2022.11.18
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【斉藤正行のはなまる介護】「地域包括ケアシステムの中核となる通所介護の未来」

「介護給付費等実態統計」の最新データによる通所介護の事業所数の推移から、通所介護事業を取り巻く動向を整理し、これからの通所介護事業の未来を考察します。

通所介護事業所及び地域密着型通所介護事業所の総数は、今年4月時点で全国に4万3392事業所。総数は2016年に4万3000事業所を超えてから6年間は横ばいに近い状態が続いています。地域密着型通所介護は2016年の2万3763事業所をピークに6年連続で減少し、今年は1万8947事業所となっています。一方で、通常規模型・大規模型の通所介護は増加し続けています。

この背景は2015年の介護報酬改定による影響が大きいと思います。通所介護は全ての区分において基本報酬単位が切り下げられ、とりわけ地域密着型(小規模)については約9%の基本報酬単位のマイナス改定となり、同時に利用定員18名以下を地域密着型サービスへと2016年から移行される等大きな見直しとなりました。地域密着型通所介護の経営環境が厳しくなり、事業所の統廃合が進んだことにより事業所数の減少が続いています。

他方で、通常規模型・大規模型については、基本報酬単位はマイナス改定となったものの、下げ幅は限定的であり、規模の経済を活かした効率経営を行うことによって収益性の確保が可能なことから着実に事業所数は増加しています。そもそも要介護高齢者の数は年々増加していることから、通所介護のニーズは拡大傾向にあるため、従来は地域密着型を展開していた大手・中堅の通所介護事業者は、通常規模型・大規模型にシフトチェンジして新規開設を行う傾向も見受けられています。

このような状況に加えて、近年の行政動向を踏まえながら、通所介護の未来を考察していきたいと思います。まず1つは、財務省による財政制度等審議会財政制度分科会で提出された軽度者改革の意見提言です。訪問介護の生活援助とともに通所介護の要介護1と2の利用者を介護保険給付から総合事業への移管を促す提言です。これまでにも何度かお伝えしている通り、次回の法改正で実現する可能性は極めて低いですが、中長期で考えれば軽度者改革の議論が進んでいく可能性は十分あり得えます。5年から10年程度先を見据えるならば、介護保険外サービスの確立による新たな収入源の確保や、要介護3以上の中重度者への対応強化など、通所介護事業のビジネスモデルの見直しを検討していかなければならないと思います。

また、昨年4月に行われた令和3年度介護報酬改定での見直し項目をしっかりと分析し、次期介護報酬改定を読み解いた対応も大変重要となってきます。例えば、自立支援・重度化防止への対応や、「LIFE」を中核とした科学的介護への取組み、アウトカム評価などは、次期介護報酬改定において、いっそう評価・拡充されることは確実視されています。多くの事業所では表層的な加算への対応のみに留まっているケースが散見されますが、本質的な取組みに向けた準備をいよいよ進めていくことが重要であると思います。

そしてもう1つ、昨年度の老人保健健康増進等事業(老健調査)において「在宅生活継続にあたり通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護が果たす役割に関する調査研究事業」が行われ、その報告書の中身から読み解けることもあります。コロナ禍の中で果たした通所介護の幅広い多機能の役割が、要介護高齢者の在宅生活の継続に不可欠であるとの前向きな調査結果が示されており、改めて通所介護の価値が見直されていると表現しても過言ではないと思います。

今後も要介護高齢者が増加し続ける人口動態の中、通所介護事業は在宅介護サービスにおける3大機能の1つである「通い」機能の中核サービスであることからも、必要不可欠な事業であることは疑う余地がありません。他方で、制度改正、環境変化が大きくなることも確かであり、時代のニーズと変化に合わせた新しい通所介護のカタチを見出していくことが重要であると思います。

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

  • 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
  • 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役
  • 一般社団法人日本デイサービス協会 名誉顧問
  • 一般社団法人日本在宅介護協会東京支部 監査
  • 一般社団法人全日本業界活性化団体連合会 専務理事
  • その他、介護関連企業・団体の要職を歴任
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