介護インカムの有用性|導入するメリット・失敗しない選び方などを解説
2026.03.12
「介護職員間の連携がうまくいかない」「情報共有に時間がかかる」といった悩みがある場合には、介護インカムの活用がおすすめです。
しかし、いざ介護インカムの導入を検討しようにも「種類が多くてどれを選べばいいかわからない」「高価な買い物だから失敗したくない」といった不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、介護インカムの基本的な知識・具体的なメリット・自施設に最適な製品を選ぶための実践的なポイントなどを解説します。
ぜひ介護インカムを導入する際の参考にしてください。
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介護業界で導入されるICTや導入の進め方などについて解説していますので、ぜひご覧ください。
介護インカムとは

介護インカムは、介護施設や在宅介護の現場において、介護職員間の連携を強化するための無線通信機器です。
従来のPHSや固定電話とは異なり、複数の介護職員が同時にハンズフリーで会話できるため、利用者の対応・状況報告・緊急時の応援要請・日々の細かな情報共有などをリアルタイムに実施できます。
介護インカムを導入すれば介護職員間のコミュニケーションが円滑になり、迅速な対応と質の高いケアの提供につながります。
また、情報伝達のスピードアップにより、介護業務の効率化にも役立つでしょう。
介護インカムは近年、介護現場におけるICTツールとしての重要性が高まり、多くの施設で導入が進んでいます。
介護職員の負担軽減・利用者の安全確保・介護サービスの質の向上のため、介護インカムの導入を検討してみてください。
介護インカムの種類

介護インカムは、通信方式によって主に以下のタイプに分けられます。
- トランシーバータイプ
- IP無線機タイプ
- スマートフォン連携タイプ
それぞれのタイプにメリット・デメリットがあり、施設の規模や建物の構造、既存の通信環境によって最適なものが異なります。
自施設の状況と照らし合わせながら、どのタイプがもっとも適しているか検討しましょう。
トランシーバータイプ
トランシーバータイプは特定小電力トランシーバーとも呼ばれ、古くからある身近なタイプのインカムです。
購入後すぐに使用でき、導入コストが比較的安いのが魅力です。
ただし、通信距離が短く、壁や階層などの障害物に弱いといったデメリットがあります。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| メリット | ・購入後すぐに使える ・端末代金のみで導入でき、ランニングコストがかからない ・操作がシンプルで誰でも使いやすい |
| デメリット | ・通信距離が短い(約100m〜500m) ・鉄筋コンクリートの建物や階層をまたぐ通信には不向き ・ほかの電波と混線する可能性がある |
| おすすめの施設 | 小規模な施設・ワンフロアの施設・屋外での利用が中心の施設 |
IP無線機タイプ
IP無線機タイプは、携帯電話の通信網(4G/LTE)を利用して通信するタイプのインカムです。
通信距離に制限がなく、日本全国どこにいても通話が可能です。
またデジタル通信のため混信の心配がなく、高い秘匿性を保てる点も特徴です。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| メリット | ・携帯電話の電波が届けば、距離の制限なく通信できる ・混信や盗聴のリスクが低く、セキュリティが高い ・災害時などでも通信が安定しやすい |
| デメリット | ・端末代金が高価な傾向にある ・毎月の通信料(ランニングコスト)が発生する ・携帯電話の電波が届かない場所では利用できない |
| おすすめの施設 | 大規模な施設・複数の拠点を持つ法人・訪問介護事業所 |
スマートフォン連携タイプ
スマートフォン連携タイプは専用のアプリをスマートフォンにインストールして使用する、もっとも新しいタイプのインカムです。
Wi-Fi環境や携帯電話の通信網を利用するため、IP無線機と同様に通信距離の制限がありません。
普段使い慣れたスマートフォンを利用できる、ほかの介護システムと連携できるなど、高い拡張性が最大の魅力です。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| メリット | ・私物や法人契約のスマートフォンを端末として利用できる ・ナースコールや見守りセンサーなど、外部システムと連携できる ・音声のテキスト化や翻訳など、アプリケーションならではの機能が豊富 |
| デメリット | ・安定したWi-Fi環境の構築が不可欠 ・スマートフォンのバッテリー消費が早くなる可能性がある ・初期設定や運用ルールの整備が必要 |
| おすすめの施設 | Wi-Fi環境が整備されている施設・DX化を推進したい施設・多機能性を求める施設 |
介護インカムの導入メリット

介護インカムを導入すると、以下のメリットが期待できます。
- 業務効率化
- 介護職員の負担軽減
- ケアの質と安全性の向上
- 人材確保と定着
- 介護報酬加算の取得
介護インカムを導入すべきか迷っている事業者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
業務効率化
介護インカムによるスムーズな連携により必要な情報がリアルタイムで共有され、指示や報告も迅速に行えるため、無駄な動きを最小限に抑えられます。
特定の介護職員を探し回ったり、連絡のために施設内を歩き回ったりしていた時間を、大幅に削減できるでしょう。
その結果、介護職員は本来の業務である入居者へのケアに集中できる時間が増加し、質の高いサービスを提供できるようになります。
また緊急時の対応や、複数の職員が連携して行うケアなどがスムーズになり、入居者の安全・安心の確保にも役立ちます。
介護職員の負担軽減
介護インカムは、職員の身体的・精神的な負担を大きく軽減できるツールです。
不要な移動が減ることで広い施設内を走り回る必要がなくなり、身体的な疲労が軽減されるのはもちろん、常に仲間とつながっている安心感が精神の安定をもたらします。
特に、経験の浅い新人職員や、人手が少なくなりがちな夜勤帯において、介護インカムの効果は大きいです。
迅速な情報共有や指示伝達が可能になることで、的確な判断とスムーズな連携をサポートできれば、より安全で質の高い介護サービスの提供につながります。
ケアの質と安全性の向上
介護インカムがあれば些細な変化や兆候を即座に伝達できるようになり、チーム全体ですぐ対策を講じられるようになります。
例えば、ある利用者の歩行が不安定になったという情報をすぐに共有すれば、転倒リスクを回避するためのサポートを迅速に行えます。
また、細やかな情報をリアルタイムで共有することで、利用者の状況に合わせた、より質の高いケアを提供できるようになります。
食事の際の嚥下状況や、体調の変化などを共有することで、適切な食事介助や体調管理が可能です。
人材確保と定着
働きやすい職場環境の構築は、職員の定着率向上と人材不足の解消に不可欠です。
介護インカム導入により業務効率化を行うことで介護職員の負担が減れば、退職を防ぐことにもつながります。
さらに、ICTを積極的に活用した「スマートな働き方」は、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を実現します。
柔軟な働き方の実現は、人材獲得競争において大きなアドバンテージとなり、優秀な人材を惹きつける強力なアピールポイントとなるでしょう。
介護報酬加算の取得
介護インカムの導入により、「生産性向上推進体制加算」などの算定要件を満たす可能性があります。
加算を取得することで、介護施設などの事業所の収益向上が見込めます。
収益が向上すれば職員の賃金アップのほか、労働環境の改善にもつなげることが可能です。
さらに、得られた資金を他のICT機器への投資に回すことで業務効率化を促進し、さらなる生産性向上も目指せるでしょう。
参照:令和6年度介護報酬改定生産性向上推進体制加算について|厚生労働省
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介護インカム導入費用の内訳

介護インカムの導入にかかる費用は、主に初期費用とランニングコストに分けられます。
どの種類のインカムを選ぶかによって、費用の構成は大きく異なります。
予算計画を立てるため、費用の内訳を正しく理解しておきましょう。
| インカムのタイプ | 初期費用(端末1台あたり) | ランニングコスト(月額) |
| トランシーバー | 約15,000円 〜 40,000円程度 | 0円 |
| IP無線機 | 約60,000円 〜 90,000円 | 約2,000円 〜 3,500円 |
| スマートフォン連携型 | 0円 〜 約30,000円 | 約600円 〜 1,500円 |
長期間利用するなら買い切り型の方がコストを抑えられますが、多様な機能を使ったり、機能のアップデートを受けたりするなら、月額料金が発生するタイプがおすすめです。
介護テクノロジー導入支援事業の活用
介護インカムの導入は「介護テクノロジー導入支援事業」などの対象となる可能性があり、積極的に活用することで導入コストを大幅に抑えられます。
補助金の対象となる機器や補助率、申請期間は自治体によって異なります。
まずは、事業所がある都道府県や市区町村の担当窓口に問い合わせてみましょう。
最新の情報を確認し、計画的に申請準備を進めてください。
介護インカムの選び方

自施設にとって最適な介護インカムを導入するためには、価格や機能のカタログスペックだけで判断してはいけません。
実際の現場で使えるツールを選ぶためには、以下のポイントを押さえる必要があります。
- 施設に合った通信方式を選ぶ
- 快適な装着タイプのものを利用する
- 外部システムとの連携の可否を確認する
- サポート体制とセキュリティを万全にする
- 無料デモ機で現場の職員と使用感を試す
本章では、導入後に後悔しないための選び方を解説します。
施設に合った通信方式を選ぶ
介護インカムの通信の安定性は、使い勝手を左右するもっとも重要な要素です。
施設の構造や広さ・Wi-Fiの整備状況などを考慮して、最適な通信方式を選びましょう。
例えば、以下の観点を意識してみましょう。
| 建物・環境 | 適した無線機 | 備考 |
|---|---|---|
| ・鉄筋コンクリートの建物 ・階層が多い施設 | ・IP無線機 ・スマートフォン連携タイプ | 電波が届きにくいトランシーバータイプは不向き。 |
| Wi-Fi環境 | スマートフォン連携タイプ | 施設全体をカバーする安定したWi-Fi環境が必須。導入前に専門業者による電波調査を推奨。 |
自施設に不適切な通信方式のインカムを導入してしまうと、通信範囲の不足や混線によるノイズ・バッテリーの消耗といった問題が発生します。
その結果、かえって介護職員間の連携がしにくくなり、業務の非効率化を招く恐れがあります。
導入前には必ず専門業者に相談したうえで電波状況の調査やテスト運用を行い、自施設に最適な通信方式のインカムを選ぶようにしましょう。
快適な装着タイプのものを利用する
介護職員が毎日長時間身につけるものだからこそ、介護インカムの装着感は非常に重要です。
耳への負担が少ない製品を選ぶことで、介護職員のストレスを軽減できます。
| 装着タイプ | 特徴 |
|---|---|
| イヤホン型 | ・安価で導入しやすい ・長時間の使用で耳が痛くなることがある |
| ヘッドセット型 | ・マイクが口元にあるため音声がクリア ・介助の際に邪魔になる可能性がある |
| 骨伝導型 | ・耳を塞がないため圧迫感がない ・周囲の音も聞こえるため安全性が高い |
介護インカムの導入を検討する際はさまざまな介護職員に実際に装着してもらい、使用感をチェックしましょう。
装着時の快適さ・操作のしやすさ・音声のクリアさなど、実際に使用してみないとわからない点が多々あります。
また、介護インカムの種類によって機能や特徴が異なるため、複数の機種で比較検討することも重要です。
介護職員からのフィードバックを参考に、業務効率化やコミュニケーション改善につながるインカムを見つけましょう。
外部システムとの連携の可否を確認する
業務効率を最大化するためには、介護インカムがほかの介護システムと連携できるかどうかが重要です。
スマートフォン連携タイプは、連携機能に優れている製品が多いため、積極的に活用しましょう。
特に以下のシステムと連携できると、業務のさらなる効率化が期待できます。
- ナースコール
- 見守りセンサー
- 介護記録ソフト
- ビジネスチャットツール
上記のシステムからの通知がインカムに直接届くことで、職員は複数の端末を持ち歩く必要がなくなり、情報確認の手間が大幅に削減されます。
サポート体制とセキュリティを万全にする
精密機器である介護インカムの導入においては、メーカーのサポート体制も重要です。
また、利用者の個人情報に関わる会話をすることもあるため、セキュリティ対策も欠かせません。
介護インカムを導入する際は、以下のポイントを意識しましょう。
| 確認すべきポイント | 詳細 |
|---|---|
| サポート体制 | ・導入時の初期設定をサポートしてくれるか ・操作研修などを実施してくれるか ・トラブル発生時に迅速に対応してくれるか |
| セキュリティ | ・通話内容が暗号化されているか ・第三者による傍受のリスク対策がされているか |
介護インカムを初めて導入する際は、運用方法やルールに関する研修が不可欠です。
介護職員全員がインカムの機能を理解し、適切な使用方法を習得することで、スムーズな連携と迅速な対応が可能になります。
加えて、プライバシー保護に関する注意点・情報共有の範囲などを明確に伝えることで、情報漏洩などのリスクを減らせます。
研修後も、定期的な見直しやフォローアップを行い、運用状況を改善していきましょう。
無料デモ機で現場の職員と使用感を試す
最終的な製品を決定する前に、無料デモ機の試用は必須です。
カタログスペックだけでは判断できない、実際の音声品質・操作性・電波の届き具合・バッテリーの持ちなどを、実環境で確認しましょう。
試用期間中は、特定の介護職員だけでなく、さまざまな部署や役職の職員に積極的に使用してもらうことが大切です。
それぞれの視点から意見を集約することで、製品のメリット・デメリットを多角的に評価できます。
現場のリアルな声を取り入れ、全員が納得できる介護インカムを選定することが、スムーズな導入と長期的な定着につながります。
介護インカムの有用性は、職員間の連携を「その場で」早くする点にあります。複数人がハンズフリーで会話できるため、状況報告や応援要請、細かな申し送りをリアルタイムに回せ、探し回りや電話連絡のための移動が減ります。その分、利用者対応に集中でき、転倒リスクなどの兆候共有も早まり安全性とケアの質が上がります。また、新人や夜勤帯でも“つながっている安心感”が支えになります。
さらに、ナースコールや見守りセンサー、介護記録ソフト等と通知連携できるタイプなら、情報確認の手間を減らし、端末の持ち歩きを最小化できます。導入時は通信方式(トランシーバー/IP無線/スマホ連携)を建物構造やWi-Fi環境で選び、デモ機で電波・操作性・装着感・バッテリーを確認。初期費用と月額費用の違いも踏まえ、補助事業の対象可否を自治体で確認します。暗号化などのセキュリティ、情報共有の範囲、メーカーのサポート体制、研修と定期見直しまでセットで考えるのが要点です。最後は現場で実務に当たっている多職種の声を集めて決定することが肝要です。
なお、株式会社ワイズマンでは収益率改善・人材不足解消・業務効率化につながる「ICT導入による介護DX完全ガイド」を無料で配布中です。
介護業界で導入されるICTや導入の進め方などについて解説していますので、ぜひご覧ください。
まとめ:介護インカムを活用すればサービスの質向上を図れる

介護インカムは、人手不足に直面する介護現場の課題を解決するための強力なツールです。
介護職員間のコミュニケーションを円滑にし、業務の無駄を徹底的に排除することで、職員の負担を軽減します。
効率化によって生まれた時間を利用者と向き合う時間に変えられるため、ケアの質の向上につながります。
導入の成功は、自施設の課題や環境に合った最適な製品を選ぶことから始まります。
本記事で解説した選び方のポイントを参考にして、現場の介護職員とともに検討を進めてみてください。
監修:梅沢 佳裕
人材開発アドバイザー
介護福祉士養成校の助教員を経て、特養、在宅介護支援センター相談員を歴任。その後、デイサービスやグループホーム等の立ち上げに関わり、自らもケアマネジャー、施設長となる。2008年に介護コンサルティング事業を立ち上げ、介護職・生活相談員・ケアマネジャーなど実務者への人材育成に携わる。その後、日本福祉大学助教、健康科学大学 准教授を経て、ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表として多数の研修講師を務める。社会福祉士、介護支援専門員、アンガーマネジメント・ファシリテーターほか。

