2022.09.28
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【小濱道博の介護戦略塾】令和6年介護保険法改正審議中盤、介護サービス20年を徹底検証する 〜そこに”経営”は存在したのか〜 <第4回>

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令和6年介護保険法改正審議が本格的にスタートしました。年内に取りまとめられ、来年1月の通常国会に、改正介護保険法案が提出されます。今月は、介護保険法20年の歴史を振り返り、令和6年介護保険法改正に備えたいと思います。


【第4回】大規模化の促進策への転換

1.新たな創設サービスの苦戦

小規模多機能型居宅介護は平成18年の介護保険法改正で創設されました。民間で提供されていた、通い、訪問、宿泊を提供していた宅老所をモデルとして、中重度者の在宅ケアを支援するサービスです。介護報酬は定額制を取っています。誕生して10年を過ぎても、未だに経営が難しいサービスというイメージが強く、半数以上が事業収支がトントンか、赤字であるとされます。その原因は、サービスのコンセプトが分かりにくいことが第一です。すでに訪問介護、通所介護、短期入所という介護サービスが普及した中で、このサービスを選択する理由が伝わりにくいと言えます。また、内部に施設ケアマネジャーが配置されることから、居宅介護支援事業所にとって、紹介のメリットが無い事も大きいでしょう。既存のサービスを必要に応じて組み合わせれば良いという認識も根強くあります。比較的、経営が安定しているのは、高齢者住宅との併設型です。単独での事業運営は苦戦しているのが現状です。小規模多機能型居宅介護をベースに、重度者を想定した複合型サービスは平成24年に創設されました。その名称では、サービス内容がイメージしにくいとの理由で、平成27年に看護小規模多機能型居宅介護に名称が変更されました。折しも、人手不足が顕著化した時期と重なり、看護職員の確保に苦戦することも多くありました。

定期巡回随時対応型訪問介護看護は、平成24年に創設されたサービスです。中学校の通学区をエリアと捉えて、そのエリアに1拠点設置することが基本とされました。エリアを一つの介護施設と見立てて、あたかも介護職員が施設で有るが如くに定期的な訪問サービスを提供し、ナースコールに対応するように、コールセンターを設けて急な呼出にも随時対応します。当初は経営を安定させる目的から、有料老人ホームなどの高齢者住宅の入居者中心のサービスを認めました。平成30年改正で、同一建物の利用者の報酬が減額され、地域へのサービス提供の方向が示されたのです。このサービスも高齢者住宅に併設することで基本収支を安定させ、地域にサービス提供範囲を拡大することが基本的なビジネスモデルとなります。いずれのサービスも、当初から中重度者を前提に設計されたサービスのため、軽度者の介護報酬は極端に低くなっています。いずれの場合も、複数の介護サービスや拠点を増やす事で利用者の裾野を拡大して、利用に結びつける経営規模の拡大が成功に直接するサービスと言えます。

2.注目される保険外サービスと共生型サービス

介護保険サービスは、利用者にとって必要最小限のサービスを提供します。100%必要なサービスを求める場合は、保険外サービスを利用することになります。平成28年9月5日、公正取引委員会は「介護分野の改革を促す報告書」を公表しました。介護保険サービスと保険外サービスを同時一体的な提供を可能とすることに触れています。平成28年9月12日、当時の安倍総理を座長とする第一回未来投資会議が開催され、ここでも介護保険サービスは公的保険外サービスとの組み合わせが必要と打ち出されました。これによって介護保険制度における介護保険外サービス推進のための規制緩和の可能性が高まったのです。平成28年10月6日、政府の規制改革推推進会議において、今後の議論の論点の一つに介護サービスの多様化を置くことを決めました。介護保険サービスと介護保険外サービスを併用する「混合介護」を促進するための議論がスタートしたのです。その後、平成30年9月28日、「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」が発出され、通所サービスを中心に混合介護に関する規制緩和が実現します。さらに、東京都豊島区を特区として、混合介護(豊島区では、選択的介護)の実験モデルがスタートしました。また、平成30年度制度改正において、介護保険サービスと障害福祉サービスを一体的に提供する「共生型サービス」の許認可もスタートしました。今、介護サービスは一気に多様化の時代を迎えようとしています。今後は、この波に乗ることが重要といえます。令和6年制度改正でも、スケールメリットの追求による利益率の向上による事業規模の拡大、複数の事業を併設する多角経営化が急務となっています。その中でも、大きく注目されているのが、介護保険外サービスの市場です。

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出典:国家戦略特別会議 資料3:東京都提出資料

小濱先生.jpg 小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表

株式会社ベストワン 取締役

一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事

C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。

介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。

全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。

介護経営の支援実績は全国に多数。

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