Q1 医療機関や介護事業所等における2019増税改定の影響は?

消費税は本来、事業者の税負担がないのが原則です。しかしながら、医療機関や介護事業所等では社会保険診療等が非課税取引であるため、仕入税額控除ができず、医療機関等が仕入れの際に負担した消費税がコストとなる損税問題(控除対象外消費税)が存在しています。

こうした消費税の損税問題を解消するため、増税の都度、診療報酬や介護報酬の臨時改定により基本料等に上乗せ措置が行われてきました。今回、10月の消費税率10%への引き上げ時においても、社会保険診療等が非課税取引という点は変わらないまま、増税による負担分を基本料等に上乗せする臨時改定が行われます(下表)。

臨時改定は診療報酬点数や介護報酬単位に係る算定要件の見直しがなく、現場への影響や経営的なインパクトはありません。ただし、薬価は実勢価改定の影響により医療費ベース▲0.51%(=0.42%-0.93%)のマイナス改定となることから、薬剤費のウェートが高い医療機関や薬局において収入減につながる点に留意しなければなりません。

各改定率 内訳
診療報酬本体 0.41% 消費税対応
(医科+0.48%、歯科+0.57%、調剤+0.12%)
薬価・材料価格 0.47% 消費税対応
(薬価+0.42%、材料+0.06%)
▲0.95% 実勢価改定
(薬価▲0.93%、材料▲0.02%)
介護報酬 0.39% 別途、処遇改善+210億円、補足給付+7億円
障害福祉サービス 0.44% 別途、処遇改善+90億円

医療機関や介護事業所等において、増税改定以上に注意しなければならないことは、増税影響の緩和や消費活性化を目論んだ新たな仕組みが導入される点です(下表)。特に「軽減税率」や「区分経理」、「インボイス」の導入においては、保険外サービスの有無や消費税の課税売上高により対応が異なることから、各ポイントを理解して、該当する場合にはしっかり準備していく必要があります。

保険サービス 保険外サービス
増税改定の影響 増税分の補鎮
(算定要件の変更なし)
薬価改定の影響あり
軽減税率制度への対応 非課税のため関係なし レジ・会計処理の対応
区分経理&インボイスの対応 免税事業者への影響
プレミアム付き商品券事業 任意(対応するのであれば要登録)
キャッシュレス消費者還元事業 保険医療機関や介護事業者などは対象外

Q2 消費税の軽減税率制度はどのような場面において関与するか?

医療機関等では、社会保険診療等の非課税取引(保険収入)以外に、自由診療や予防接種、健診、一般用医薬品、飲食料品、関連商品等の販売を行い「保険外収入」が伴うケースがあります。こうした「保険外収入」に係る消費税の課税取引がある場合、10月以降、社会保険診療等の非課税取引に加えて、「標準税率(10%)」と「軽減税率(8%)」が混在する形に変わることから、対象品目の取扱いがあれば会計処理の対策が必要です。

軽減税率の対象品目は「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約に基づく週2 回以上発行される新聞」と限定的であるものの、「飲食料品」の対象範囲は広く、やや複雑になっていますので、その区分の体系図や類似品を確認しておきましょう(下図)。

例えば、複数税率の対象品目の販売があれば、「区分記載請求書等保存方式」に対応したレジや受発注システムの導入や改修を検討しなければなりません。機種の選定においては区分税率の対応のみならず、政府が推進するマイナンバーカードの利用促進による「自治体ポイント」等との仕様に係る互換性や拡張性を考慮しつつ、軽減税率対策補助金の活用も検討材料になります。

また、軽減税率の対象となる勘定科目としては、定期購読の新聞代は「新聞図書費」、飲食料品は贈答用の食品や会議用の茶菓・弁当などが「交際費」や「会議費」または「福利厚生費」等に含まれるため、ほぼ全ての事業者に関与するものとなっている点に注意しなければなりません。軽減税率は生活者だけでなく、該当品を取扱う事業者の経費処理にも関わる点を押さえ、実務に携わる顧問税理士へ確認しておくとよいでしょう。

Q3 プレミアム付き商品券やキャッシュレス消費者還元の影響は?

プレミアム付き商品券(以下、商品券に略)の発行は、今回の消費税率の引き上げが低所得者や子育て世帯の消費に与える影響を緩和するとともに、地域における消費を喚起・下支えする目的があり、その対象は低所得者・子育て世帯主向けに限定されました。

商品券は、金券として現金と同様の機能を果たすものとして、医療や介護の自己負担の支払いにも充てることができます。これにより、医療機関や介護事業者が商品券を取扱う場合(任意)には当該市町村の公募に申し込む必要があります。導入をお考えの際には、これからの当該市町村における地域情報を確認していきましょう。

商品券の券面額およびプレミアム補助額は、住民税非課税者は券面額2.5万円、販売額2万円でプレミアム補助額5千円(割引率20%)、子育て世帯は券面額の購入を学齢3歳未満の子(2016.4.2~2019.9.30までの間に生まれた子)の数まで、5,000円単位で購入可とされました(下図)。

期間は10月1日から翌年3月31日まで市町村等の定める期間において使用可能とし、購入希望者は事前申請して、市町村等が順次審査を行うこととなり、申請の受付期限は11月頃までと予定されています。商品券はお釣りが出ないルールとされ、例えば900円の自己負担の場合には、500円の商品券1枚と現金400円での会計となります。

他方、キャッシュレス・消費者還元事業は、「保険医療機関、保険薬局、介護サービス事業者」等は対象外となり、事業者として会計上の処理や実務の準備は必要ありませんが、生活者として押さえておきたい新たな仕組みです。

この事業は、増税に伴う駆け込みや反動減に対応した需要平準化対策であり、中小・小規模事業者におけるキャッシュレス決済を促進する狙いがあります。該当店舗などにおいて消費者が「クレジットカードやデビットカード、電子マネー、QRコードなどの電子的決済手段」で購入した場合に5%が還元される仕組みです。期間は10月より9ヶ月間(2020年6月まで)と限定的となっています。要件を満たした中小・小規模事業者は登録を行うことで、加盟店手数料や端末導入費用の補助・軽減といった支援が受けられます。

この他、ポイント還元等の支援策を講じた後の消費活性化策として、マイキープラットフォームを活用した「マイナポイント」の付与という支援が予定されています。マイナンバーカードの健康保険証利用とともに、カードの普及促進の後押しとして注目される基盤整備だといえるでしょう。

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