2022.09.09
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【斉藤正行のはなまる介護~現場に寄り添うこれからの介護業界展望~】第9回「ケアプランデータ連携システム構築のゆくえ」

長引くコロナ禍による社会及び生活のあり様が大きく変化を遂げている中で、在宅介護の領域において最大の課題であると認識され続けてきたケアマネジャーと各在宅事業所のデジタル連携についてもいよいよ新たなステージに向けて大きく動き出し始めることになりました。

コロナ禍による「新しい生活様式」が介護業界においても数多くの変化をもたらしています。とりわけ、オンライン化・DX(デジタルトランスフォーメーション)化が、従来は比較的苦手意識が強く、忌避されてきた医療・介護業界に否応なく導入に向けた機運が高まってきています。合わせて介護現場における構造的な人手不足の問題もデジタル化に向けた加速の大きな一因となっています。今後も益々、高齢者人口は増加し続け、介護を必要とする需要は拡大し続けるものの、生産年齢人口・労働人口は今後、急速に減少していく人口動態となります。そのような状況の中で、介護従事者の確保に向けて、政府は様々な対策を講じています。介護職の処遇改善に向けた支援策、外国人材の活用に向けた支援策、介護の魅力発信に向けた支援策などに加えて、生産性の向上を実現するための支援策は特に重要視されています。生産性の向上の実現のためには、より少ない人数や時間工数で質の変わらない介護サービスを提供していくことが求められています。そのために、ICTツールの現場での積極的な活用は不可欠であり、更には、従来は紙管理が基本であったケアプランや記録等についてもデジタルデータでの保管が可能となるような制度の見直しも進められており、現場での実践が始まっているところです。

政府もいよいよこの分野に向けた支援策の拡充を様々に推進しています。押印が必要な文書を大幅に削減し、保管すべき書類のデジタル化を推進するとともに、今後は、指定申請など行政提出書類のオンライン化や、電子申請の仕組みの導入に向けた準備も進められています。そして、現在、実証事業が進められている大変注目の取組みが『ケアプランデータ連携システム構築事業』であります。医療と介護連携の実現を進めていく必要性は常に議論され続けてきましたが、そもそも介護現場においては、介護事業所間の連携においてもIT連携が進んでいないという課題があります。介護事業所間の書類のやりとりはほとんど紙で行われており、FAXによる書類のやりとりが主流となっており、効率性の観点からも大きな課題であると指摘され続けていました。一部、先進的な取組みを行っている事業者では社内・事業所内のデジタル化が促進されているケースも多く見受けられますが、他事業所とのやりとりの際には相手側の事業所がデジタル対応していなければ、紙でのやりとりを強いられることとなります。とりわけ在宅介護事業所においては、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが中核的役割を担っているものの、ケアマネジャーの多くが総じてデジタル化への対応に遅れているとの課題指摘もされているところです。

更に、もう1つの課題は、相互システムの連携です。ケアプランや記録、更には介護報酬を請求するレセプトのシステムは、数多のメーカーが商品を開発していることから、事業所が導入しているシステムの仕様が異なることで、データ連携がスムーズに進まないことも多く、IT連携を阻害している大きな要因の1つとなっています。『ケアプランデータ連携システム構築事業』では、居宅介護支援事業所と在宅介護事業所間のケアプランに関連する様々なデータ連携を可能とするシステム構築が計画されており、主要メーカーや事業所と共同実証を行っているとこであります。実証事業は緒に就いたところであり、実現に向けては、まだまだ多くの時間を要することが予測をされています。そもそも全国一律のプラットフォームとなるデータ連携が実現され得るのかどうかは未知数でありますが、それでも、実証事業の今後の推移には期待を持ちながら、着目していきたいと思っています。

斉藤 正行氏

  • 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
  • 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役
  • 一般社団法人日本デイサービス協会 名誉顧問
  • 一般社団法人日本在宅介護協会東京支部 監査
  • 一般社団法人全日本業界活性化団体連合会 専務理事
  • その他、介護関連企業・団体の要職を歴任
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