介護事業所の収益改善に効果的な施策とは?赤字脱却と持続可能な経営実現に向けた戦略を解説

2026.01.08

「人材不足が深刻」
「介護報酬が引き下げられている」

多くの介護事業所の経営者様が、このような厳しい現実に直面し、強い危機感を抱いているのではないでしょうか。

実際に、2024年度における介護事業者の倒産件数は過去最多(※東京商工リサーチ調べ)を記録しており、事業の継続そのものが困難になりつつあります。

しかし、収益改善に効果的な施策を実施できれば、赤字脱却と持続可能な経営を実現可能です。

この記事では、介護事業所が赤字経営から脱却し、持続可能で質の高いサービスを提供し続けるための収益改善について詳しく解説します。

漠然とした不安を具体的な行動計画に変え、明日から実践できる戦略をわかりやすく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

介護事業の収益構造と業界の現状

本格的な改善策を検討する前に、まずは自施設の経営状態を客観的に把握するための基礎知識を整理しましょう。

「収益改善」と似た言葉に「収支改善」がありますが、これらの意味を正しく理解することが大切です。

意味焦点
売上そのものを増やす取り組み売上(トップライン)の最大化
収益(売上)と支出(費用)のバランスを整える取り組み利益(ボトムライン)の確保・最大化

介護事業所の収益改善を実現するために、まずは下記のポイントを押さえておきましょう。

  • 介護事業の収益構造
  • 介護事業の平均利益率
  • 介護サービス別利益率の差
  • 黒字・赤字事業所の割合

介護事業の収益構造

介護事業の収益は、下記のシンプルな構造で成り立っています。

売上 ー 経費 = 利益

この利益を最大化するためには、「売上を増やす」もしくは「経費を減らす」のアプローチを実施します。

項目具体的な内容
売上・介護保険サービスからの介護報酬
・各種加算
・保険外サービスの提供による収入
・利用者からの自己負担金
経費人件費(給与、賞与、福利厚生費など)
物件費(家賃、減価償却費など)
水道光熱費(電気、ガス、水道)
消耗品費(おむつ、事務用品など)
その他(車両維持費、採用コスト、リース料など)

介護事業所の収益構造は大きく分けて介護報酬(公的サービス報酬)と、保険外サービスや自費サービスからの収入で成り立っています。

介護報酬は、利用者の「要介護度」「サービス内容」「提供時間・頻度」などに応じて、国・自治体が定める固定の単価で支払われるため、収入の根幹は「サービス提供量×報酬単価」の掛け算です。

一方で、支出の多くを占めるのは人件費やそれに伴う社会保険料、さらに施設維持費、設備費、消耗品費、光熱費、管理費、運営コストなどさまざまです。

また、訪問型サービスでは移動コスト、施設型サービスでは建物の維持管理や清掃費が運営コストに含まれます。

つまり、介護事業の収益は「利用者数・稼働量×単価」の売り上げ構造に加え、「人件費など固定コストの高さ」の構造による制約がポイントです。

介護事業の収益改善には、下記のように多角的な戦略が必要です。

  • 稼働率を高め、空きを減らす
  • 業務効率や運営コストを抑える
  • 高付加価値サービスや自費サービスで収益の幅を広げる

介護事業の平均利益率

最新の「令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要」によると、介護サービス全体の収支差率(利益率)は平均4.7%となっており、一見すると数値は回復傾向にあります。

しかし、実態としては赤字事業所の割合は依然として全体の3〜4割にのぼり、特に小規模事業所や居宅系サービスにおいては厳しい経営状況が続いています。

以前(厚生労働省)の「令和5年度介護事業経営実態調査結果」では2.4%(前年2.8%から低下)と報告されていたように、年度や調査対象によって変動が大きく、決して安定した黒字が見込める状況ではありません。

他業種と比較しても利益率の確保は容易ではなく、わずかな支出増や稼働率の低下がそのまま赤字につながるリスクがあるため、平均値の上昇に安心せず引き続き注意が必要です。

介護サービス別利益率の差

同じ介護事業でも、提供するサービス形態によって利益率には大きな差があります。

自施設のサービスが業界平均と比較して、どの位置にあるのかを把握しておきましょう。

サービス種別令和7年度 収支差率(利益率)
訪問介護9.6%
通所介護(デイサービス)6.2%
介護老人福祉施設(特養)1.4%
介護老人保健施設(老健)0.6%
特定施設入居者生活介護5.3%
居宅介護支援6.2%
引用元:厚生労働省|令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要

訪問介護は、比較的高い利益率を維持していますが、2024年度の介護報酬改定で基本報酬が引き下げられたため、今後の動向には注意が必要です。

黒字・赤字事業所の割合

介護事業所の経営状況を赤字・黒字で比較すると、各事業別の割合は下記のとおりです。

赤字の事業所割合黒字の事業所割合
介護老人福祉施設44.3%55.7%
介護老人保健施設49.3%50.7%
介護医療院39.6%60.4%
訪問介護35.1%64.9%
訪問入浴介護34.1%65.9%
訪問看護38.2%61.8%
訪問リハビリテーション21.0%79.0%
通所介護37.4%62.6%
通所リハビリテーション48.6%51.4%
短期入所生活介護43.2%56.8%
特定施設入居者生活介護27.4%72.6%
福祉用具貸与37.0%63.0%
居宅介護支援40.0%60.0%
定期巡回・随時対応型訪問介護看護20.6%79.4%
夜間対応型訪問介護33.8%66.2%
地域密着型通所介護37.2%62.8%
認知症対応型通所介護40.6%59.4%
小規模多機能型居宅介護40.6%59.4%
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)30.7%69.3%
地域密着型特定施設入居者生活介護45.9%54.1%
地域密着型介護老人福祉施設40.7%59.3%
看護小規模多機能型居宅介護34.4%65.6%
全サービス平均37.5%62.5%
引用元:厚生労働省|令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要

介護事業所全体の約4割が赤字経営であり、収益改善が必要です。

介護事業の収益を圧迫する3つの構造的課題

介護事業の経営は厳しくなっている背景には、業界全体の構造的な課題が関係しています。

課題内容事業所への影響
1. 人材不足と人件費高騰・2025年に約38万人の介護人材が不足する見込み
・採用競争の激化による採用コストの増大
・既存職員の負担増と離職リスク
・人件費率の上昇による利益の圧迫
・サービス提供体制の維持が困難になる
・職員の疲弊によるサービス品質の低下
2. 介護報酬改定の影響・原則3年ごとの改定による収入の不安定化
・2024年度改定での訪問介護の基本報酬引き下げ
・報酬の入金がサービス提供の2カ月後になる資金繰りの課題
・収入の減少による経営悪化
・安定した事業計画の策定が困難
・資金ショートのリスク
3. 物価高騰による運営コスト増・電気、ガスなどのエネルギー価格の上昇
・食材費やおむつなどの消耗品費の高騰
・介護報酬に価格転嫁しにくい構造
・固定費の増加による利益率の低下
・コスト削減努力が追いつかない

これらの課題は相互に関連し合っており、放置すれば経営状況はさらに悪化する可能性があります。現状を正しく認識し、早急に対策を打ちましょう。

人材不足による人件費高騰

介護業界が直面するもっとも深刻な課題は、慢性的な人材不足です。

厚生労働省の試算では、2022年時点で約215万人の介護職員が働いていましたが、2026年には約240万人、2040年には約272万人の人員が必要です。

出典元:厚生労働省|介護人材確保の現状について

対して、少子高齢化に伴う労働人口減少は今後も進み、人材不足は加速する見込みです。

この人材不足は、採用競争を激化させ、結果として採用コストや人件費の高騰を招きます。

少ない人員で現場を回さなければならないため、既存職員の負担は増大し、離職につながる悪循環に陥りかねません。

介護需要高騰による競合との価格競争

高齢者人口の増加に伴い、介護サービスの需要は拡大し続けています。

一見するとビジネスチャンスのように思えますが、一方で新規参入も相次ぎ、地域によっては事業者間の競争が激化しています。

利用者獲得のために価格競争に陥ったり、差別化が図れずに稼働率が伸び悩んだりするケースも少なくありません。

安定した利用者確保のためには、自施設の強みを明確にし、質の高いサービスを提供し続けることが不可欠です。

コロナ禍から変化した需要変動

新型コロナウイルスの感染拡大は、介護業界にも大きな影響を与えました。

特にデイサービスなどでは、感染を恐れた利用控えにより、稼働率が大幅に低下した事業所も多くありました。

現在では需要は回復傾向にありますが、利用者のサービス選択に対する意識は変化しています。

感染対策の徹底はもちろんのこと、多様化するニーズにいかに応えていくかが、今後の利用者獲得の鍵です。

介護事業の収益改善に効果的な戦略

厳しい経営環境を乗り越えるためには、攻めと守りの両面からのアプローチが不可欠です。

具体的には、「売上を増やす」攻めの戦略と、「コストを削減する」守りの戦略を、車の両輪のようにバランスよく進めていく必要があります。

売上増加とコスト削減の2軸で、収益改善を図りましょう。

【売上増加①】加算の戦略的取得で収益を最大化する具体策

介護事業の売上を伸ばす上で、もっとも直接的かつ効果的な方法が「加算」の取得です。

加算とは、専門性の高いサービス提供や手厚い人員配置など、一定の要件を満たすことで基本報酬に上乗せされる報酬のことです。

加算は1件あたりの単価増加は小さく見えるものの、月間・年間で換算すると 数十万円〜数百万円規模の増収につながるケースもあります。

ただし、加算は取得条件が細かく、書類管理が不備だと返戻・返金リスクが発生します。売上増加で収益改善するために、下記の準備を進めましょう。

  • 取得可能な加算の棚卸し
  • 必要書類の管理ルール化
  • 研修・体制整備による継続的な加算維持

これらの整備により、加算を取るだけで終わりにせず、継続的な収益源として確保することが大切です。

【売上増加②】稼働率向上と単価アップを実現する3つの施策

加算の取得と並行して、事業の根幹である「利用者数」と「利用者単価」を高める取り組みも大切です。

ここでは、稼働率向上と単価アップにつながる3つの施策を紹介します。

  1. 質の高いサービスで稼働率・定着率を上げる
    何よりも大切なのは、利用者に選ばれる質の高いサービスを提供することです。
    利用者満足度が高まれば、利用の継続(定着率向上)につながり、安定した稼働率を維持できます。
    また、良い評判は口コミとなり、新たな利用者獲得にもつながります。
  2. 保険外サービスで新たな収益源を確保する
    介護保険の枠内では提供できない、あるいはカバーしきれないニーズに応える「保険外サービス」は、新たな収益の柱となり得ます。
    これにより、介護報酬に依存しない安定した経営基盤を築けます。
    • 保険外サービスの例
      • 通院の付き添い
      • 買い物代行、調理、掃除
      • 旅行や外出の付き添い
      • 見守り、安否確認サービス
      • 趣味活動のサポート
  3. 地域連携の強化で紹介ルートを確立する
    地域のケアマネジャーや医療機関、地域包括支援センターとの良好な関係構築は、安定した利用者獲得に不可欠です。
    日頃から密に情報交換を行い、自事業所の強みや特徴を積極的にアピールすることで、利用者紹介の第一想起となることを目指しましょう。

【コスト削減①】ICT/DX化:業務効率化と人件費最適化の成功法則

コスト削減において、もっともインパクトが大きいのが、経費の大部分を占める人件費の最適化です。

しかし、単に職員を減らすことはサービスの質の低下に直結するため、ICTやDXを活用した「業務効率化」こそが、目指すべき道です。

ICT/DXツールの種類導入による効果
介護ソフト・記録アプリ・記録業務の時間を削減
・情報共有の迅速化、ペーパーレス化
シフト管理システム・シフト作成にかかる時間を大幅に短縮
・移動効率を考慮した最適な人員配置
見守りシステム・介護ロボット・夜間の巡視業務の負担軽減
・転倒などのリスク検知による事故防止
請求ソフト・介護報酬請求業務の自動化、ミス防止
・返戻の削減によるキャッシュフロー改善


ICT・DX化の推進には、初期投資や現場職員のITリテラシー不足が課題です。

国や自治体が実施する「ICT導入支援事業」などの補助金を積極的に活用しましょう。また、職員のITリテラシーを培うために、研修の機会を設け、一部の部署から始めるスモールスタートで成功体験を積みましょう。

【コスト削減②】運営経費の見直し

人件費以外の経費についても、地道な見直しを積み重ねることで、大きなコスト削減につながります。

特に、効果が出やすい3つの項目を見ていきましょう。

経費項目具体的な削減策
水道光熱費・電力会社の契約プランを見直す(新電力への切り替え)
・省エネ性能の高い設備(LED照明、高効率空調)へ更新する
・EMS(エネルギーマネジメントシステム)を導入し、使用量を「見える化」する
消耗品費・おむつや事務用品などを複数のメーカーで比較検討する
・近隣の事業所と連携して「共同購入」し、仕入れ単価を下げる
・ペーパーレス化を推進し、コピー用紙や印刷コストを削減する
採用コスト・職員からの紹介(リファラル採用)制度を強化する
・職場環境を改善し、離職率を低下させることが最大の採用コスト削減につながる
・ハローワークや地域の福祉人材センターを積極的に活用する

これらの施策は、一つひとつの効果は小さくとも、継続することで年単位では大きな差が生まれます。

全職員でコスト意識を共有し、組織全体で取り組むことが成功のコツです。

収益改善にはワイズマンで介護DXを実現しよう!

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ワイズマンは、テクノロジーの力で介護現場の負担を軽減し、職員が本来の専門性である「人へのケア」に集中できる環境を創出します。

収益改善への確かな一歩を、ワイズマンとともに踏み出しましょう。

梅沢 佳裕氏
梅沢 佳裕氏

介護事業の収益を改善するには、まず自事業所の「収支差率」を正しく把握することが出発点になります。最新の調査では平均収支差率は上がっていますが、約4割の事業所が赤字であり、サービス種別によって収益状況に大きな差があります。訪問介護や通所介護は人件費や物価上昇の影響を受けやすく、特養や老健は人材確保や稼働率が収益に直結します。そのため、収益改善には、稼働率の安定、人材の定着、勤務シフトの適正化、必要な加算の確実な取得といった基本的な取り組みが重要です。また、地域区分によって同じサービスでも単位単価が異なるため、自事業所の地域特性を踏まえた経営判断も欠かせません。倒産件数が増えている現状では、日々の数値管理と早めの対策が経営の安定につながります。本稿は、収益改善に向けた大切な視点をつかむ手がかりとなる内容です。

まとめ:変革の時代を乗り越え、選ばれる介護事業所であるために

介護事業所が直面する厳しい経営環境を乗り越え、持続的な成長を遂げるための収益改善には、下記が効果的です。

  • 現状把握:自施設の収益構造と業界平均を比較し、客観的な立ち位置を理解する。
  • 売上増加:加算の戦略的取得、稼働率向上、保険外サービスの展開など、攻めの施策を実行する。
  • コスト削減:ICT/DX化を核とした業務効率化で人件費を最適化し、運営経費の無駄を徹底的に排除する。

収益改善は、単に利益を追求するためのものではありません。

生み出された利益を、職員の処遇改善や新たな設備投資に再配分することで、職員の定着率向上とサービス品質向上の好循環が生まれます。

この変革の時代を乗り越え、地域社会に不可欠な存在として輝き続けるために、今こそ勇気を持って一歩を踏み出しましょう。

監修:梅沢 佳裕

人材開発アドバイザー

介護福祉士養成校の助教員を経て、特養、在宅介護支援センター相談員を歴任。その後、デイサービスやグループホーム等の立ち上げに関わり、自らもケアマネジャー、施設長となる。2008年に介護コンサルティング事業を立ち上げ、介護職・生活相談員・ケアマネジャーなど実務者への人材育成に携わる。その後、日本福祉大学助教、健康科学大学 准教授を経て、ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表として多数の研修講師を務める。社会福祉士、介護支援専門員、アンガーマネジメント・ファシリテーターほか。

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