高齢社会白書の考察と
着目ポイント

2019年10月9日

Q1 なぜ制度改革が必要になっているのか?医療・介護分野に及ぼす影響とは?

過去40年余りの社会保障給付費(年金・医療・福祉その他を合わせた額)の推移を確認すると、平成28(2016)年度は116兆9,027億円となり過去最高の水準となりました。そして、社会保障給付費のうち「高齢者関係給付費(年金保険給付費、高齢者医療給付費、老人福祉サービス給付費及び高年齢雇用継続給付費を合わせた額)」に着目すると、毎年増加し続けて、平成28(2016)年度は78兆5,859億円となり、こちらも過去最高の水準となりました(下図)。特に、高齢化に伴う「高齢者関係給付費」の増加による保険財政の悪化とその影響に対して留意しなければなりません。

社会保障費の高騰は、豊かさの象徴と呼べるものではなく、高齢化の進展による我が国の保険財政に影響を及ぼす深刻な問題となっています。その要因である「高齢者関係給付費」が増え続けている理由は、我が国の社会保障制度では社会保険方式を採りながら、高齢者医療と介護給付費の5割を公費で賄うなど、公費負担(税財源で賄われる負担)に相当依存しているからです。

その結果、近年は公費の比重の大きい高齢者医療と介護給付費の増加に伴い、負担増は公費に集中し、これを賄う財源が確保できない点が財政悪化の要因となっています。その財政悪化が最も懸念される時期は、団塊の世代が75歳以上になる2022年以降、2025年にかけて危惧されています。

我が国の医療・介護制度は、国民皆保険やフリーアクセスなどを採用し、患者・利用者側だけでなくサービス提供者側にも公平な制度設計により、長らく運営されてきました。しかしながら、現行制度のキャパシティを大きく超える未曽有の高齢化を迎えようとしている今、給付と負担のバランス(社会保障制度の持続可能性)を損なう問題点を見直していくことが不可避となっています。

抜本的な制度改革では、社会保障費の高騰を抑制しつつ、健康寿命の延伸に主眼を置いた「保険給付の範囲」「保険給付の効率的な提供」「負担の公平化」が見直しのポイントになっています。医療機関や介護事業所等では、保険給付の見直しに直結する報酬改定への影響が懸念されますが、改革が患者や利用者のQOLの向上につながる点を理解し、変化に適応していくことが大切です。

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