最新情報を交えながら長時間加算について解説するので、算定漏れを防ぎ、利用者の生活をよりいっそう支えるために、ぜひ最後までご覧ください。

訪問看護の長時間加算とは?

訪問看護における長時間加算は、長時間の訪問看護を必要とする利用者に対して算定できる加算です。しかし、長時間加算の目的や算定要件・単位数などは、医療保険と介護保険で異なり、複雑に感じる方もいるのではないでしょうか。

ここでは、長時間加算の基本的な事項について解説していきます。

長時間加算の基本:目的と概要

長時間加算の目的は、重度な疾病や障がいを持つ利用者に対し、質の高い訪問看護を提供することです。具体的には、通常の訪問看護では対応しきれない下記のようなケースを想定しています。

  • がん末期の疼痛緩和ケア
  • 難病患者の在宅療養支援
  • 認知症高齢者の生活支援
  • 精神疾患を持つ利用者の社会復帰支援

上記の利用者に対して、十分な時間をかけて質の高いケアを提供するために、長時間加算が設けられています。医療保険と介護保険のそれぞれで、算定要件や単位数が異なりますので要注意です。

医療保険における長時間訪問看護加算は、長時間の訪問を要する利用者に対して、1回の訪問看護の時間が90分を超えた場合に、1人の利用者に対して週1日に限り算定できる加算です。

算定要件:時間・訪問内容・記録のポイント

長時間加算を算定するためには、時間・訪問内容・記録の3つのポイントを押さえる必要があります。

ポイント詳細
時間医療保険:1回の訪問が90分を超える場合(週1回まで)介護保険:1時間以上90分未満の訪問看護に、引き続き訪問看護を行う場合
訪問内容利用者の状態に応じた適切なケアの提供(例:疼痛緩和、生活支援、精神的なサポートなど)
記録訪問時間・訪問内容・利用者の状態・ケアの実施状況などを詳細に記録

加算額・単位数:医療保険・介護保険の違い

長時間加算の対象者と加算額・単位数は、医療保険と介護保険で大きく異なります。

項目医療保険介護保険
対象者特別管理加算の対象者(別表8に該当)特別管理加算(Ⅰ)、特別管理加算(Ⅱ)の対象者
加算額・単位数5,200円/日300単位/日

最新の情報を確認し、正確な単位数で請求するようにしましょう。

対象者となる利用者の状態とは?

長時間加算の対象となる利用者の状態は、一律に定められているわけではありません。しかし、一般的には、以下のような状態にある方が対象となることが多いです。

  • がん末期で、疼痛コントロールや精神的なケアが必要な方
  • 神経難病や進行性の疾患で、日常生活に著しい支障がある方
  • 認知症が進行し、介護負担が大きい方
  • 精神疾患を持ち、社会生活への復帰を目指している方
  • 在宅人工呼吸器を使用している方、真皮を越える褥瘡の状態にある方

上記の利用者は、通常の訪問看護よりも時間をかけて、多職種と連携しながら、包括的なケアを提供する必要があります。長時間加算は、そのようなケアを支えるための重要な制度です。

【2025年最新】長時間訪問看護加算の算定要件チェックリスト

訪問看護の長時間加算を適切に算定するために、最新の情報を基にしたチェックリストをご用意しました。2025年以降の法改正を想定し、算定要件を確実に理解しておきましょう。

算定要件チェックリスト

以下の項目を一つずつ確認し、長時間加算の算定が可能かどうかを判断してください。

項目内容確認
対象者特別管理加算(Ⅰ)または特別管理加算(Ⅱ)の対象者であること
訪問時間1回の訪問で1時間以上、または1時間以上1時間30分未満の訪問看護に引き続き訪問看護を行っていること
保険の種類医療保険または介護保険のいずれであるか
指示書の有無特別訪問看護指示書または精神科特別訪問看護指示書を受けている場合は、週1回を限度とすること
記録訪問時間、訪問内容、利用者の状態などを詳細に記録していること
複数回の訪問同一日に複数回訪問した場合、合算して1回の長時間訪問看護加算として算定できないことに注意すること

詳細な算定要件については、厚生労働省の最新情報をご確認ください。

見落としがちなポイントと対策

長時間加算の算定において、見落としがちなポイントとその対策を以下にまとめました。

ポイント見落としがちなポイント対策
1特別管理加算の対象者であること利用者の状態を正確に把握し、特別管理加算の対象となる疾病などに該当するかどうかを確認する
2訪問時間の算定訪問開始時間と終了時間を正確に記録し、移動時間や準備時間を含めないように注意する
3記録の徹底訪問看護計画書に基づいて、具体的な看護内容、利用者の状態の変化、家族への指導内容などを詳細に記録する
4指示書の確認特別訪問看護指示書や精神科特別訪問看護指示書を受けている場合、算定回数に制限があることを確認する
5医療保険と介護保険の違い医療保険と介護保険では、算定要件や単位数が異なるため、それぞれの保険制度に合わせて算定する

長時間訪問看護加算の算定例(医療保険・介護保険)

ここでは、長時間訪問看護加算が実際にどのようなケースで算定されるのか、医療保険と介護保険それぞれについて具体的な例を挙げて解説します。また、緊急時訪問看護加算との併用など、イレギュラーなケースについても触れていきます。

医療保険での算定例:がん末期患者の疼痛緩和ケア

末期がん患者に疼痛緩和ケアを実施した場合の算定例は、以下のとおりです。

「状況」

末期がん患者Aさんが、自宅で療養されており強い疼痛に苦しんでいる状況。医師の指示に基づき、訪問看護師がAさんの自宅へ訪問し、1時間30分を超えてのケアを実施した場合、長時間訪問看護加算を算定できます。

具体的なケア内容は、以下のとおりです。

  • 疼痛コントロールのための薬剤投与・管理
  • 呼吸困難に対するケア
  • 精神的なサポート
  • 家族へのケア指導

この場合、訪問看護計画書には、疼痛緩和ケアの必要性や具体的なケア内容、訪問時間などが明記されている必要があります。また、訪問看護記録書には、実施したケアの内容・患者の状態・家族への指導内容などを詳細に記録します。

介護保険での算定例:認知症高齢者の生活支援

認知症高齢者の生活支援の算定例は、以下のとおりです。

「状況」

要介護度の高い認知症高齢者Bさんが、自宅での生活を継続するために訪問看護を利用している状況。Bさんは、日常生活動作(ADL)が低下しており、食事・排泄・入浴などの介助が必要です。

また、Bさんは、精神症状(徘徊、興奮など)が見られることもあり、家族は介護に疲弊しています。

上記の状況において、訪問看護師がBさんの自宅へ訪問し、1時間30分を超えて生活支援を行った場合、長時間訪問看護加算を算定できます。

具体的な支援内容は、以下のとおりです。

  • 食事介助・排泄介助・入浴介助
  • 服薬管理
  • 精神症状に対する観察と対応
  • 家族への介護指導・相談

この場合、訪問看護計画書には、BさんのADLの状態・精神症状・家族の介護状況などを踏まえ、具体的な支援内容や訪問時間などが明記されている必要があります。

また、訪問看護記録書には、実施した支援の内容・Bさんの状態・家族への指導内容などを詳細に記録します。

イレギュラーなケース:緊急時訪問看護加算との併用

長時間訪問看護加算は、原則として他の加算と併算定できます。ただし、緊急時訪問看護加算との併用については、注意が必要です。

例えば、夜間に患者の状態が急変し緊急訪問看護を行った結果、1時間30分を超える長時間訪問となった場合、緊急時訪問看護加算と長時間訪問看護加算の両方を算定できる場合があります。

ただし、緊急時訪問看護加算は、文字どおり緊急性の高い場合に算定されるものであり、計画的な長時間訪問看護とは性質が異なります。そのため、緊急時訪問看護加算と長時間訪問看護加算を併算定する場合には、その必要性を明確に記録しておきましょう。

具体的には、以下の点を記録に残すことが重要です。

  • 患者の状態が急変した状況
  • 緊急訪問看護を行った理由
  • 緊急訪問看護の内容
  • 長時間訪問看護が必要となった理由

これらの情報を詳細に記録することで、監査の際にも適切な説明が可能となります。

複数事業所連携時の長時間加算の取り扱い

訪問看護において、利用者の状態によっては、複数の事業所が連携して長時間にわたるケアを提供することがあります。このような場合、長時間加算はどのように取り扱われるのでしょうか。ここでは、複数事業所が連携した場合の長時間加算の算定について、具体的なケースを交えながら解説します。

複数事業所で交代して長時間訪問した場合の算定

複数事業所が連携し、交代で長時間訪問を行った場合、長時間加算の算定は原則として認められません。長時間加算は、一カ所の訪問看護ステーションが継続して長時間の訪問看護を提供した場合に算定できるものです。

ただし、例外的に算定が認められるケースもあります。例えば、24時間対応体制を構築している複数の訪問看護ステーションが、緊急時訪問看護加算と組み合わせて長時間にわたる訪問看護を提供した場合などです。

このようなケースでは、事前に保険者への確認が求められます。

訪問看護ステーションが遠隔地にある場合の算定

訪問看護ステーションが利用者の居住地から遠隔地にある場合でも、算定要件を満たせば長時間加算を算定できます。ただし、移動時間を含めた訪問時間ではなく、実際に看護を提供した時間が算定の対象となる点に注意が必要です。

例えば、訪問に片道1時間かかる場合でも、実際に看護を提供した時間が1時間30分以上であれば、長時間訪問看護加算を算定できます。

ただし、移動時間が長くなる場合は、利用者の状態や移動手段などを考慮し、適切な訪問計画を立てましょう。

同一日に複数回訪問した場合の算定

同一日に複数回訪問した場合、それぞれの訪問時間が短くても、合計の訪問時間が長時間かかる可能性があります。しかし、長時間加算は原則として1回の訪問で長時間を要した場合に算定できるものであり、複数回の訪問時間を合算して算定はできません。

ただし、例外的に、同一日に複数回の訪問が必要となるケースもあります。例えば、病状が不安定な利用者の状態観察のために、短時間の訪問を複数回行う場合などです。

このようなケースでは、それぞれの訪問の必要性や理由を明確に記録し、保険者に確認しておきましょう。

コロナ禍における長時間加算の特例措置

コロナ禍では長時間加算における特例措置が設けられました。今後の動向と注意点を把握するため、コロナ禍における長時間加算の特例措置について確認しておきましょう。

特例措置の内容と期間

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、訪問看護の現場ではさまざまな特例措置が設けられました。長時間加算に関しても、例外ではありません。

特例措置は、感染症の影響下での利用者の安全確保と、訪問看護サービスの継続を目的としていました。

具体的な内容としては、以下のような点が挙げられます。

  • 柔軟な算定要件の適用
  • 書類手続きの簡素化

これらの特例措置は、感染症法上の位置づけ変更など、状況の変化に応じて見直されてきました。具体的な期間については、厚生労働省からの事務連絡などで随時示されていましたが、多くの特例措置は2023年5月8日の新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い、終了しています。

今後の動向と注意点

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが変更されたことで、訪問看護における特例措置は段階的に縮小・終了しています。しかし、感染症への対策は、今後も重要な課題です。

今後の動向としては、以下のようなケースが想定されます。

  • 感染症対策の標準化
  • 遠隔モニタリングの活用
  • 地域連携の強化

長時間加算を算定する際には、以下の点に注意しましょう。

  • 最新情報の確認
  • 記録の徹底
  • 多職種連携

コロナ禍は、訪問看護のあり方を見つめ直す良い機会となりました。特例措置の終了後も、利用者の安全を第一に考え、質の高い訪問看護を提供できるよう、日々の業務に取り組んでいきましょう。

長時間訪問看護加算を算定する際の注意点

長時間訪問看護加算を算定する際は、算定漏れや返戻を防ぐため、さまざまな対策を講じる必要があります。長時間訪問看護加算の算定における注意点をご紹介します。

算定漏れを防ぐための対策

長時間訪問看護加算は、適切なケアを提供しているにもかかわらず、算定要件の複雑さから算定漏れが発生しやすい加算の一つです。算定漏れを防ぐためには、以下の対策を講じることが重要です。

  • 算定要件の再確認:定期的に算定要件を確認し、チーム全体で共有しましょう。特に、2025年の制度改正による変更点には注意が必要です。
  • 対象者の明確化:長時間訪問看護加算の対象となる利用者の状態を明確にし、該当する可能性のある利用者をリストアップしておきましょう。
  • 記録の徹底:訪問時間、訪問内容、利用者の状態などを詳細に記録し、算定要件を満たしていることを証明できるようにしましょう。
  • チェック体制の構築:請求前に、記録内容と算定要件を照らし合わせるチェック体制を構築しましょう。複数人でチェックすることで、見落としを防げます。

訪問看護の時間が90分を超えた場合、長時間訪問看護加算の対象となる可能性があります。

返戻を防ぐための記録・請求のポイント

せっかく算定しても、記録や請求に不備があると返戻されてしまうケースがあります。返戻を防ぐためには、以下のポイントを押さえましょう。

  • 正確な記録:訪問日・訪問時間・具体的なケア内容・利用者の状態などを正確に記録しましょう。
  • 詳細な請求明細:請求書には、加算の種類・算定単位数・利用者の氏名などを正確に記載しましょう。
  • 根拠となる資料の保管:訪問記録・ケアプラン・医師の指示書など、請求の根拠となる資料を適切に保管しましょう。
  • 審査機関への確認:不明な点がある場合は、事前に審査機関に確認しましょう。

介護保険における長時間訪問看護加算は、特別な管理を必要とする利用者に対して、90分を超えて訪問看護を提供することで算定できます。

監査対策:日頃から心がけること

訪問看護ステーションは、定期的に監査を受ける機会があります。監査で指摘を受けないためには、日頃から以下の点を心がけましょう。

  • 法令遵守:訪問看護に関する法令や通知を遵守し、適切な運営を行いましょう。
  • 記録の整備:訪問記録、ケアプラン、会議記録など、必要な書類を適切に整備・保管しましょう。
  • 職員教育:職員に対して、法令遵守や記録の重要性について定期的に教育を行いましょう。
  • 自己点検:定期的に自己点検を行い、問題点があれば改善しましょう。
斉藤 圭一氏
斉藤 圭一氏

訪問看護における長時間訪問看護加算は、長時間を要するケアを必要とする利用者に対し、医療保険・介護保険それぞれに定められた要件に基づき算定される重要な加算です。本稿では、2025年の最新情報を踏まえ、算定要件、対象者、加算額の違いを明確に解説してあります。具体的な算定事例を通じて、多様なケースでの適用可否を理解する助けとなり、緊急時訪問看護加算との併用時の注意点は、誤った算定を防ぎます。複数事業所連携や遠隔地のステーションにおける取り扱いも示され、制度の適用範囲を把握する上で有益です。本加算の適切な理解と算定は、質の高い在宅療養を支え、訪問看護ステーションの安定的な経営にも繋がります。本稿を読むことが、長時間訪問看護加算に関する知識を深め、日々の訪問看護業務における適切な請求の一助となることと思われます。

長時間訪問看護加算を理解し、質の高い訪問看護を提供しよう

訪問看護における長時間加算は、利用者の在宅生活を支える上で重要な役割を果たします。加算を正しく理解し、質の高い訪問看護を提供することで、利用者のQOL(生活の質)向上に貢献できます。

単に訪問時間を長くするだけでなく、利用者の状態に応じた適切なケアを提供していきましょう。

監修:斉藤 圭一

主任介護支援専門員、MBA(経営学修士)

神奈川県藤沢市出身。1988年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業後、第一生命保険相互会社(現・第一生命保険株式会社)に入社。その後、1999年に在宅介護業界大手の株式会社やさしい手へ転職。2007年には立教大学大学院(MBA)を卒業。 以降、高齢者や障がい者向けのさまざまなサービスの立ち上げや運営に携わる。具体的には、訪問介護・居宅介護支援・通所介護・訪問入浴などの在宅サービスや、有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅といった居住系サービス、さらには障がい者向けの生活介護・居宅介護・入所施設の運営を手がける。 また、本社事業部長、有料老人ホーム支配人、介護事業本部長、障害サービス事業部長、経営企画部長など、経営やマネジメントの要職を歴任。現在は、株式会社スターフィッシュを起業し、介護・福祉分野の専門家として活動する傍ら、雑誌や書籍の執筆、講演会なども多数行っている。

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