介護業界におけるAIの有用性|導入するメリットや活用方法などを解説
2026.01.23
人件費の高騰や人手不足もあり、現在は業務効率化の一環としてDX推進に加えAIの導入を検討する介護事業所が増えています。
現在は業務効率化の一環として、AIの導入を検討する介護事業所が増えています。
しかしどのようにAIを導入すれば良いのか、悩んでいる介護事業所は少なくないでしょう。
本記事では、介護業界におけるAIの有用性に加え、活用事例や導入する際のポイントなどについて解説します。
介護事業所でAI導入を検討する際の参考にしてください。
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介護業界で導入されるICTや導入の進め方などについて解説していますので、ぜひご覧ください。
目次
介護業界におけるAIの有用性

昨今、介護業界においてAIの有用性が注目されるようになりました。
AIを活用すればアナログな書類作成業務や利用者への対応などをある程度自動化できるため、業務の効率化が進みます。
AIの有用性が高まっている背景には、介護業界が抱える「2025年問題」が関係しています。
2025年問題とは、団塊世代が75歳以上に達し、介護ニーズが爆発的に増加することに起因する問題の総称です。
以下のグラフを見てみましょう。

上記のように介護職員の不足が顕著となる一方、昨今の介護業界は人手不足が深刻化しています。
そのため、介護業界では少ない人員でもサービスの質を維持し、業務を効率的に実行できる体制作りが課題となりました。
さまざまな業務を自動化できるAIは、現場の課題を解決できるツールとして近年注目を集めています。
厚生労働省も介護業界での導入実態を発表するなど、AIの活用を後押しするようになりました。
参照:介護人材確保に向けた取組|厚生労働省
介護分野におけるAI等の活用状況|厚生労働省
介護現場でAIを導入するメリット

AIの主なメリットとして、以下の3点が挙げられます。
- 業務の効率化
- 介護サービスの質向上
- 利用者の利便性向上
メリットを把握すれば、AIの効果をより具体的に理解できます。
業務の効率化
AIのもっとも大きなメリットは、定型的な業務を自動化・効率化できる点です。
事務作業や見回り業務などをAIが代替することで、介護職員はより専門性が求められる業務に集中できるようになります。
業務を効率化することで全体の業務時間が短縮され、残業の削減や働き方改革にもつながります。
介護職員の負担が軽減されれば、離職率の低下を実現できる可能性が高まります。
そのためAIの活用は、貴重な人材を守るうえでも効果的な取り組みです。
介護サービスの質向上
介護サービスの質向上においても、AIは役立ちます。
業務が効率化され、時間に余裕が生まれることで、職員は利用者と向き合う時間をより多く確保できます。
丁寧なコミュニケーションや個別ケアは、利用者満足度の向上に直結します。
また、AIは膨大なデータを客観的に分析することが得意です。
個々の利用者のデータを基にして最適なケアプランを提案することで、画一的ではない、質の高いサービス提供が可能になります。
利用者の利便性向上
AIは利用者の利便性向上にも役立つツールです。
例えば、24時間体制の見守りシステムがあれば万が一の事態にも迅速に対応できるため、大きな安心感をもたらします。
また、コミュニケーションロボットは、会話の機会が少ない利用者の孤独感を和らげる話し相手として活用可能です。
加えて、利用者の家族への対応でもAIは活用できます。
AIを利用したチャットボットや自動応対システムがあれば、介護職員が不在のタイミングでも応対が可能です。
介護現場でAIを導入するデメリット

多くのメリットが期待できるAIですが、導入にあたっては以下のようなデメリットも存在します。
- 導入コストがかかる
- ITリテラシーが低いと定着しない
- 現場での運用がイメージしにくい
良い面だけでなく、現実的な課題にも目を向けていきましょう。
導入コストがかかる
AIシステムや介護ロボットの導入には、高額な初期費用がかかる場合があります。
また、システムの利用料やメンテナンス費用といった月々のランニングコストもかかります。
資金力に限りがある中小規模の介護事業所の場合、導入・運用にかかるコストが大きな障壁となりかねません。
ただし、国や地方自治体が提供する補助金や助成金制度を活用することで、負担を軽減できる場合もあります。
補助金制度や助成金制度はこまめにチェックしましょう。
ITリテラシーが低いと定着しない
介護現場では、パソコンやスマートフォンの操作に不慣れな介護職員も少なくありません。
新しいシステムを導入しても、「操作が難しい」「覚えるのが大変」といった理由で、結局使われなくなってしまうケースがあります。
せっかく優れたツールを導入しても、定着しなければ意味がありません。
導入前には、全職員を対象とした丁寧な研修会を実施して使い方に慣れていってもらうことが重要です。
誰でも直感的に使える、シンプルな操作性のツールを選ぶのも効果的です。
現場での運用がイメージしにくい
AIは便利な一方、利便性が高いために具体的な運用方法をイメージできないと悩む方は少なくありません。
製品のカタログや説明だけでは、実際の業務にどのように組み込めば良いのか、具体的なイメージが湧きにくいこともあります。
「便利そうだ」と思って導入したものの、既存の業務フローと合わず、かえって手間が増えてしまうこともあるでしょう。
失敗を防ぐため、導入を決定する前にメーカーにデモンストレーションを依頼したり、一定期間のトライアルが可能か確認したりしましょう。
実際に使用することで導入のイメージが具体的になれば、活用方法も見えてきます。
現場の介護職員を交えて導入計画を立てることも、スムーズな定着には不可欠です。
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介護現場におけるAIの活用事例5選

本章では、以下のようなAIの活用事例について解説します。
- 見守り・安全確保
- 記録・事務作業
- ケアプラン作成
- 利用者とのコミュニケーション
- 送迎・リハビリ支援
実際にAIを運用する際の参考にしてください。
見守り・安全確保
AIを搭載した見守りシステムを活用すれば、利用者の見守りや安全確保に役立ちます。
介護施設におけるもっとも大きな課題の一つが、利用者の転倒・転落事故の防止です。
特に夜間は職員の数も限られるため、すべての利用者を常に見守ることは困難でした。
しかしAI搭載の見守りシステムがあれば、現場の課題を解決可能です。
AIを搭載した見守りシステムは、センサーを用いて心拍・呼吸・睡眠状態・離床などのバイタルデータを計測し、利用者の状態をチェックします。
そしてAIがデータを解析し、利用者がベッドから起き上がったり、転倒の危険性が高まったりした場合にのみ、職員の持つスマートフォンやタブレットにアラートを送信します。
必要な時にのみ通知がくる仕組みであるため、介護職員は不要な巡回の負担から解放されるでしょう。
また、AIと連動することで、緊急事態が発生しても迅速に対応できるようになります。
記録・事務作業
記録・事務作業の自動化も、AIの導入によって得られるメリットです。
介護業務のなかでも、多くの時間を費やすのが介護記録の作成です。
ケアの合間にメモを取り、業務終了後に事務所に戻ってパソコンに入力するという作業は、職員にとって大きな負担となっていました。
しかしAIを活用した記録システムがあれば、作業を効率化できます。
例えば、職員がインカムマイクに向かって「〇〇様・10時半・お茶を100ミリリットル摂取」と話すだけで、AIが音声を自動でテキスト化し、介護記録システムにリアルタイムで入力できます。
介助を行いながら記録が完了するため、事務所での入力作業が不要になるうえに、多忙なときでもスムーズな記録が可能です。
さらにAIを事務作業に取り入れることで記録の抜け漏れや誤記を防げるため、情報の正確性も上がります。
ケアプラン作成
ケアプランの作成でも、AIは活用できます。
質の高い介護を提供するためには、個々の利用者の状態に合わせた適切なケアプランが不可欠です。
しかし、ケアプランの作成はケアマネジャーの経験や知識に依存する部分が大きく、負担も大きい業務でした。
AIを用いたケアプラン作成支援システムがあれば、データに基づいた客観的な視点でのサポートを受けられます。
例えば、日々のバイタルデータ・食事量・活動量・睡眠パターン・過去のケア履歴といった情報をAIが分析することで、具体的なプランの選択肢が提示されます。
AIの分析をもとにして多角的な視点からプランを検討すれば、利用者の自立支援や重度化防止につながる高品質なケアプランの作成が可能です。
利用者とのコミュニケーション
利用者とのコミュニケーションにAIを活用するケースも少なくありません。
高齢者にとって、他者とのコミュニケーションは心身の健康を維持するうえで非常に重要です。
しかし、施設では介護職員が多忙で、一人の利用者とじっくり話す時間を確保するのが難しい場合もあります。
このような状況で活躍するのが、AIを搭載したコミュニケーションロボットです。
コミュニケーションロボットは、利用者の顔を認識して名前を呼んで挨拶したり、一緒に歌を歌ったり、クイズを出したりと、多彩なコミュニケーションが可能です。
単なるおもちゃではなく、利用者の大切な話し相手となり、孤独感の緩和や精神的な安定に大きく貢献します。
また、AIを搭載したロボットの中には、会話データを分析できるものもあります。
そのため、「最近、同じ単語を繰り返す頻度が増えている」といった認知機能の変化の兆候を検知し、職員に知らせるといった先進的な活用も可能です。
送迎・リハビリ支援
AIを活用した送迎・リハビリ支援も注目すべき取り組みです。
AIは当日の利用者の住所・希望時間・道路の混雑状況などをリアルタイムで分析し、もっとも効率的な送迎順とルートを自動で作成します。
これにより送迎にかかる時間が短縮され、ドライバーの負担軽減やガソリン代の節約につながります。
また、リハビリテーションの分野でもAIは有用です。
AIを活用すれば、カメラやセンサーを利用して利用者の歩行姿勢や関節の動きを三次元で解析し、個々の身体能力に合わせた最適なリハビリメニューを提案してくれます。
AIの提案と専門の職員の経験を組み合わせることで、科学的根拠に基づいた効果的なリハビリテーションの提供が可能です。
介護現場でAIを利用する際のポイント

現場でAIをスムーズに活用するため、以下のポイントを押さえておきましょう。
- デモンストレーションや研修を必ず実施する
- エラーが発生した際の対応を必ず決めておく
- AIに依存しすぎない
- 個人情報の扱いには注意する
AIを適切に利用するうえで、いずれも重要なポイントです。
デモンストレーションや研修を必ず実施する
AIに限らず、新しいシステムを導入する際、介護職員の不安や抵抗はつきものです。
「操作が難しそう」「覚えるのが面倒」といったネガティブな感情は、AI活用の大きな妨げになります。
介護職員の不安を解消するため、導入前にはメーカーの担当者によるデモンストレーションや、全職員を対象とした研修会を実施しましょう。
実際に触れてみることで操作が意外と簡単であることがわかり、具体的なメリットを体感できれば、介護職員も前向きに活用してくれるようになります。
エラーが発生した際の対応を必ず決めておく
AIを運用する中で、エラーやシステムダウンといったトラブルが発生する可能性はゼロではありません。
しかし介護のような仕事において、システムダウンは利用者の命を左右する事態を招くリスクがあります。
AIのエラーに備え、事前に緊急時の対応フローを明確に定めておくことが重要です。
導入前には、以下の事柄を踏まえた規程を策定しておきましょう。
- システムに異常が発生した場合、誰に最初に報告するのか
- メーカーのサポート窓口の連絡先はどこか
- システムが復旧するまでの間、どのように業務(記録や見守りなど)を代替するのか
あらかじめルールを決めておくことで、万が一の際も冷静に対応できます。
AIに依存しすぎない
AIは膨大なデータを基に客観的な提案をしてくれますが、提供してくれるのはあくまで判断材料に過ぎません。
介護の現場では、データだけでは読み取れない利用者の微妙な表情の変化や、その日の気分といった人間的な要素が非常に重要です。
AIからの提案を鵜呑みにするのではなく、必ず介護職員自身の目と経験で最終的な判断を下すことが大切です。
AIはあくまで業務をサポートする「賢いパートナー」と位置づけ、協働の姿勢を持つことが質の高いケアにつながります。
個人情報の扱いには注意する
AIシステムは利用者の病歴や身体状況、日々の生活の様子といった、非常に機微な個人情報を取り扱います。
万が一これらの情報が外部に漏洩すれば、利用者やその家族に多大な迷惑をかけるだけでなく、事業所としての信頼を失うことになりかねません。
導入を決定する前に、導入する予定のシステムが十分なセキュリティ対策を講じているかを確認しましょう。
また、職員ごとにアクセスできる情報の範囲を適切に設定したり、パスワードの定期的な変更を徹底したりするなど、施設内での情報管理ルールを整備することも重要です。
本記事は、介護業界が直面する深刻な人材不足や業務負担の増大といった現実を丁寧に整理したうえで、AI技術の活用が現場をどのように支え得るのかを、具体的な活用場面を交えながら分かりやすく解説しています。AIは介護職員に取って代わる存在ではなく、見守りや記録補助、情報整理などを通じて、日常業務の負担を軽減し、職員の気づきや判断を支援する補助的なツールとして位置づけられています。また、すべての課題を一律に解決できる万能な手段ではないことや、製品の特性や運用方法によって効果に差が生じる点にも適切に触れられており、過度な期待や誤解を招かない構成となっています。さらに、個人情報保護やシステム運用上のリスクにも言及し、現場の実情や体制を踏まえた慎重な活用の重要性を示している点は、実務に携わる読者にとって信頼性の高い、有益な内容といえるでしょう。
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まとめ:AIを適切に活用すれば介護サービスの改善につながる

人手不足や業務負担の増大という深刻な課題に対し、AIは有効な解決策となり得ます。
見守りから記録、ケアプラン作成にいたるまで、AIはさまざまな場面で職員をサポートし、業務の効率化とサービスの質の向上に大きく貢献します。
一方、AIを導入する際には解決したい課題、活用できる場面を具体化し、介護職員が運用できるように準備を進めることが重要です。
必要があれば専門家のサポートを受け、慎重に活用を進めましょう。
監修:梅沢 佳裕
人材開発アドバイザー
介護福祉士養成校の助教員を経て、特養、在宅介護支援センター相談員を歴任。その後、デイサービスやグループホーム等の立ち上げに関わり、自らもケアマネジャー、施設長となる。2008年に介護コンサルティング事業を立ち上げ、介護職・生活相談員・ケアマネジャーなど実務者への人材育成に携わる。その後、日本福祉大学助教、健康科学大学 准教授を経て、ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表として多数の研修講師を務める。社会福祉士、介護支援専門員、アンガーマネジメント・ファシリテーターほか。

