2022.12.02
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【斉藤正行のはなまる介護】「サ高住宅・住宅型有料老人ホーム等の集合住宅の改革のゆくえ」

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や、住宅型有料老人ホーム等の集合住宅は、介護保険サービスの「囲い込み」「過剰サービス」などの問題指摘が繰り返されており、2024年の同時改定において厳しい改革となるのではないかと予測されています。集合住宅における介護サービスの今後の議論のゆくえとポイントについて論考したいと思います。

昨年4月に行われ令和3年度介護報酬改定においても集合住宅に関する様々な見直しが行われました。まずは前回改定を振り返りたいと思います。前回改定で最も大きな影響を伴う見直しは、通所系サービス・小多機・看多機における「同一建物減算適用時の区分支給限度基準額の計算方法の適正化」です。これは2018年改定で訪問系サービスにおいて適用された内容と同様のルールが通所系サービス・小多機・看多機にも適用するものであり、同一建物減算の適用により利用単位数が減少した後に、区分支給限度基準額の範囲内でサービス回数を増やすことを禁じるものです。訪問系サービスとの整合性を図る観点からも妥当な見直しであるとも感じますが、事業者において区分支給限度基準額いっぱいまでサービス利用されているご利用者が多い場合、減収の影響は大きなものとなりました。なお、前回改定では、「集合住宅」で訪問系サービスを外付けしている事業者においては、直接的な減収につながる見直しはありませんでしたが、過剰サービスに対する牽制的な見直し項目がいくつか盛り込まれましたので、影響は決して小さくありません。例えば、訪問系サービス・通所系サービス・福祉用具貸与について、事業所と同一の建物に居住する利用者に対して、サービス提供を行う場合に、居住者以外の近隣の利用者に対するサービス提供が努力義務としてルールづけられることとなりました。

更には、直接集合住宅による運営への直接影響ではなく、居宅介護支援のケアマネジャーに対する集合住宅への見直し項目も3つあり、それらは集合住宅のサービス利用控えに繋がる可能性のある見直しでした。1つ目は、2018年改定で導入された生活援助の訪問回数が多い利用者のケアプラン検証の仕組みの見直しです。検証や届出頻度を柔軟に見なすとともに、区分支給限度基準額の利用割合が高く、かつ、訪問介護が利用サービスの大部分を占める等のケアプランを作成する居宅介護支援事業所を抽出する仕組みの導入が導入されました。2つ目は、集合住宅に居住する利用者のケアプランで区分支給限度基準額の利用割合が高い場合、適切なケアマネジメントに基づくプランとなっているか否かの自治体による指導監督体制がより強化されました。3つ目は、6か月ごとに、ケアプランにおける訪問介護・通所介護・福祉用具貸与のサービス利用割合と、同一事業者によって提供されたものの割合を、利用者に説明を行い、介護情報公表システムに公表することが義務づけられました。いずれも集合住宅に対する過剰サービスへの牽制を促すものであり、同時にケアマネジメントの公正中立性の確保の観点から導入された見直し項目であります。他方で、ケアマネジャーの業務工数が著しく増大する一因となることも間違いなく、結果として事務作業負担が増え、ケアマネジメント業務の時間が削られることとなり、公正中立性の確保を阻害しかねない逆効果の可能性も秘めていると感じます。

これら、前回改定の見直し項目を踏まえた上で、2024年同時改定における集合住宅の行方を読み解いていくと、運営事業者に対しては、3つの論点が想定されます。1つ目は、「同一建物減算の更なる拡大」です。更なる単位数の引き下げや条件の厳格化などが論点となります。2つ目は、「区分支給限度基準額の割合の高い利用に対する更なる規制強化」です。前回、努力義務とされたルールの義務化の検討などが論点となります。3つ目は、「区分支給限度基準額の対象外となっている各加算の見直し」です。これは令財政制度等審議会財制度分科会において財務省が提言した社会保障改革案にも盛り込まれており、区分支給限度基準額の対象外となっている各加算の1つ1つを再検証し、対象内となる加算を見出すことは、これからの論点の1つとなります。これら3つの論点とともに、居宅介護に対するケアマネジメントの公正中立性の確保の議論もいっそう大きな論点となることも間違いなく、本格的な議論は、来年からとなりますが、2024年の同時改定は集合住宅にとっては大きな改革を伴う改定となる可能性が高いです。

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

  • 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
  • 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役
  • 一般社団法人日本デイサービス協会 名誉顧問
  • 一般社団法人日本在宅介護協会東京支部 監査
  • 一般社団法人全日本業界活性化団体連合会 専務理事
  • その他、介護関連企業・団体の要職を歴任
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