2022.08.31
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【小濱道博の介護戦略塾】業務継続に向けた取組の強化(BCP)〜自然災害編〜 【第4回】

前回:【小濱道博の介護戦略塾】業務継続に向けた取組の強化(BCP)〜自然災害編〜<第3回>の続き

④例えば通所サービスはどうやって作ればいいのか?

通所サービス固有の検討事項があります。

●BCP委員会で作成を進める

BCPの作成は全社で取り組むものです。そのためにBCP委員会を設けます。構成メンバーは、各拠点、各サービスの管理者または責任者が委員として参画します。拠点が1拠点または少数の場合は、各部署の責任者等で委員会を構成します。

●⑴ 平時からの対応

台風などの場合は、天気予報や警報で予測が出来ますので、担当の居宅介護支援事業所と相談して、その日の利用を前倒しするなどして、その日は臨時休業とするなどの事前対策を取ることが出来ます。しかし、地震や局地的な集中豪雨などの事前予想は困難です。サービス提供中に被災した場合に備えて、利用者家族や病院などの緊急連絡先の把握にあたって、複数の連絡先や連絡手段(固定電話、携帯電話、メール等)を把握しておきます。 また、居宅介護支援事業所と連携して、在宅の利用者への安否確認の方法等をあらかじめ整理しておきます。 平常時から、地域の避難方法や避難所に関する情報を事前確認して、地域の関係機関(行政、自治会、職能・事業所 団体等)と良好な関係を作るよう工夫することが必要です。

●⑵ 災害が予想される場合の対応

台風など、事前に甚大な被害が予想される場合などでは、当日の通所サービスの休止や時間の短縮を余儀なくされることを想定して、あらかじめBCPに、休止や時間短縮の基準を定めておきます。居宅介護支援事業所にも、その基準等を情報共有した上で、利用者やその家族にも事前に説明します。 その上で、必要に応じ、サービスの前倒し等も検討します。

●⑶ 災害発生時の対応

2020年春のコロナ禍で初めての非常事態宣言が出された時、多くのデイサービスが1ヶ月から2ヶ月の休業を選択しました。北海道や熊本での最大震度7以上の大地震でも、一定期間の休業を選択した事業所は決して少なくありませんでした。特に北海道では地震の影響によるブラックアウトで数週間の休業となった事業所も多かったようです。液状化で事業所建物が傾くなどの被害になった場合は、移転を選択せざる終えない状況となります自然災害の影響で、デイサービスの提供を長期間休止する場合は、居宅介護支援事業所と連携して、必要に応じて他事業所の訪問介護サービス等への変更を検討します。

●⑷ サービス利用中の被災の場合

サービス利用中に被災した場合は、まず第一に利用者の安否確認を行った後、あらかじめ把握している緊急連絡先を活用して、利用者家族などへの安否状況の連絡を行います。このとき、誰もが安否確認で電話等に繋げる為に、一時的に電話回線がパンクして利用出来ない状況も想定されます。事前に把握しているメールやLINE,SNSなど複数の方法で連絡を試みます。利用者の安全確保を最優先に状況を把握、検討して、家族への連絡状況を踏まえて、順次利用者の帰宅を支援します。可能であれば利用者家族の迎えなどの協力も依頼します。

●⑸ 帰宅困難時の対応

2018年7月の西日本豪雨では、野呂川ダムの緊急放水が各地の被害を拡大しました。2021年8月の中国、九州地方の集中豪雨は、西日本豪雨の雨量を超えた地域もあり、多くの地域で冠水や土砂崩れが発生しました。台風などには比較的敏感ですが、大雨については危機意識が若干、楽観的な見方をする場合もあります。そのため、デイサービスの休業の判断が遅れた場合、利用者は事業所に於いて被災する事になります。想定外の大雨や想定外のダムの緊急放水などで河川が氾濫して、道路が冠水した場合や地震で道路が陥没や隆起した場合、液状化で道路が波打っている場合など、デイサービスの送迎車の利用が困難な場合も想定されます。その場合、利用者を如何にして帰宅させるかの手段を検討します。状況によっては、事業所での宿泊や近くの避難所への移送も考慮しなければなりません。冠水や道路自体に被害が出ている場合は、家族の迎えも期待出来ません。

●⑹ 事業所での宿泊での対応の場合

BCPでは最悪の状況を想定して、その対策を検討しなければなりません。デイサービスにおける最悪の状況の一つに、道路の冠水などで送迎車が利用出来ず、事業所での宿泊を余儀なくされることがあります。その場合、デイサービスでは人数分の寝袋などの寝具は準備されているか。また、停電や断水というライフラインが止まることも想定されますので、非常食や衛生用品、ランタンなどの簡易な照明器具の備蓄は行われているか。下水道などが使えない場合、水洗トイレの代わりとなる簡易トイレなどは準備されているか。などを検討していきます。必要に応じて、特に必要と判断される備蓄品は改めて購入を検討するなどの対策が必要となります。可能であれば、自家発電機などの準備も必要かも知れません。緊急連絡や情報の収集のため、スマホやノートパソコンの充電用に自動車のバッテリーから充電出来るコンバーターなども購入を検討します。

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表 株式会社ベストワン 取締役 一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事 C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。

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